小学生の時、野球チームに入っていた。
チームに入っている子の保護者達が監督・コーチとなり、何人も教えてくれる大人がいたのだけど、その中でも中心となる2人がいた。
「河田さん」と「ジッチャン」
河田さんは何というか、品のある人だった。
40代半ばくらいだったか、背も高くてシュッとしていた。言葉使いも丁寧で、プレーに対して指摘する時も声を荒らげる事もなく、ちゃんと“教えてくれてる”という感じがした。
対して。
ジッチャンは、誰からも恐れられていた。
白髪のじいちゃんなんだけど、まず見た目が普通に怖い。腰はやや丸まっているが、圧がすごい。目つきも悪く、とにかく怒鳴る。声も無駄に大きく、すぐ怒る。ハッキリ言ってどっから見ても“ゴロツキ感”がとんでもなかった。
で、そんな野球チームでやってきて。
最後の試合も終わり。
「6年生を送る会」みたいなのがあって。
保護者代表で河田さんの挨拶。
「…あえて、何も考えずに来ました…」
と言って喋り出した河田さんが、凄い格好よかつたんですよ。
「事前に考えるとどうしてもよそ行きの言葉になってしまう、率直な言葉を贈りたかったので、あえて考えずに来ました」
僕だけでなく、子供達も、保護者達も、ぐっと惹きつけられている空気をひしひし感じた。
さすがに喋った内容は覚えてないけど「何か…かっけえ」と思ったのは覚えてる。
すると次にジッチャンが出てきて。
良い感じにほろ酔いで薄ら赤みがかった顔を、真面目な表情に取り繕うとしている。
そしてマイクの前までやってきて。
「実は私も、あえて何も考えずに来ました」
さすがに喋った内容は覚えてないけど「本当にこいつは」と思ったのは覚えてる。
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