京橋界隈の、夜は居酒屋になる
サラリーマン御用達の店で
仕事仲間とランチをしていた時のこと。
その店は、1時過ぎまでは激混みなのだが
1時半近くになると潮が引くように
客足が途絶える。
そんな時に、普段の客層とは
明らかに異なる70前後のオバサンが
ふらっとひとりで店に入ってきて、
我々の隣の席に座った。
観光地やショッピングエリアでもない
こんな裏路地に、
なんの用事があったのかは知らないが、
ぷらぷら歩いていて
たまたまこの店にさしかかり
入ってきた感じだった。
オバサンの店員がつっけんどんに
メニューの説明を始める。
「今日の焼き魚は赤魚の粕漬けで…」
そのオバ店員は、オバ客が
焼き魚を頼むに違いないと踏んだのか
他のメニューについては説明せずに
あとは黙って注文を待っていた。
オバ客のほうは、「う~ん」と
曖昧な返事をして迷っている様子。
オバ店員がすかさず
「赤魚でいいですか」と尋ねる。
すると、オバ客がひと言。
「それじゃあ、家で食べているのと同じだから
唐揚げで」
どうやら、私が食べていた
唐揚げ定食を真似たようだ。
一瞬、オバ店員がムッとしたように感じた。
なんだかオバ客とオバ店員のいるあたりだけが
重い空気に包まれている。
だが、オバ客は、
そんな雰囲気はまったくお構いなしに、
唐揚げ定食が運ばれてくると
ものすごい勢いで平らげ、
颯爽と去っていた。
お一人様での飲食には
かなり慣れている様子だった。
にしても、一般的にオバ・オバ同士だったら
中川家の漫才のように
初対面でも異常に会話が弾んだりするものだが…
あのオバ客はひと言多すぎた。
なにも、そんなに正直に言わなくても…
あのオバ客はいったい何者だったのだろうか?
もしや、ビブグルマンの審査員だったりして
んなわけないか