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これは以前、某社から依頼された元原稿です。長いです。
友人の子ども、3歳の自閉症の女の子、言葉はたくさん出ていますが、独り言の一方通行の言葉ばかりでした。
母親が「抑揚のない宇宙人のような機械音みたいな話かたは、どうすれば治るんだろうか?」と聞いてきました。
私は医師でもないので、正確な答えではないかもしれないので躊躇いましたが
21年間自閉症の息子を育ててきた経験から次のように答えました。
「コミュニケーションをとりたい、人と関わりたいと思うようにならない限り、抑揚を付けて話すようにはならないと思う。
人は『相手にこうしてほしい』という働きかけをしたいという動機があって言葉が出たり、声を大きくしたり、強弱や抑揚をつけたりするものだと思うんだ。
だから、自分だけの独り言の状態にいる限り、抑揚をつける必要もないから一本調子のまんまなんだね」
■価値観の押し付けはよくない
私の答えを受けて、友人はこう言いました。
「じゃあ、友達をたくさん作って遊ばせたらいいんだ。友達と遊ぶと楽しいから」
私は
「それは親の価値観だよ。親の思いを押し付けてはならないよ。
友達と遊ぶことがストレスになり、1人で遊んでいるのがこの上もなく楽しいことなのであれば、それを親が潰さないほうがいいんじゃないかな。
まだ3歳なんだからこれから年齢を重ねていくうちに、自然と育ってくるからそのとき抑揚がでてくるよ。
その時の言葉がたとえ『触っちゃダメ!嫌!』と友達を拒否することばであっても、これは立派な人とのコミュニケーション、会話だから、それでよしとすればいいんじゃないかな」
と伝えました。
友人とは信頼関係もあるので、ここまで言うことが出来ました。
■息子の初めてのコミニュケーション
息子は言葉を話しませんでした。
言葉が出るようになっても、スーパーに行くと、リンゴの棚の前で「ジョナゴールド・津軽・紅玉・シナノゴールド・秋映・王林…」と覚えている銘柄を順に言っていました。
けれども、「ママ、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」と言うことはありませんでした。
息子は21歳になり会話はできますが、相手に共感を求めるこういった言葉は言いません。
そんな息子でしたが、初めての言葉らしい言葉は5歳のとき、デパートの讃岐うどんのお店に連れて行ったときのこと。
息子が食べていたうどんの器には、あと1本だけ、うどんが残っていました。
その器を、店員が「お下げいたします」と持って行こうとした瞬間、大きな声で「まだ食べる!」と怒鳴るような大きな声で叫びました。
いきなりの2語文!しかも自閉症らしからぬ、自分の意思をはっきりと示し、まっすぐと相手に届く言葉でした。
■念仏
息子が特別支援学校高等部のとき、クラスにいた重度の自閉症の男児、言葉は出ていました。
上野動物園に行ったとき、パンダの前で
「友達の眼鏡をとってはいけません」
「友達の眼鏡をとってはいけません」
「友達の眼鏡をとってはいけません」
「友達の眼鏡をとってはいけません」
「友達の眼鏡をとってはいけません」
と授業中、担任から注意されて言われた言葉を念仏のように言っていました。
動物園という状況に噛み合わない言葉
オウム返しの言葉
「これはコミュニケーションではなく、聞いた言葉の繰り返しだ」と親御さんは嘆いていました。
確かにそうかもしれませんが、本人のとっては聞いた言葉の繰り返すことが「お母さん聞いて、先生が『友達の眼鏡をとってはいけません』と言っていたよ」と訴える本人にとっては会話なのかもしれません。
人間にとって言葉とは人と関わるコミュニケーションのツールです。
息子や他の自閉症の子のことを知れば知るほど、「抑揚とか声の大きさなどを含めた言葉を話すことを要求したり、期待することもは難しいのかな…」とシミジミ思います。
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