対談 草野仁vs福島孝徳 | あ~した、てんきになぁれっ!

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主治医が見つかる診療所

6月25日放送分の中で行われた、
 草野仁と“神の手を持つ男”福島孝徳 医師(脳神経外科医)の対談。

 福島の日本での活動拠点である大手町「東京クリニック 」にて。





草野)
  どうもはじめまして。
  先生いつも番組では大変お世話になっておりますが、
  今日はお忙しい時間ほんとにありがとうございます。
  よろしくお願い致します。
  実は福島先生、今日も手術を何件かなさってここに来られた?
福島)
  ここへ来る前に3人の患者さんを助けて…。
草野)
  たくさんの手術を朝早くから夜遅くまでおやりに…。
  先生ってお疲れになることはないんだろうかと…。いつも思ってるんですけども。
福島)
  多少感じる場合もあるんですけど、
  どちらかというと、あまりに忙しいので感じてる暇がないといいますか。
  脳外科というのは大変緻密で難しい手術なわけで、患者さん必死なんですよ。
  患者さんはね「福島先生なら絶対に良くしてくれる」と思ってるんで…。
  例えば草野さんが出たら絶対に良い番組が出来るだろうと思ってるから、
  草野さんも責任があるでしょう?私も責任があるんで…。
  今ね、大体年間に600人(手術を)やるんですよ。
  まず九分九厘うまくいくので…。だからリスクは0.3%ですね。
  ゼロにならないんですよ。ゼロになればいいんですけど。


●医師になったきっかけ
草野)
  先生はどうして医師になろうとお考えになったんですか?
福島)
  私の父が明治神宮の神官、神主さんをしてまして、あまり家庭をかえりみなかった人で…。
  私の父の一番下の弟が東京医大の内科の先生をしてまして、
  子供がいなかったもので私はすごく可愛がられて、叔父さんに可愛がられて育ったんです。
  それで小さい頃から「僕は医者になるんだ」というふうに決めてたんです。
  で、いろいろ挫折はあったんですけども、
  母が「人間というのは初志貫徹、それが大事だ」とかなり怒られて諭されて…。
  で、受験に戻ったんですけども。
  私が高校の頃は、福島が医大に受かるなんて誰も思ってなかったし、友達も先生も…。
  私が東大に受かった時に教頭先生が
  「あの福島が東大に受かりましたか!?」って嘆息したというくらい、
  私は悪ガキだったんです。
草野)
  で、東京大学に進まれまして…。
福島)
  はい。


●研修医時代
福島)
  あの頃はですね、最初にいろいろ臨床を始めて患者さんを持ってみると…。
  何にも知らないんですね。
  注射の仕方も採血の仕方も薬の処方も何にもわからない。
  そういう教育を受けてないんですよ。
  医科大学を6年もかけて卒業しても、
  いっさい患者さんの治療が出来ないものを作っているので…。
  本当に愕然としたですね。
  これは大変だっていうんで、うちに帰れずに…。
  うちに帰れるのは月に1回くらいで、もう病院に24時間泊り込みで勉強してましたね。
  家庭も壊れるというか、バツ1、バツ2、バツ3くらいで…。
  全てを脳外科のために30年間ぶっ通しできましたけど。
  今考えてやっぱり、
  日本の医学と医療の両面を
  何かしらの改革と世直しをしなくてはならないかなと感じています。

草野)
  先生は40歳を過ぎてアメリカに行くという道を選択されてます。
  アメリカに実際に行ってみると、
  より一層アメリカのシステム、外から見てる日本のシステム、
  はっきりと見えてくるところがあるでしょうね。

福島)
  ほんとだったら、日本で日本人として日本の患者さんのために、
  あるいは、日本の若手の教育の為に尽くさなきゃいけないのに、
  なんで俺がアメリカでやらなきゃならないんだ、というのはあったんですけど、
  日本の大学、特に医学部の場合は非常に古い体質が残っているんです。
  アメリカはね、豊かな国です。
  日本が見習わなきゃいけない点がたくさんあるんですね。


