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自閉症の我が子を育てていて一番辛かったこと

 

「子育てしていて一番辛かった思い出はありますか?」と聞かれることがあります。

 

私は“スイミングスクールでコーチから言われた酷い断り文句”と即答します。

 

それは息子が5歳の時のスイミングスクールでの出来事です。

 

息子は自閉症です。現在21歳になりました。幼児期はともかく落ち着きがありませんでした。

 

喘息があったので、水泳が喘息改善によいときいていたので、スイミングスクールの体験授業に連れまわしていました。

 

体験の申込の電話をする時点で

 

「うちの子には障害があるのですが、体験授業を受けさせてもらえますか?」

 

なんて言ってしまったら藪蛇です。「電話した時点で断られるに違いない」

 

と思ったので、障害があることは隠して連れて行きました。

 

結果、全て玉砕でした。

 

■様々な断られ方をした

 

【A水泳教室】

 

「せっかくお越し下さったのに誠に申し訳ございません。

 

発達障害のお子さんは集団行動がとれないので対象外なのです。入会をお受けすることは出来かねます」

 

【B水泳スクール】

 

「他のお子さんに迷惑がかかってしまいます。

 

お母さまも保護者間の人間関係でお辛くなると思います。誠に申し訳ございませんがお引き取りください」

 

とても丁寧な言い方です。でも「結局、うちの子はみんなと一緒にできる子ではないから入会お断りなんでしょ」

 

と感じ、辛くなりました。

 

でも、一番きつかった言葉は…

 

【Cスイミングスクール】

 

「お母さん、一体何を考えているんですか!こんな程度の低い子、うちで水泳習える訳ないでしょ!」

 

「そんなこと言うスイミングスクールがあるんだ、盛っているんじゃないの」

 

と思う人いらっしゃるかもしれませんが、実際にこれを言われたのです。

 

そこは大会に出る選手養成をすることで有名な教室だったので、

 

プライドもあったのでしょう。そこに足を運んでしまった自分もいけなかったのですが、

 

ここまで言われてしまいました。

 

体験を受ける前、入会許可が下りるように息子に

 

「コーチの言うことを聞いてじっとしているのよ。動いては絶対にダメよ」

 

と何度も息子言い聞かせていました。

 

2階にある保護者観覧席から見ていても、息子はその言葉を健気に守りそれなりに頑張っていました。

 

それをみて「頑張れ、頑張れ」と私は応援しました。

 

けれども、他の子ども達のように自分の番が来るまでプールサイドでじっとしていることが出来ず、

 

モゾモゾ、ゴゾゴソし身体を動かし始めました。

 

すると突然、コーチが息子の腕をわしづかみにして、私のいる保護者席まで連れてきました。

 

「ああ、もうだめだ」と悟りました。息子はというと…

 

自分の身に何が起こったのか状況がわからない様子で、

 

急に水から引きずり出されキョトンとしていました。

 

そして、息子がいる前でコーチは声を荒げて、私に次の言葉を言い放ちました。

 

「お母さん、一体何を考えているんですか!こんな程度の低い子、うちで水泳習える訳ないでしょ!」と…。

 

私は濡れたままの息子の体をタオルで拭きながら、

 

「よく頑張っていたね。偉かったね。もう帰ろう。お母さんがいけなかったね。

 

ごめんね。コンビニでお菓子買ってお家で食べようね」

 

と言うのがやっと涙が滝のように流れました。

 

そして、他のママ達に気付かれないように、そそくさと帰りました。

 

「他の子は体験授業に行けば『入会しませんか?』」

 

と営業されるのに、

 

息子はこんな風にいわれてしまうんだ」と思い、情けなくなりました。

 

同時に情けなく感じる自分をまた責めました。

 

■受け入れられる断られ方

 

自閉症の子の子育てでバスや電車の中で見知らぬ人から

 

「躾がなっちゃない!」と罵倒されることなどしょっちゅうありましたが、

 

このコーチの言葉は私にとっては一番きつかったです。

 

スイミングスクール側に立てば水は危険と隣り合わせ。

 

大勢の子を預かるのですから、多動な息子に入会許可を出すことはできません。

 

またお金と時間を投資している、他の生徒にも迷惑がかかります。

 

でも、もっと別の言い方があったんではないでしょうか。

 

それでも、水泳をやらせたかったのでまた別の体験に行きました。

 

そこで言われたのは…

 

「○○君は障害をお持ちなんですね。

 

それではプールサイドでじっと座っていることは難しいかもしれませんね。

 

私共では障害のある方を指導できる専門のコーチがおらず、スタッフの数も限られています。

 

また、水泳は一つ間違えば命に関わるスポーツです。

 

生徒10人対コーチ1人なので、○○君が溺れるようなことがあったら大変です。

 

入会をお受けしたいのは山々なのですが、誠に残念なのですが、現状ではご希望をお受けすることができないのです」

 

断わり文句には変わりないのですが、

 

「プール側に迷惑がかかる」という企業サイドの理屈ではなく、保護者の気持ちに配慮して

 

「お子さんの安全のためにも、この教室に入会しない方が賢明だ」と伝えてくれていました。

 

相手の希望に添えないときは、「自分だったらどう言われたら、納得できるか」、

 

そして「相手の利益になるように」の視点を持つことなのだと思います。

 

■このことで得たもの

 

私は当時、算数と国語の学力をつける目的の学習塾を経営していたのですが

 

(今は無関係の会社)

 

教室から脱走するなど椅子に座っていることが出来ない子を入会させようとする保護者も一定数いました。

 

息子のこともあったので、受け入れたい気持ちもあったのですが、学校や幼稚園とは違って、

 

学習塾への入会希望の親御さんはその時間、教育成果を求めて時間とお金を投資してくれています。

 

ですから、一人の子のため言葉は悪いですが他の子を犠牲にすることは出来ませんでした。

 

また、加配的な講師を付けて、教室から出て行く子を呼びに行くことために

 

講師数を増やすことも経営上、出来ませんでした。

 

そこで、プールで断られた様々な経験をもとに私は断らざると得ないお子さんが入会を希望してきたときは、

 

次のように伝えるようにしました。

 

「様々なことに好奇心が行く元気な○○君ですね。私共も○○君を受け入れたいのですが、

 

今の時点で入会してしまうと叱られる回数が多くなってしまうと思うのです。

 

そうなると○○君にとっても通うことが苦痛になってしまいます。

 

学習そのものが嫌いになってしまったら大変です。

 

そうならないためにも、一年後にまたお越しいただけると嬉しいです」

 

ここまで言えばたいていの保護者が察してわかってくれました。

 

学習塾は療育施設ではありませんから、

 

椅子に座る練習などはしません。保護者との信頼関係が築けそうであれば

 

別の療育施設的なところも紹介することもありました。

 

息子のことで辛い経験をしましたが、私の学びになっている点では

 

厳しい言葉を放ったコーチに感謝しなくてはなりませんね。