◆福島原発:「風評で物流が断絶」南相馬市長が窮状訴える
東京電力福島第1原発の相次ぐ事故で、市内の多くが「避難指示」か「屋内退避」圏となった福島県南相馬市。屋内退避圏内にある市役所に泊まり込みで陣頭指揮を執る桜井勝延(かつのぶ)市長(55)は17日、毎日新聞の電話取材に「放射能漏れの風評で物流も断絶している」と窮状を説明、「原発の事故発生は報道で知るばかりで、情報は市には全く来ない。怒りさえ覚える。国や東電は現場に来て直接支援してほしい」と訴えた。
人口約7万人の同市は11日の大地震と津波で、15日までのまとめでは、少なくとも約300人が死亡または行方不明となった。その後は原発事故の混乱もあり、集計が追いつかない状態だ。
市内15カ所の避難所には、17日午後時点で約1400人が暮らす。政府の指示通り、外出を控え自宅で「閉じこもる」人も多数おり、避難所でも「放射能の濃度は」「逃げた方がよいのか」などと職員は質問攻めにあっているという。
地震発生直後は市内の避難所に最大約6000人が避難。1人1日当たりおにぎり一つしか配れないほど食料不足が深刻だった。市外からの物資が届き始めた15日、屋内退避指示が出されてからは必要な物資の到着が滞るようになった。県央から南相馬市に向かう途中で支援物資が降ろされ、市職員と避難所の被災者が取りに行ったケースもある。
放射線値に関する県の観測では、南相馬市の数値は福島市よりむしろ低め。桜井市長は物流停止について「深刻な風評被害」と憤る。寝たきりの入所者が多い特別養護老人ホームで、放射能への恐怖から突然辞めてしまった職員もいると報告を受けたという。
重症患者を受け入れている市立総合病院でも、薬品や酸素ボンベなどが足りず十分な処置ができない状態。屋内退避指示を受け、市は15日から市外への避難希望を募っているが、ガソリン不足が深刻化し、希望者全員の移送のめども立たない。市によると、18日朝の時点で、市民約2000人が避難を希望し、そのためには大型バス50台が必要という。
桜井市長は「これは天災ではなく、人災だ。燃料がなく避難を希望する住民を移動させられないほどつらいことはない。住民の移動手段の確保は国の最低限の責任だ」と語気を強めた。【神保圭作】
毎日新聞 2011年3月18日 10時45分
福島第1原発事故を受け、屋内退避の指示が出ている半径20キロから30キロ以内地域は
ここ数日の南相馬市長の談話を聞く限り、風評被害により物流が途絶えるも、
ガソリンもなく脱出することもできない、まさに陸の孤島と化した惨状が伝わってきている。
市長は地震災害、津波災害、そして風評被害。天災ではなく、人災であると訴え、
放射線被ばくの目に見えない恐怖と、窮状に嘆く姿は痛切の極みである。にもかかわらず
国の風評被害に対する対策、支援策がまるでみえてこないことに怒りを覚える。これでは見殺しである。
今回の原発事故を受けて、放射線被ばくについての解説を掲載したページが
いくつか見られるようになっている。是非、冷静に対応していただき、
今なんとか命をつないでいる被災者の方々への一刻もはやい支援を切にお願いいたします。
東北地方太平洋沖地震に伴い発生した原子力発電所被害に関する放射能分野の基礎知識
政府の風評被害への対策の遅れに加え、東電との疎通のなさが事態を悪化させたとの批判と追及は、
震災の人命救助がひと段落を迎えたのちに激化することは避けられない上に、
今後の原子力発電への理解ははるかに難度を増すことは間違いなく、
我が国の最重要課題であるエネルギー問題に今後長期にわたり深刻な影を落とすことも必定である。
未曾有の事態は、まだ始まったばかりである。