こんなことでもなければ、

この駅に降り立つことは、

生涯なかったかもしれない。

 

汐入ってどこ~~~?

と、何度も確認しながら、

東京から2時間ほど電車に揺られて

ようやく行きついたのが、

人生初の横須賀・汐入。

 

目指すは、この横須賀芸術劇場。

 

 

本日、千穐楽の

「ラ・マンチャの男」ファイナル公演を

観劇に来たのだ。

横須賀芸術劇場は遠かったが、

私が初めて「ラ・マンチャの男」を観たのは
ちょうど40年前の大阪は梅田コマ劇場。
それを思えば…。
 
この公演は、昨年予定されていた
日生劇場でのファイナル公演が
コロナ禍で中止になり
涙を呑んだファンやキャスト、スタッフのために
実現したリベンジ公演。
 
今度こそは、何があっても見逃せない。
 
万難を排して行かねばならぬ~(毎度)

と、鼻息を荒くしてS席をゲット。

 

抽選で決まる座席は、残念ながら

後方の下手寄りとイマイチな場所だったが

この劇場は階段状に座席が設置されており

思いのほか観やすかった。

 

さて、「ラ・マンチャの男」ファイナル。

 

今回の公演は、

これまで私が何十回も観てきた

それとは少し違っていた。

 

様々な場面が

高齢の白鸚に配慮した演出に

変わっていたのだ。

 

例えば、

舞台中央に設置される

牢獄へと延びる長く急な階段。

 

観る前は、あの階段を

白鸚は下りたり上ったりできるのか?

と思っていたら、

今回は階段ではなく、

緩やかなアーチ状の橋になっていた。

 

また、劇中劇をやるために

セルバンテス(白鸚)が

罪人に役を振る場面では、

家来のサンチョが代って

セルバンテスの台詞を担っていた。

 

この場面は、白鸚の

歌うような台詞術が見られるところで

個人的に大好きな箇所だっただけに、

ちょっと残念。

 

戦いの場面も、できるだけ、

白鸚の動きを少なくしていた。

 

このように、様々な場面で

演出に変更が加えられていたが、

もちろん、不自然さは皆無だった。

 

ただし、何度も観てきた身としては

こうした変更に気を取られて

肝心の台詞が頭に入って来なくなってしまい

戸惑ったのは、正直なところ。

 

それでも、名曲を浪々と歌い上げ

魂を揺さぶる白鸚の歌声には

微塵も老いを感じさせなかったのは流石。

 

ただ、度々支えられている姿を見ると

感動とは別の感慨が湧いた。

 

舞台が終わった後は

観客が総立ちで

スタンディングオベーション。

 

カーテンコルでの白鸚には

少し心配なところが垣間見えたが

傘寿にして立派に

この大作をやり遂げた精神力に感服。

 

舞台から役者がいなくなっても

拍手はいつまでも鳴りやまなかった。

 

通常の千穐楽なら

何度も役者たちが登場し

カーテンコールに応えてくれるものだが

今回はいくら拍手を続けていても

再び白鸚が舞台に登場することはなかった。

 

これで本当に、

白鸚の「ラ・マンチャの男」は

見納めになったことを実感した。

 

ところで、今回の舞台で

驚くほどの変化を見せてくれてた役者がいた。

松たか子が、その人。

 

初演の時も観ているが、

今回の彼女が演じるアルドンさは

初演時に感じた幼さはまるでなく

鬼気迫る渾身の演技で

上月晃以来、代々見続けてきた中で

もっとも、素晴らしいアルドンサだった。

 

見果てぬ夢・・・。

さあ、次はどんな夢をみようか。