0912 惑星ソラリス(寓話としての形而上学) | 蓼科クロニクル

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The Tateshina Chronicles

  
$蓼科クロニクル-快晴20100117
 
今日も朝まで大雪でしたが吹雪かず、結晶のしっかりした羽毛のような粉雪が真っ青な空から降り注ぐ陽光にきらきらと輝いてしてもきれいです。
 
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『われわれは見ようと意識しないものは見ない。「見たいもの」しか見えていない、そのほかにいかにたくさんのものがあっても、それを存在しないものとしてしまっている。』
 
という話の補足説明のつづきを書く。わすれちゃったひとは一昨日の記事を見てね。
 

無意識は我々の内なる大海である。その海面に波立つものが我々が現実と呼ぶところのものであり、上空からそれを見つめているのが我々が自身の意識として認識するところのものである。
 
海面下に何が隠され潜んでいるのか、知るすべはない。
 
 
ここでわたしはポーランドの作家スタニスワム・レムの「惑星ソラリス」というSF仕立ての不条理な物語を思い出す。
 
のちにアンドレイ・タルコフスキーによって同題の名作と呼ぶにふさわしい映画になったのでご存知の方もいるかも知れない。(後年ハリウッドでリメイクされたものは侮辱的にひどいしろものだったけれど)
 
この物語はある惑星の全体を覆い尽くす海が主題だ。あまりにも不可解な動きを見せるこの生きている海を研究するために、惑星の周回軌道を回る宇宙船の乗員に起きる形而上学的な事件が描かれている。
 
お察しの通り、これはあえて言うならば寓話なのだ。いや、形而上学的メタファーとしての作品なのだ。
 
じつはこの海は1つの生命体であり、宇宙船の乗員の無意識領域を読み取り、それを夢としてではなく「現実のものとしてみせる」能力を有している。
 
しかもこの海は赤子のように純真無垢である。むじゃきに、乗員の心の痛みや悔恨や願望や混乱を実体化して宇宙船に送り届けてくる。
 
彼らはそれに耐えきれず、つぎつぎと発狂していく。廃人同様になっていく。それを察した当局から送り込まれたのが主人公だった。
 
この船の奇妙な状況をようやく理解し始めた彼のところに突然自殺したかつての妻が現れる。もちろん幽霊などではない。彼は驚愕するとともに彼女を失った苦痛と悔恨とを喚起される。
 
これは紛れもない彼女だ、しかし「これは自分の記憶の中にある限りの彼女なのだ」と気づくのにさほど時間はかからなかった。
 
彼の苦しみはそこから始まる。この「彼女」自身が自分が誰なのか,なぜここにいるのかを知らないからだ。しかも彼の記憶どおり彼を心から愛している。その所作も笑顔も寸分たがわず愛しい彼女そのものだ。
 
苦しみから逃れようと彼は「彼女」を何度も宇宙船から追放しようとするが、いつのまにかふたたび「彼女」は彼の前に現れる。
 
やがて彼の苦しみを察した「彼女」液体酸素を飲んで自殺を図る。かつての妻としてではなく「彼女自身」として彼を愛すようになったからだ。
 
しかし、ニュートリノで形作られている「彼女」はすぐに再生してしまい死ぬことができない。苦しみ抜いたすえ、死ぬことができず、再生してしまう。そのことがまた「彼女」を苦しめるのだ。
 
物語の終盤、彼の同僚の研究者に頼み「彼女」は自分を形作るニュートリノを分解する装置を使って消滅する道を選ぶ。「彼女」が消滅したあと彼はその事実を知る。
 
彼はこの一連の出来事を神の罰と考えるようになる。そしてその神とは「この惑星ソラリスの海」なのだと確信する。
 
悲嘆に暮れて窓から海面を見下ろすと、そこに小さな島が形成されていた。彼の見慣れた世界がそこに実物大で再現されていた,彼自身までも。
 
幼い頃の想い出に満ちた実家周辺の風景、その色、におい、湖沼部の水の輝き、小川を流れる涼やかな水の音、太陽の光・・・。そのなかを黙想しながら歩く主人公。その場面はこの作品の冒頭の情景とうりふたつだ。
 
われわれの「現実」とはいったい何なのだろう。
 
物語の最後に主人公は深い思索へと沈んでいく。
 
 
私が前回語った 意識(顕在意識) 無意識(潜在意識) によるフレームワークを寓話として語るとこのような物語になるのかと思うので、ご一読をお薦めしたい。
 
 
 
今日の朝の雪景色を載せますね。もっと見たい方はこちらを見てくださいね。↓
 
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