●アメリカに見習うべき点
福島)
  アメリカは豊かな国です。アメリカにも病める面はあるんですけども…。
  僕がアメリカに行って本当に感じたのは、
  患者さんを絶対に、石にしがみついても悪く出来ない。
  手術した以上は手術前と同じか良くしなきゃいけない。
  それが日本では徹底していない。
  脳腫瘍の手術をしたんだから、まあちょっとくらいは麻痺が出ても、それいいんだとか、
  そういうんじゃなくて…。
  フォローアップもないし…。
  そういう悲惨な現実を僕はもう、ここ3年くらいね。
  日本から問い合わせが来るのがものすごく、多い時は1週間に40~50来るんですよ。
  これを僕はなんとかしなくちゃいけない。


●日本の医療事情
草野)
  制度として日本のいろんな医療システムの中で、
  例えば国民皆保険とか、そういうものっていうのは?
福島)
  あれは素晴らしい。
  僕は日本の医療の一番素晴らしい点は、
  国民あまねく医療ケアが出来る国民皆保険と、それから福祉ですね。医療福祉。
  これは素晴らしいです。
  世界に類を見ない。
  日本の患者さんは保険証1枚あれば、
  大学でもA病院でもB病院でも開業の病院でもどこでも自由に行けるわけです。
  いつでも検査が受けられて、いつでもお薬がもらえて…。
  そんなとこは世界に類を見ないです。
  問題なのは、日本の医療っていうのは、ものすごい低医療費政策なんですね。
  総理大臣にも厚生労働省にもよく言いたいんですけども、
  皆さん方は欧米先進諸国の半分しか国民医療費を使ってないんですよ。
  それを厚生省が下げよう下げようとするから、病院の質が下がるわけですよ。
  脳外科の治療ってのは常に最先端を行かなきゃいけないんで、
  それは手術法もそうですし、手術に使う装置、手術の器具、全てに至るまで。
  日本でよその大学を見たり、呼ばれて行って見ると、
  ほんとに残念なことにもう何十年も前の道具立てで
  冗談にこれちょっと申し訳ないんだけど、
  戦前のセットアップなのでできませんよ、というくらい遅れてるんです。
  私の目から見ると…。
  厚生省はね、もうちょっと払ってあげないとダメですよ。


●健康
福島)
  人生でもちろん名誉も地位もお金も良い家も良い家庭も必要なんですけど、
  人生で一番大事なのは健康なんですよ。
  本当にね、病気になってみると。健康のありがたみがわかるんで。
  健康であるためにはどうしたらいいかって
  早期発見早期治療しかないんです。
  今、国民の皆さんが一人一人考えなきゃいけないのは
  自分の健康は自分で守りましょう。
  一番大事なのはね、検診で循環器、消化器ドッグ、がんドッグ、脳ドッグですね。
  早期発見で何か見つかったら、直ちに名医を探そうと。
  必ずいるんですよ、ベテランの名医は。
  皆さん探さないんです。


●医療改革
福島)
  僕の全力を尽くして海の向こうから日本の医療を浴していきたいなぁと。
  私の夢なんですけど。
  夢が現実になるように皆さんの協力もお願いします。
草野)
  着々とそういう形で先生の志していらっしゃることが
  本当に力を発揮する時が間もなくやってきますよね、日本でも。
  この秋、日本で病院を開設なさると伺って伺っておりますが…。
福島)
  それはね、24時間いつでも全国どこからでも、という形で。
  茂原市で。(塩田病院付属福島孝徳記念クリニック  平成19年10月1日開院予定)
  一応、福島記念脳神経外科センターとなってるんですけども、
  僕はあくまで地元の協力と医師会の皆さんの協力で一緒にやってくださいとお願いして。
  非常に良い形でいけると思います。

草野)
  次の機会に日本にいらっしゃいまして、
  もしお時間が許せば、私たちの番組のスタジオに先生ぜひ…。
福島)
  行きます。
  ぜひ参加させていただきます。
草野)
  ぜひ先生よろしくお願い致します。