小説「絵慕の夕風」--その14 レース1-- |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ




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≪沖田≫R大3回生SFWSF

≪杉山≫R大3回生軽音絵慕のウエイター

≪三本木≫R大3回生絵慕のウエイター

≪浅田さん≫R大4回生 WSF軽音絵慕のウエイター

≪シゲさん≫knk大3回生絵慕常連ヨット

《内村 晴子》 S女学院1回生 WSF

《井本 里美》 S女学院1回生

(SF=サーフィン、WSF=ウィンドサーフィン)

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海で好きな所。

大きな波と波の谷間。

サーフボードに乗って、波の谷間をパドリング。

波の谷間は無音の世界。

コポコポコポ

唯一の音。

水中から浮き上がってくる泡の音。

やがて襲ってくる波なんて、どうでもよくなる。

私だけの小さな幸せの時間。



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(ヤマハマリーナ)


土曜の夜はマリーナでパーティーだった。

とは言っても正式なものではなく、明日のレースのためにクルーザーに泊まり込む連中ばかりが集まって、ワイワイガヤガヤ。

知らない人同士でも、以前から知ってるかのように皆気さくに話し合う。

大体が、どこで何してる人かというところ。

面白いスポットの話し。

今までの学生ばかりの会話から、社会人の会話に変わり、見知らぬ世界を覗き見た。

先週からヨットと言う物に出会ってから、夢と世界が扇型に広がって行く。

夜中まで皆と過ごして、シゲさんとクルーザーの中で寝た。

港の中でもクルーザーの中で寝ると、小波が揺り篭のように私を夢の世界に導いた。

翌日、七時には目が覚めた。

「ふぁーっ、朝は苦手や」

「おう、おはよう、さぁ今日は頑張ってやぁ」

「おまえ朝から元気やのお」

「もうすぐオーナーくるから、朝飯はご馳走してくれるから待っとこ」

「おー、わかったぁ、歯磨き粉持って来んの忘れた、貸してくれ」

「歯ブラシ持ってんのか」

「ほら、これ」

「それ持ってきてんのやったら歯磨き粉も持って来いよ、ほれ」

「ありがとやんす」

「琵琶湖の朝は気持ちエエなぁ」

「ほごぉがごー(そうやのぉ)」


しばらくするとオーナーが来た。


「おう、おはよう」


オーナーは宇治市で医者をやっている、中年のおじさんだ。


「おはようございます。」

「お、おはようございます。」


「彼は沖田です。」


「よろしくおねがいします」


「おう、よろしくね、続々来てるなぁ、腹減ったな、モーニングでも食いに行こか」


「はい」


我々はマリーナにある喫茶店でモーニングを食った。


「9時から、スキッパーズミーティングがあるから、それが終わったらすぐに沖に出て軽く走っておこう」


「はい」


「沖田君は経験は?」


「はい、・・一週間です!・・・ははは・・・」


「大丈夫や、おっもろいでぇ、今日は楽しんでぇな」


「はい、ありがとうございます」


おじさんとの会話は喋り慣れていないので軍隊の将校のようになってしまう。


スキッパーズミーティングが終わり、いよいよ出航だ。



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これは、ちょうど写真の奥から手前に風が吹いている、風力は2,3mだろう。


風下に走る時は、写真のようにカラフルなセールを張る。


このセールはスピンネイカーと呼ばれて、ヨットの個性をアピールするものでもある。


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小説「絵慕の夕風」--その15--

小説「絵慕の夕風」--その1--

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