僕は動物が苦手です。

なんせ怖い。

爬虫類、鳥や魚、虫も、小型犬や猫も。
もれなく怖い。

おまけに甘い物もあまり得意ではない。
引っ掛けじゃなく、普通に饅頭も怖い。

もれなく怖い。

十二支で言うと怖い事がハッキリとは確定していない動物は“辰”くらいです。

ただ、もはや内定はしています。

実際に見るまでもなくどうせ怖い。



そしてこれらは全て、均一に、苦手です。



この「均一に苦手」というのが、本当に本当に本当に、他の人から理解を得られ難い。本当にほとんどの場合で理解を得られない。

例えば。

「犬むり、嫌い。」

なんて言うと大体の場合、どことなく情の薄い冷たい人間の様に思われがちだ。何となく印象は良くない。なのに例えば。

「蛇むり、嫌い。」

なんて言っても、特に何も思われない。悪い印象なんてちっともない。それどころかどうかすると共感でひと盛り上がり。


僕からすれば、蛇が可哀想に思う。


僕はしっかり均一に嫌っている。

なのに犬の事を言うと、周りは僕を冷ややかな目で見てくる。しかし蛇の事を言うと、まるで共通悪に立ち向かうべく連帯する仲間を見る様な優しい目で見てくる。


「蛇!気持ちわる!近づけるなよ!」 

と堂々と言っても許されるが。

「犬!気持ちわる!近づけるなよ!」

と堂々と言うのは、はばかられる。


僕からすると蛇が可哀想に思う。僕はえこひいきせず、ちゃんと均一に嫌っている。



街中で。



リードをとても長くして犬の散歩をしている人がいるが、あれ、僕はめちゃくちゃ怖い。なんせ僕は側に寄られただけでも怖いのだ。

細い道なんか、向かいから来たら最悪だ。

すれ違いざま、目一杯に端に寄ってもかなり接近してしまうリードの長さ、さらにその上、飼い主さんは端に寄る事もなく道のど真ん中を歩いてきたりする。

いやもう完全に、いやもう確実に、僕は犬の行動範囲内に入ってしまっているのだ。

「うわ、うわ…」

と思わず顔をしかめてしまう。
目一杯に端に身体を避けてしまう。

するとどうだろう。

「えぇ…?そんなあからさまに嫌な顔する必要ある…?何かこの人、感じ悪い…」

みたいな顔をされる。


なんだ。僕が悪者になるのだ。


切なくなる。


「自分は犬が好きだけど、世の中には苦手な人もいるからむやみに近づけるのはよそう」

…なんて考えない。

「十人寄れば気は十色、と申しまして」

…なんて申さない。側に寄られるだけで怖い思いをする人などいないと、全員が犬の事が好きだと思っている。


僕は、均一に、苦手なのです。


細い道。

歩いていると向かいから、爬虫類マニアの人が蛇やトカゲ、イグアナやワニなんかを散歩させながら堂々と道のど真ん中を歩いて来たら、どうでしょう。

均一。

僕にとってはそれと同じ。


さらには。


向かいからネズミが来たらどうでしょう。
向かいからウシが来たら。
トラが来たら。
あら、ウサギ…なんて油断させておいて。
いきなりドラゴンが来たらどうでしょうか。

ハイパー怖くないでしょうか。


犬や猫を避けると薄情な人間だと思われてしまうのが切ない。そして蛇やトカゲは避けて当たり前みたいに扱われているのも切ない。

僕にとっては均一。

もれなく怖い。