みなさんこんにちは。
当ブログは主に鉄道ネタを扱うブログですが、
今回のテーマは『将棋』。
去年、とあるスマホアプリをダウンロードした。
それがこちら。
ぴよ将棋
無料将棋アプリの中でも、トップクラスの強さを誇る将棋アプリ。
アマチュア六段となると、全国大会で優勝するレベルであり、プロ棋士養成機関の『奨励会』に入る事ができるくらいの実力。
早い話、恐らくレベル40に勝てるアマチュアは極少数。
「実際の段位と本当に同じ強さなのか?」
という質問をしばしば見かける。
そこで今回、この疑問について検証する。
つまり、ぴよ将棋が
『実際の段位を正確に再現しているのかどうか?』
調べてみる。
検証方法
ぴよ将棋を、日本将棋連盟公認の正式な段位を持つ人間か将棋ソフトと対局させ、その勝敗によってぴよ将棋の段位が正確か否か判断する。
今回の検証で使用するのはこのソフト。
AI将棋 version14
このソフトとぴよ将棋を対局させる。
ぴよ将棋六段 対 AI将棋四段
強さで二段差がある。
二段差をどう考慮するかだが、第57回NHK将棋トーナメントの準決勝で解説を行っていたプロ棋士田中魁秀九段の解説の一節に
「プロ棋士なら二段差はほとんどないに等しいが、例えばアマチュアなら初段と三段だと随分差がある」
というのがある。
この事を考慮すると、ぴよ将棋とAI将棋では強さが二段差あるため、『ぴよ将棋』が『AI将棋』にある程度圧勝すれば概ね六段の強さがあると考えられ、『実際の段位を正確に再現している』と判断できる。
対局は次の条件で行なう。
対局条件
◯AI将棋のレベル→AI長考棋士
◯ぴよ将棋のレベル→ぴよ帝
◯手合い→振り駒
◯持ち時間→無制限
AI将棋のレベル
恐らく四段よりも更に読みが深いアルゴリズムが組まれていると思われる。
四段+と言ったところか。
ぴよ将棋のレベル
段位では六段+。
名前がついており、『ピヨ帝』である。
なかなか強さと可愛らしさを秘めた名だ。
手合い
振り駒でAI将棋四段が先手となった。
持ち時間
持ち時間はそれぞれ無制限とした。
無制限とした理由は、コンピュータの計算能力の高さを遺憾無く発揮してもらう事で、両者の強さを最大限に引き出すためである。
対局記録を次に記載する。
対局記録
初手から
▲76歩△24歩▲26歩△34歩▲48銀
△54歩(第1図)
【第1図は△54歩まで】
ぴよ将棋と何度か対戦したが、序盤はほとんど定跡を使用しない印象がある。
AI将棋は普通の指し手。
2手目に角頭の歩を突き、もしこれが対人戦なら早くも心理戦。
△同歩▲同飛△88角成▲同銀△22飛▲23歩
△52飛(第3図)
【第3図は△52飛まで】
あっけなく2筋は破れてしまった。
本当に有段者同士の戦いなのかと思いたくなる様な展開。
▲77銀△62玉▲78金△72玉▲69玉
△33桂(第4図)
【第4図は△33桂まで】
もう少し駒組みが続くかと思ったが、33桂が飛車当たりだ。
このあと先手が仕掛ける。
▲28飛△82玉▲22角△同銀▲同歩成(第5図)
【第5図は▲同歩成まで】
先手の▲22角の強襲からと金ができる。
これは放っておくと次に▲23と〜▲33と活用が見込めるのでこれは早くも先手有利だ。
有段者同士の戦いで、こんなに早い段階で2筋が破られる局面はほとんど見たことがない。
△25歩▲23と△45桂▲33と△55歩▲43と
△22飛▲33銀△23飛▲24歩△21飛▲44と
△57桂成▲同銀△52金(第6図)
【第6図は△52金まで】
先手は後手の桂馬を捕獲し、飛車を抑え込む形だ。
先手陣は少し不安定だが、と金の存在が大きいので、先手が攻める展開が続きそうだ。
▲68銀△92香▲23歩成△同飛▲34と△21飛
▲32銀不成△51飛▲43と△65角(第7図)
なんとなく後手の飛車が捕獲出来そうな感じだった。しかし、
50手目△65角!
