陰陽師河辺名字(かべのみょうじ)と藤原足長の話はまだ続く。
そこへ、噂をすればなんとやら、安部清明が公卿を3人連れて遊びに来た。
「やあ、清明、ひさしぶりだの」
「おう、名字よ、今日はお願いがある」
「どうしたんだ」
「おまえもフライ板をもっておっただろう、取り替えてくれ」
「なぜだ」
「フライ板の柄がひん曲がった」
「いいとも、しかし、これで最後だぞ。わしのがひん曲がると、もうど根性の術は使えないぞ」
「仕方が無い。フライ板を作れる者がいないのだ。剣を打つより難しいといわれた」
「ではもってゆけ、まあせっかく来たのだ酒でも出そう、ゆっくり遊んで行け」
「こちらのお方は」
「藤原足長殿だ、さきほどまで清明の話をしておった」
「なんの話だ」
「陰陽師の術の話だ。カエルを殺しまくる術だ、かっかっかっか」
「なんだ、その術のことか。足長殿、この名字も奇怪な術を持っておるのをご存知か」
「なに、名字も持っているのか、見せてくれ」
「そんなに見たいのか。しかたがない、見せてやろう」
「どんな術を使うのだ」
清明が横から説明した。
「足長殿、名字はあるものを自由自在に上下に動かすことができるのだ」
「自由自在に……、それは何なのだ」
「睾丸。つまりタマタマでござる。名字はタマタマの動きで天文を計る事ができるのでござる」
「なんと!是非見せてくれ」
「おおー。わちらも見とうござる」
清明の後ろに座っていた公卿もざわめいた」
「名字、みせてやれ」
「これは一子相伝の秘術なのだが、仕方がないのう」
そう言って名字は服を脱いで裸になった、そして呪文を唱えながら足を開き膝を少し曲げて構えた。相撲取りが四股を踏むときに構えるような格好だ。
「おのおのがた、こちらに来られよ」
清明は皆を名字の背後に集め、頭を畳につけて見上げるようにさせた。
「汚いケツだの」
「ほっほっほ、男のケツはあまり見たくはないの」
名字の尻の割れ目の奥に、玉が二つ入った袋がぶら下がっていた。
名字は呪文を唱えるのをやめて言った。
「よくご覧あれ、そろそろ始まります」
そういって再び呪文を唱え始めた。
すると、驚いたことに名字の玉袋が少しだけ上下に動き出した。ゆっくりと、ゆっくりと。
「おお~~~っ」
一同は息を飲んだ。
「まだこれからでござる」清明が説明した。
「右~~が~~~~上がる~~~~」
名字がそういうと、驚いたことに右側の玉だけが上にがってゆく。
「左が~~~~上がる~~~」
そうすると、今度は右の玉が下がり、左の玉が上がった。
「おーーっ、これは、神の技じゃあ」
一同は驚いて唾を呑んだ。
しかし、下から上を向いていたので、飲んだ唾が鼻に入ってむせたやつがいた。
しばらくして、呪文が終わり、玉袋も静かになった。
名字は服を着ながら皆に言った。
「まもなく、雨が降るであろう」
そういい終わって暫くすると、本当に雨が降り出した。
雨とともにカエルの鳴き声が激しくなってきた。
「おっカエルだ」
清明は交換したフライ板を持って出て行った。
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現代でも玉袋を自由に動かせる人物を私は知っている。その人物は中堅企業の社長をやっているが、名誉のために名前を明かすことはできない。ひょっとすると、河辺名字(かべのみょうじ)の子孫なのだろうか。
【続く】