Yside










"チョン、この問題を解けないと帰さないからな"

『は?ふざけんなよ。俺に解けるわけねーだろ』

"だから補習してやってるんだろ。
少し席を外すが、絶対に帰るなよ"

『………………』





ガラッ






よし!こんな数学の問題を俺が解けるわけねーんだし、ここは勝手に帰るに限る。



そう思い鞄を手に取りさぁ帰ろうって時に…




「解けてませんよね?」



ビクッ



『…………シム…驚かすなよ』

「別に驚かそうとしたわけではありません。ただ、補習の課題が終わってないのに鞄を持ったチョンさんに声をかけたまでです」

『いいんだよ俺は』

「良くないですよ。
この問題はセンター試験でも必ず出題される問題です。できるようになっておくべきです」

『だーかーらー俺には関係ないっつーの。大学には行かねーし、試験とか受けないから』

「……………本気でですか?」

『本気だよ』

「そう……ですか………」



なんでシムが落ち込むような表情になるんだよ。
俺の進路なんてシムには関係ねーじゃん。




その、あからさまに暗くなり、
眉をハの字にするのは止めろ。






可愛いから。







ぷくっと頬を膨らまし、
唇を尖らせるのは止めろ。






可愛いから。













あーやばいな俺。
どっぷりハマっちゃってる。








『キスしよ』

「ここは教室です」

『誰もいねーしいいじゃん』

「そうですけど…でも、」

『じゃいいわ。別に欲求不満なんて誰とでも解消できるし』

「僕以外にもそういうお相手がいるってことですか?」

『さ〜ね』

「…………………」






俺はシムに視線を合わせず、
教室の扉にに手をかけた。








『!!!!!ッ』



チュッ



「………ん、」





驚いた。
俺の腕を掴みシムからキスをしてきた。
こんなに力強かったなんて知らなかった。




チュッ





なんで…
なんでこんなぎこちないキスなのに、
俺はこんなにも気持ちいいって思ってしまうんだよ。



















"何をしている?!"




ガバッ!!




『…………………』

「…………………」



"何をしていると聞いているだろ!!"





面倒くせぇ。
キスしているところを担任に見られた。
担任は俺に向かって鬼でも見ているかのように目を見開き眉間にシワを寄せ、
すごい勢いで俺に問い詰めている。




『見ての通りだけど?』

"ここは学校だぞ?!
異性でもありえないものをお前たちは同性同士でなんてことを!!?!"

『うるせーな』

"シムくん、君はチョンに無理やりされたのだろう?断ったら殴るなど脅されて"

『…………………』

「え、いえ……先生、僕は……」

『そうだよ、ちょうどシムが教室に来たから。俺が無理やりしたんだ』

"やっぱり!シムくんが抵抗できないからってお前は!"

「先生、違っ!」

『で?委員長に手を出した俺は停学とか?』

「チョンさん!!」

"教育委員会と相談する、それまでチョンは自宅待機してなさい"

「先生待ってください。僕の話を聞いてください」

"シムくんは何も悪くないから安心しなさい"

『ちょうど良かったよ、学校なんてダリーだけだったし。じゃまたな委員長』

「チョンさん待って!」

"シムくん。分かっただろう?
あんな奴と関わるのは止めなさい"

「先生……」











 










 





"今回は何したの"

『別に』

"別にで停学になるわけないでしょ!"

『停学じゃねーし、自宅待機』

"同じでしょーが!"







家に着き、玄関を開けたら
母ちゃんが腰に手をあて仁王立ちをしていた。



『母ちゃん!何だよ、びびるだろ?!』

"学校から会社に電話が来る方がびびるわよ!"

『あいつ仕事が早ぇーな』チッ

"ユノ!"

『あー悪かったって』

"で、何したの"

『……………悪いけど言いたくない』

"………………"

『話せる日が来たら言うから』

"信じていいんだね?"

『法には触れてねぇから安心してよ』

"そんなことを心配してんじゃないよ!
ユノが法に触れるようなことする子じゃないことぐらい分かってるから"

『………………』

"ま、言いたくなったらでいいけど、
たまには母ちゃんを頼りなさいよ。
ユノの何年先輩だと思ってんの?"

『………50年ぐらい?』

"蹴るよ"

『はいはい25年先輩です』

"わかればよろしい。
ご飯の時間になったらリビングに来なさいよ"

『ん、』









母ちゃんに話せる日なんて来んのかわかんねーな。
だって……絶対困らせることになる。








息子が同性を好きになり、
その相手と心が伴っていないキスをしているんだから。




しれっと認めてるし俺。
シムが好きって









俺がどう足掻いたってシムは俺を好きになることはきっとない。
だってあいつにとって俺は欲求不満の解消の道具でしかない。
だからせめて俺がシムにできることっていったら、
俺が悪者になって、
シムの将来を守ってやること。





そんなことしか、











できないんだよ。






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