来るべき日がついに来た。一人娘の家族が祝ってくれるという。

少し前からそれとなくウォーキングシューズを持っているかとか、トレーナーはいらないかと尋ねられてハハーンときていた。

 五歳と四歳の男児と一歳九ヶ月の女児の子育てに文字どおり髪振り乱している最中の心遣いだ。私は小沢征爾指揮によるニューイヤーコンサートのCDを所望する。

「食事は何がいい、言って」と聞かれて、遠慮なしに

「中華料理がいいわ」と答えると「焼肉とかもあるしね」ということで、希望として彼らは焼肉が食べたいらしい。

久しぶりに彼らはスタミナを補給する必要があるのだろう。

 車で五分という距離にいると何もかも見通せてしまう。まして母と娘の間柄では解り過ぎて困ってしまうくらいだ。

 当日、焼肉店で注文の量の多さに驚き、その旺盛な食欲には感心するばかりだった。宴もたけなわとなり、おもむろに上の二人が神妙な顔をして「おばあちゃん還暦おめでとう」といって色紙とかわいらしくラッピングしたCDをもらう。色紙にはひらがなを覚え始めている上の孫の文字が躍っていて私の似顔絵や、それぞれの最近の写真などが貼られている。夫婦がばたばたと子供達を叱咤して作っている姿が目に浮かぶ。

「ありがとう」と私はうやうやしく受け取る。

 ややしばらくして兄貴の方が「おばあちゃん、ぼくの誕生日にもプレゼント頂戴ね」

 すかさず次の孫も「ぼくにも」と念が入る。

 二人の表情をみると余程その方に実感がこもっている。 下の女の子だけは言葉も意味も解らず、ただふにゃふにゃと唱和している。そして食べたり、飲んだりの途中で思いついたように

「おばあちゃん還暦おめでとう」の言葉が何度も飛び出してくる。余程、母親に繰り返し練習させられたのだろう。

 傍らの娘の顔を見ると苦笑いしている。


 先日、ペンフレンドから手紙を戴いた。前回の私の手紙で還暦を迎えたことを書いたのでお祝いの言葉をもらった。少し以前に迎えたご自身の時には息子さんから六十本の赤いバラを贈られたということだった。花瓶が足りなくて買い足したともあった。

暫くは花に埋もれて過ごされたことだろう。ロマンチックだなあと思う。

私も花は大好きだ。

この歳にして未だに隣の芝生ならぬ、となりのバラが赤く見えてしまうから可笑しい。