「どんな子どもに育ってほしいですか?」と子育て中の親に聞くと、

 

「人に迷惑をかけない子に」

 

「どこへ出しても恥ずかしくない子どもに」

 

「何でも一人でできる子に」という答えがよく返ってきます。

 

子どもは親の手を煩わせる存在です。乳児期なら2~3時間おきに母乳をねだり、親の日常生活のペースを乱します。

 

「迷惑をかけること」と「人に頼ること」は全く別物ですが、子どもはこの両者がどう違うのかが分かりません。

 

そのため、「人に迷惑をかけてはいけません」と言い過ぎると、困っているのに周囲を頼ることができない子になってしまうかもしれません。

 

ある小学生の話です。暑い夏の日、その子は喉が渇いて仕方ありませんでした。

 

でも、先生はとても忙しくしていました。熱中症寸前の状態になっても、勇気を出して「先生、お水飲みたい」の一言が言えない子だったのです。

 

また、いじめを受けているのに、大人に助けを求めたくても

 

「先生に迷惑がかかる」

「親に心配をかけたくない」と思い、

 

「ママ助けて」「先生助けて」の一言が言えなかった子も知っています。

 

喉が渇いたことを伝える、いじめられていることを伝える――。

 

これらは、大人から見たら「人に迷惑をかけること」ではありません。しかし、それが分からない子も実際にいます。

 

「人に迷惑をかけない子ども」ではなく、「困ったときは、たとえ人に迷惑をかけてもSOSを出せる子ども」に育てること。

 

それが、親や子ども本人にとって大切なのではないでしょうか。

 

そして、助けてもらったら「ありがとう」、迷惑をかけたら「ごめんなさい」と言えるように育てる、それで十分なのではないかと思うのです。

 

「迷惑をかけてはいけない」と親からインプットされると、

 

困ったことや分からないことに遭遇したとき、「こんなことを聞いて、おかしな人、非常識な人と思われないだろうか」「恥ずかしい」と、不要なブレーキがかかるようになってしまいます。「

 

親側に、「人さまに迷惑をかけるなんて恥ずべきこと」の強い思いがあるのは分かりますが、まだ生まれて数年の子どもにそれを要求する必要があると、本当にいえるのでしょうか。

 

少年時代に、難病の筋ジストロフィーを患った実在の人物・鹿野靖明さんの生き様を描いた「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」という映画があります。

 

この作品で、鹿野さんを演じた俳優の大泉洋さんが、女性誌「LEE」ウェブサイトのインタビューでこう語っていました。

 

「これまで“人に迷惑をかけないで生きる”ことが唯一のポリシーでしたが、それが大きく揺らいだ。

 

果たしてそれがそんなに大事なことなのか、と。

 

自分一人ではできないことなら、人に助けてもらえばいいのではと。

 

人に頼ることを恐れ過ぎてはいけないとも思うようになりました。

 

何より僕の娘には、人を助けてあげられる人になってほしいと思うようになりましたね」

 

私の息子は知的障害を伴う自閉症児として育ち、現在23歳です。

 

息子が中学生のとき、「一人で買い物ができるようにお金の計算をマスターさせよう」と、私は必死になっていました。

 

そんなとき、特別支援学級の担任からこう言われました。

 

「大切なのは、誰かに助けを求められること。何でも自分一人の力でできるようにならなくてもいいです。

 

財布を広げて、『僕はお金が分からないので取ってください』と言えば、店の人が助けてくれる。できる人に頼ることも自立の形です」

 

息子は計算ができません。しかし、一人で買い物をし、切符を買い、外食をすることもできます。

 

なぜ、それができるのかというと「僕は計算ができないので、このお財布から取ってください」と、自分でお店の人にお願いしているからです。

 

親亡き後のことを考えると、誰かにSOSを出せる勇気を持たせたいので、これを続けさせています。

 

障害がなくても、人には得意/不得意があります。何でも満遍なくオールマイティーにできるように育てるより、「できないときに、誰かに頼る力」を育てることが大切だと思います。

 

次のような「親の子育てポリシー」は、裏を返せばこのような意味にも捉えられます。

 

・「人に迷惑をかけない子」…困ったとき、親以外の誰かにSOSを出せない子

 

・「どこへ出しても恥ずかしくない子」…自分が他人からどう見られるかを最優先する子

 

・「我慢ができる子」「弱音を吐かない子」…「つらい、苦しい」と本心を言えない子

 

・「わがままを言わない子」…自己主張しない子、他人の批判を気にして自分の意見を言わない子

 

一見するとまっとうな子育てポリシーも、一度立ち止まって、考え直してみてもいいのではないでしょうか。

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