【第7図は△65角まで】
これは素晴らしい一着。
▲52とと行きたいが、△同飛と取られ次に
・△32飛
・△47角成
・△56歩
・△76角
などが残り、これは先手が困っている。
しかし▲52と以外では他に有効な手がない。
▲52と△同飛▲77桂△47角成▲58金打
△74馬(第8図)
【第8図は△74馬まで】
▲52とから手順に進んで△74馬。
先手は金を投入して手厚い構え。
しかし目障りなと金が消えて馬を作った後手陣も手厚い。
先手の次の手で形勢は逆転する。
▲21銀成!(第9図)
【第9図は▲21銀成まで】
この手は人間なら指さない手だ。
銀取りから逃げる訳だが、本当にただ逃げるだけの手である。
普通に指せば▲43銀成といくところ。
この後は攻守が逆転する。
△42飛▲47歩△同馬▲同金△同飛成(第10図)
【第10図は△同飛成まで】
流れは一気に変わってしまった感じだ。
▲48銀△45龍▲36角△44龍▲79玉△72金
▲11成銀△26金(第11図)
【第11図は△26金まで】
後手の△26金で今度は先手の飛車が捕獲されそうだ。
▲47角△46歩▲69角△54角▲38金
△91玉(第12図)
【第12図は△91玉まで】
76手目△91玉。
この手は素晴らしい一着。
一旦攻撃前に穴熊に入り、態勢を整える手だ。
これで後手陣は引き締まる。
実際に対局していても、こういう手を指してくる人はやはり強いと感じる。
ぴよ将棋の強さの秘密が少し垣間見える。
▲12成銀△76角▲13成銀△18歩(第13図)
【第13図は△18歩まで】
▲86香と打っておいて、反撃を狙う手はありそうだが、続くかは不明。
本譜は成銀を活用して、先手は歩切れを解消するが、1筋の歩が切れたところをすかさず後手に狙われる。
▲同飛△24龍▲28飛△18歩▲同飛△54角
▲28飛△18歩▲66桂△19歩成(第14図)
【第14図は△19歩成まで】
後手の龍が制空権を握っており、攻守によく効いている。
△56桂が痛打。
どう対処しても次の△76桂が厳しく、元々の不安定な陣形が響き先手陣は崩壊だ。
▲59銀引△68桂成▲同銀△56歩▲58歩
△76桂(第16図)
【第16図は△76桂まで】
△76桂が決まった。
直前の△56歩の突き出しは味のいい手。
4筋5筋に並んだ後手の歩が拠点となり、もはや先手は収拾困難だ。
▲59銀△47銀▲同金△同歩成▲61銀△58と
▲同角△57歩成(第17図)
【第17図は△57歩まで】
金を質駒にしつつ後手玉に少しでも迫るアヤをつけておくが、△57歩成が最強。
「53のと金に負けは無し」とはよく言うが、後手の場合は57のと金だ。
先手は29の飛車が受けに効くので、すぐに詰むことはないが△68金から精算される手順が目に見えている。
▲36角△51龍▲43角△18金▲72銀成
△68金(第18図)
【第18図は△68金まで】
▲同玉△29金(第19図)
【第19図は△29金まで】
こういう展開になると、△91玉の安定感が光る。
▲52歩△72銀▲65角成△41龍▲42歩△同龍
▲43歩△52龍▲56香(第20図)
【第20図は▲56香まで】
△76銀▲78金△65銀▲88金△35角▲57歩
△38飛▲58銀△56銀▲78玉△57銀不成▲89玉
△58銀不成▲98玉△67銀成▲58歩△78金
▲89金打△39飛成▲78金上△同成銀(第21図)
【第21図は△同成銀まで】
先手玉は受け無し。
▲82金△同玉▲78金△89銀▲88玉△79角成
▲同金△同龍(第22図)
【第22図は△同龍まで】
まで164手にて後手の勝ち。
検証結果
最後は流れ良く後手が即詰みに討ち取った。
164手という長期戦ではあったが、後手は終始安定していた印象。
改めて投了図を見ると明らかに実力差がある事がわかる。
ハッキリ言えば後手の圧勝だ。
四段にこれだけ差をつけて勝利できれば、ぴよ将棋のレベル40は六段の実力があると考えていいだろう。
考察
今回の対局では、2007年当時に約10,000円で購入した将棋ソフトが0円のフリーソフトに惨敗。
将棋ソフトの進化スピードの凄さを改めて実感した。
また、ぴよ将棋は序盤の構想力は(?)だが、中盤〜終盤は圧倒的だったところが、このフリーソフトの強さを物語っている。
AI将棋側の評価値がどうだったかも含めて、このソフトの強さを別の機会に違った視点から考えてみたい。
私がすすめる将棋本
私は次の5冊を読みまくって、アマチュア初段を取得した。
他にも読んだ本はいくつかあるが、オススメはこの5冊。
初級者でも、中原誠永世十段の本もしくは藤井猛九段の本で序盤〜中盤の入り口までなら5級位の人とも勝負になる。
中終盤の強化は羽生善治永世七冠の本でOK。
特に『歩の手筋』は私の棋力向上に最も効果的だった本で、1ヶ月で棋力が3級上がった。
ダラダラ読むというよりは、実際に駒を並べて曲面ごとの流れと理想型をイメージしながら読むと効果が高いと思われる。
初段になった現在でも私の座右の書だ。