神様の言葉を重んじ、ヤコブに祝福の特権を与えた母リベカの素晴らしい活躍
イサクの妻はその名をリベカと言った。ハランから嫁いできた。リ
ベカには兄ラバンがいた。リベカはなかなか身ごもらなかった。祈
り求めてようやく身ごもった。胎内には双子があった。双子は胎内
から争いを始めた。
リベカは先行きを憂い神様に尋ねた。
「私の胎内の双子は生まれる前から争っています。一体どうなるの
でしょうか。」
神様は答えられた。
「お前の胎内には2つの民族があり、お前の腹から2つの国が出
る。しかし片方は他方より強く兄は弟に仕えるであろう。」
先に産まれた長男エサウは赤くて全身毛深かった。弟ヤコブは後か
ら産まれたが、その手はエサウのかかとを掴んでいた。イサクが6
0歳の時、この双子は生まれた。やがてエサウは巧みな狩猟者とな
り、ヤコブは穏やかな人柄で天幕に住んでいた。
父イサクは鹿の肉が好きだったのでエサウを愛した。リベカは神様
の言葉ゆえにヤコブを愛した。ある日ヤコブがあつものを煮ていた
時、エサウはお腹をすかして狩りから帰ってきた。
エサウはヤコブに言った。
「私は飢え疲れた。お願いだ。その赤い料理を私に食べさせてく
れ。」
ヤコブは言った。
「まずあなたの長男の特権を私に売りなさい。」
ヤコブ母リベカから「兄は弟に仕えるであろう」という神様の期待
を知らされていた。
エサウは言った。
「私は死にそうだ。長男の特権など私に何になろう。長男の特権で
は飢えを凌ぐことはできない。」
ヤコブはまた言った。
「まず私に誓いなさい。」
彼は誓って長男の特権をヤコブに売った。
そこでヤコブはパンとレンズ豆のあつものとをエサウに与えた。
彼は飲み食いして、立ち去った。
このようにしてエサウは長男の特権を軽んじた。この時以来ヤコブ
は生まれにおいては次男であるが、権利としては長男の位置に立っ
た。
ミカエルは神様に言った。
「ヤコブはあなたの期待を一身に背負っています。既に登場人物は
揃いました。私は胸がドキドキしています。もうこれ以上延長はで
きません。勝敗の鍵はヤコブが握っています。」
歳月は流れた。イサクは年老いて目がかすみ、誰かれの区別ができ
なくなった。イサクは死ぬ日が近いことを悟り、日頃愛していたエ
サウを呼んで言った。
「私はもうすぐ死ぬであろう。そこで、いつものおいしい鹿の肉料
理を今一度食べさせてくれ。私は満足してお前を祝福し、全ての権
限を与えるであろう。」
エサウは小躍りして喜んだ。鹿の肉を求めて狩りに出かけた。
父イサクがエサウに語るのを母リベカは聞いていた。そしてヤコブ
を呼んで言った。
「私は聞いていました。イサクはエサウを祝福しようとしていま
す。私はお前たちがまだ私の胎内にいる時神様から聞きました。
兄が弟に仕えなければ神様の計画は破壊されると・・・。それで今
まで私はいつもあなたを愛し導いてきたのです。もし祝福がエサウ
に行ってしまえば全ては終わりです。ヤコブよ私の勧めを受け入れ
なさい。今エサウは父の依頼を受けて鹿狩りに行っています。あな
たは猟師ではありません。いまから猟に出かけたのでは間に合いま
せん。だから、近くから山羊の肉を取ってきなさい。私が鹿の肉の
ように味付けをします。あなたはそれを父イサクに持っていき、あ
なたが祝福を受けなさい。イサクは年老いて今や目の前に誰が立っ
ているか見分けがつきません。」
ヤコブは言った。
「お母さん、もし声で見破られたらどうしますか。また触られたら
どうしますか。エサウは毛むくじゃらですが私はすべすべしていま
す。私は祝福を受けるどころか呪われるでしょう。」
リベカは言った。
「もしあなたが呪われることがあるなら、その呪いは私が受けま
す。気にすることはありません。私の言う通りにしなさい。」
ヤコブは母の言葉に従い、母の作った料理を持って父イサクのとこ
ろへ行った。
ヤコブはイサクに言った。
「父よ、私はエサウです。あなたが命じたおいしい鹿の肉料理を
持ってきました。どうぞ食べて私を祝福して下さい。」
イサクは言った。
「もう鹿の肉を手に入れたのか。」
ヤコブは言った。
「神様が私を恵んで下さいましたので、私はこんなにも早く肉を手
に入れることができました。」
イサクは言った。
「声がヤコブのように聞こえるが・・・、息子よ、もう少し近づき
なさい。私はお前に触ってみよう。そうすればお前が誰であるか分
かるであろう。」
ヤコブはイサクに近づいたのでイサクは手で触った。母リベカはヤ
コブにエサウの晴れ着を着せ、身体に毛皮を巻いていた。イサクが
触った時、毛むくじゃらであったので見分けることができなかっ
た。イサクはヤコブをエサウと思い込み祝福を与えて言った。
「私は神様が私に与えて下さった全てをお前に与える。天の恵みは
お前に注がれ、地の産物はお前のものとなるであろう。兄弟達はお
前に身をかがめ、世界のすべての民はお前に身をかがめるであろ
う。お前を祝福すれば祝福を受け、お前を呪えば呪われるであろ
う。」
このようにしてイサクの祝福はヤコブに注がれた。一度与えた祝福
は、もはややり直しはきかなかった。ヤコブが去った直後に、何も
知らないエサウが喜びと期待に溢れてイサクの下に息をはずませな
がらやってきた。
つづく
