小説「絵慕の夕風」--その13 練習-- |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

 

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≪沖田≫R大3回生SFWSF

≪杉山≫R大3回生軽音絵慕のウエイター

≪三本木≫R大3回生絵慕のウエイター

≪浅田さん≫R大4回生 WSF軽音絵慕のウエイター

≪シゲさん≫knk大3回生絵慕常連ヨット

《内村 晴子》 S女学院1回生 WSF

《井本 里美》 S女学院1回生

(SF=サーフィン、WSF=ウィンドサーフィン)

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水面ぎりぎりを何かに乗って走ると、かなりのスピード感を味わえる。

水面を時速30キロで走るとバイクで時速100キロで道路を走るのと同じくらいではないだろうか。

翌日も朝から練習に行った。

この日は風が昨日より強かった。

少し風波が出ていた。

「ヒャッホー」

ヨットはヒール(傾くこと)して、加速しだした。

バシャバシャと波を切る音が段々早くなってきた。

バウ(船の頭)が浮き上がり、風波が船底に当たって船がジャンプするのではないかとさえ感じた。

「まだまだぁ、こんなくらいの風は大したことないでー」

シゲさんは笑っていたが私の顔は引きつっていた。

しかし久し振りに鳥肌が立つ思いを味わえて、恐怖と喜びで頭がどうにかなりかけていた。

「今度はクウォーター(風下に45度)、この状態が一番スピードがでるでぇ」



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「うぉぁー~」

「さぁー今度はジャイブやでぇ、ブームが飛んで来るから頭打つなよー」

ジャイブとは風下をグルッと旋回すること。

セールが左にある状態でバウを左方向に回していくと、セールが船より風上になってくる。

そのときにセールに裏風が入った瞬間、ブームがバーンっと反対側に振られてくる。

頭を下げて確りと操作する。

そしてまた風上に上って行く。

「すごいすごい、オキちゃんエエ感じやでぇ」

「おもろいやんけー、段々目が慣れてきた」

そういいながら午前中は直ぐに過ぎた。

午後になって、また二人で岸を離れた。

「ここでストップ」

シゲさんが船を止めた。

「ディンギーは中が空洞やから浮袋みたいなもんやけど、いまから船がこけた時の訓練するから」

「わかった」



「こけそうになっても船から落ちたらあかんでぇ、船が横だおしになっても船の横に上がってセンターボードに乗って船を起こすんやでー」

シゲさんはマストをつかんでわざとヨットを倒し始めた。

「落ちたらあかんで、ほらほらぁ、あー落ちた。」

ザッブーン。

「もう一回」

ザッブーン。

「もう一回ィー」



「そうそう、センターボードに移って、船を起こせー、アカンアカン、船に戻るのが遅いー、戻ったらバウを風上にむけて!シートをまとめて、船を安定させろー」

なかなか忙しい。

「遅いーもう一回」



練習は夕方まで続いた。

陸に戻ると流石に疲れて歩くのもやっとだった。

「疲れた、かえろか」

「一応一通り教えたで、後は慣れと感性やな」

「おう…頑張るわ」

翌日もその次も練習した。

週末になって、琵琶湖の横断を何度もして、少しは自信が付いてきた。

「シゲさん、俺なんか水面スポーツは自分の性格に合ってるみたいや」

琵琶湖を照らす真っ赤な夕日が綺麗だった。



biwako

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小説「絵慕の夕風」--その14--

小説「絵慕の夕風」--その1--

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