Yside







ありえねぇ!





ありえねぇ!!





ありえねぇぇ!!!












なんだって言うんだ!?!





なんで俺はこんなに動揺してんだ!?!
別にキスぐらい初めてじゃねーし、
好きでもない女としたことだってあるじゃねーか!












……………ちょっと待て。




俺、自分からキスがしたいなんて言ったことも思ったことも…無い。





いや違う!
断じて俺はシムが好きってわけではない!






ただちょっと…半開きになって僅かに見えた舌がなんとなくエロくて……って!!!





だから違うっつーの!!


















ガラッ



"!!!!"ヒィィ!!

『どけっ』

"はいっ!!!"

『………………』





昼休み終了前に教室に戻ってきた俺。
それだけで異例なこと。
自分の意味不明な感情へのイライラを教室の扉前にいた奴に当たってしまった。
まぁいい。
どうせ俺を怖がっているんだから。








俺はすぐさま鞄を手に取り、



『帰る、誰かセンコーに伝えとけ』

"はいッ!!"ビクビク




ガラッ




『!!!!!』

「帰るんですか?」

『お、おう……』

「どうしてですか?体調が悪いわけではないですよね?」

『だ、だるいからだよ!』

「そんな理由では駄目ですよ。
もうすぐ授業が始まりますので、ほら戻ってください」

『シムッ!』



なんにもなかったかのような口調。
なんにもなかったかのような表情。

 


そうだよな。
なんにもなかったんだから。
あんなもん…ただの欲求不満を満たすためだけの行為で俺にとってもシムにとっても、
なんの感情も動く出来事ではない。



だから、シムから逃げる必要はない…


























「だるいって言っていたのに、放課後すぐに帰らないんですか?」

『………………』

「チョーンーさーん」

『うるせぇぇ!聞こえてるよ』

「聞こえてるなら無視しないで下さい」

『無視じゃねーし』





無視じゃない。
戸惑ってるだけだ。
結局あの時そのまま教室に残って授業には出席した(寝てたけど)




放課後になって屋上にいたら、
やっぱり何事もなかったようにシムは来た。さすがに屋上には来ないと思ってたんだけど。



だって現場なわけだし、
二人っきりになってしまうし、








チラッ




『な、なんだよっ!!!!!』

「………………」



びびった。
てっきりいつもみたいに空の写真を撮ってると思っていたら、
シムは横になっている俺にカメラを向けていた。



『俺を撮ったのか?』

「僕は空しか…撮りません」

『あっそ……』



じゃあなんで俺にカメラを向けてたんだよ!






「チョンさん……」

『なに…』

「キスの意図って…欲求不満でしたよね?」

『………………あぁ』

「解消できましたか?」

『!!!!!!』




なんちゅーこと聞いてくんだよ!




「チョンさんが解消できたのなら良いんですけど……」

『かっ解消できた!!』

「良かったです……でも…」

『……でも何だよ…』

「僕の欲求不満は全然解消できてません」

『は?』

「チョンさんだけずるいです!」

『………………』

「僕の欲求不満も解消してください」

『は、ちょっ!待てって!』

「……………嫌…ですか?」

『…………………』

「僕とはもうできないですか…」シュン…





待て、待ってくれ!
俺の脳内が処理できていない。



シムの欲求不満を解消?
もうできないですかって?
もうってなんだよ!?




わかんねーよ。
わからなさすぎるって!!





それなのに俺は、
ちょっとシュンとした表情とか、
意図は欲求不満解消かもしれないけど、
シムは俺ともう一度キスしてもいいと思ってくれたことが、



嬉しくてたまらないし、
愛おしささえ抱いてしまっている。








こんなの、










俺がシムのこと好きみたいじゃねーか。










『違う!そんなわけねー!!!』

「何がですか?」

『ああん?!』

「???」


取り乱してしまった。
しかも声まで出ていたとは… 




ゴホンッ




『キス……したいのか?』

「解消したいです」

『わかった、目を閉じろ』









う、シムのキス顔……可愛い…





チュッ





『したぞ、目を開けろ』

「………………」

『なんだよ、不満か?』

「………………いえ、ただ…」

『た、ただ…?』

「初めてのキスがチョンさんだったなって…思って」

『初めてっ?!』




まじかよ。
俺がシムのファーストキス奪っちゃったのかよ。



「キスってこんな感じなんだーと、
さっきは初めて過ぎて感じませんでしたが」

『なんだよ、俺が下手クソって言いたいのか?』

「いえ…寧ろ逆で、
キスってこんなに気持ちいいんだーと思いました」

『…………/// そーかよ……///』






ファーストキスを奪った奴の前で気持ちいいって感想はやばくねーか?
もしかして俺がシムに狙われてたとか?!





「またしましょうね♪」

『…………………』




やっぱり俺はシムにとってただの欲求不満解消方法の1つみたいだ…











それから俺たちは屋上で何度かキスを交わした。
シムから求められることもあったし、
俺からなんの声掛けもせず、
シムがカメラのレンズを覗いているときに不意にしたり、



俺がいるから、
屋上には誰も来ないってのを逆手に取り、
俺はシムとのキスに徐々に溺れていった。






シムはシムで、
したあともこれといって何も言わない。
普段はチュッと触れ合うだけのキスだけど、時々俺が舌を入れたりと攻める時があるけど何も言わない。
良いも悪いも、好きも嫌いも。






俺たちの関係って一体なんなんだろうか。





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