うそっぺ物語(帝編1) |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

 冷泉天皇(れいぜいてんのう)、17歳。


 帝は、天皇になるのが嫌だった。


「何が格式だ何が礼儀だ何が儀式だ、ついでに何が天皇だ」

 天皇となるまでの皇太子時代は、周りの人に、なりたくないと必死で言った。

「それはいけません、あなたは帝様になる運命の人です」

 何度も何度も聞かされたこの言葉。

 彼の父は村上天皇。力もあり実直な天皇として人気があった。政治力もあり、財政が逼迫してくると、自ら節約を行い、皆をそれに続かせた。父が偉大だった。

「んんもー嫌だ嫌だ、そうだこうしよう」

 冷泉天皇即位前の皇太子(憲平親王)は思いついた。

(自分が変人奇人になれば、みんな諦めるだろう)

 歌会のときに、奇声を発して大声で歌ってみた。

(どうだ、驚いただろう)

「皇太子様、いつそのような技を覚えられましたか」

(ん、技?以前に同じ事をした者がいたのか)

 ある日、父(村上天皇)が送ってきた手紙の返事を書くことになった。

(そうだ、普通に返事をしないほうがいい、父に嫌われれば良いのだ)

 そう思い立った親王は、手紙に一物の絵を描いて送り返した。

(これで父も怒っただろう、もう天皇にならなくてすむ)

 数日して父(村上天皇)に出会った。

「それはそうと憲平よ、そなたの一物はまだまだじゃのう、まあ、まだ若いのだから心配することはないぞ」

(くそっ、そう取られたか。しかし俺の一物がそんな小さいわけがないだろう)

 色々とやったが努力の甲斐無く、とうとう天皇になってしまった。

(あー、とうとう天皇になってしまった。こうなったらいかに早く退位できるかだ)

 儀式の時に突然烏帽子を投げ捨てた。ついでに周りを見渡して、近くにいた女房を引き連れて部屋に入ってその女房を犯した。

(女には申し訳なかったが、これで即刻終わりだな、がはははは)

 しかし女房は帝の手がついたことを喜んだ。

 帝の周りは、そのことより、『もし子供が生まれたらまた家系がややこしくなるぞ』と心配した

 そんなことが続いて2年が経った。帝は奇人変人の真似事に疲れ果ててきた。

(何をやっても否定されないというのは、何を言っても否定されることより辛いんだぞ)

 何もする気が起こらなくなって毎日ぐったりとしていると、周りの人が騒ぎ出して噂した。

(帝様が何もしなくなった。もうすぐ崩御(亡くなること)されるぞ。次を捜せ)

 そういう噂は早い。

 ぼけっとし始めて2週間後に天皇が変わった。

(よくわからんが、やっと変わったぞ。それにしても今までの努力は何なのだったのだ)

 機嫌を良くした冷泉天皇(天皇ではなくなったので冷泉上皇)は冷泉院というところで奇行もなく61歳まで生きていた。

 なんと、世のわからないことだ。


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 冷泉天皇は本当に変人だったらしいのですが、天皇を退位した途端に、その奇行が無くなったらしいです。よほど天皇が嫌いだったのでしょう。この人、絶世の美男子だったそうですよ。

 当然こんな天皇なので廃止されていた関白が置かれました。関白になった藤原実頼は身長がとても低い老人で140センチ無かったとも言われています。

 そのせいか、藤原実頼はいつも着る服と烏帽子に糊を思い切りつけて、襟を思い切り立てていたそうです。

 (140が150になった所で大してかわらないのにな…)



【続く】