うそっぺ物語(陰陽師2) |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

 陰陽師河辺名字(かべのみょうじ)藤原足長の話はまだ続く。

 そこへ、噂をすればなんとやら、安部清明が公卿を3人連れて遊びに来た。

「やあ、清明、ひさしぶりだの」

「おう、名字よ、今日はお願いがある」

「どうしたんだ」

「おまえもフライ板をもっておっただろう、取り替えてくれ」

「なぜだ」

「フライ板の柄がひん曲がった」

「いいとも、しかし、これで最後だぞ。わしのがひん曲がると、もうど根性の術は使えないぞ」

「仕方が無い。フライ板を作れる者がいないのだ。剣を打つより難しいといわれた」

「ではもってゆけ、まあせっかく来たのだ酒でも出そう、ゆっくり遊んで行け」

「こちらのお方は」

「藤原足長殿だ、さきほどまで清明の話をしておった」

「なんの話だ」

「陰陽師の術の話だ。カエルを殺しまくる術だ、かっかっかっか」

「なんだ、その術のことか。足長殿、この名字も奇怪な術を持っておるのをご存知か」

「なに、名字も持っているのか、見せてくれ」

「そんなに見たいのか。しかたがない、見せてやろう」

「どんな術を使うのだ」

 清明が横から説明した。

「足長殿、名字はあるものを自由自在に上下に動かすことができるのだ」

「自由自在に……、それは何なのだ」

「睾丸。つまりタマタマでござる。名字はタマタマの動きで天文を計る事ができるのでござる」

「なんと!是非見せてくれ」

「おおー。わちらも見とうござる」

 清明の後ろに座っていた公卿もざわめいた」

「名字、みせてやれ」

「これは一子相伝の秘術なのだが、仕方がないのう」

 そう言って名字は服を脱いで裸になった、そして呪文を唱えながら足を開き膝を少し曲げて構えた。相撲取りが四股を踏むときに構えるような格好だ。

「おのおのがた、こちらに来られよ」

 清明は皆を名字の背後に集め、頭を畳につけて見上げるようにさせた。

「汚いケツだの」

「ほっほっほ、男のケツはあまり見たくはないの」

 名字の尻の割れ目の奥に、玉が二つ入った袋がぶら下がっていた。

 名字は呪文を唱えるのをやめて言った。

「よくご覧あれ、そろそろ始まります」

 そういって再び呪文を唱え始めた。

 すると、驚いたことに名字の玉袋が少しだけ上下に動き出した。ゆっくりと、ゆっくりと。

「おお~~~っ」

 一同は息を飲んだ。

「まだこれからでござる」清明が説明した。

「右~~が~~~~上がる~~~~」

 名字がそういうと、驚いたことに右側の玉だけが上にがってゆく。

「左が~~~~上がる~~~」

 そうすると、今度は右の玉が下がり、左の玉が上がった。

「おーーっ、これは、神の技じゃあ」

 一同は驚いて唾を呑んだ。

 しかし、下から上を向いていたので、飲んだ唾が鼻に入ってむせたやつがいた。


 しばらくして、呪文が終わり、玉袋も静かになった。

 名字は服を着ながら皆に言った。


「まもなく、雨が降るであろう」


 そういい終わって暫くすると、本当に雨が降り出した。

 雨とともにカエルの鳴き声が激しくなってきた。


「おっカエルだ」


 清明は交換したフライ板を持って出て行った。


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現代でも玉袋を自由に動かせる人物を私は知っている。その人物は中堅企業の社長をやっているが、名誉のために名前を明かすことはできない。ひょっとすると、河辺名字(かべのみょうじ)の子孫なのだろうか。


【続く】