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≪沖田≫R大3回生 SF WSF
≪杉山≫R大3回生 軽音 絵慕のウエイター
≪今田≫R大3回生 沖田と高校からの友人
≪三本木≫R大3回生
≪徳永≫K教育大3回生 沖田と高校からの友人
≪浅田≫R大4回生 WSF 軽音 絵慕のウエイター
《柿沼康子》K女子大4回生 絵慕のウエイター ヤッチン
《大谷裕子》S女学院1回生 アイ 身長168
《井上美穂》S女学院2回生 杉山のGF 軽音 ロングストレート 美人
《田中悦子》S女学院1回生 エッチャン 身長166
(SF=サーフィン、WSF=ウィンドサーフィン)
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翌日は土曜日で朝からよく晴れていた。
アイは家を出て絵慕に向かった。
実は誰にも話していない事があった。
しかし、ずっと一人だけの心のうちに隠しておく事が出来なくなって、ママに話を聞いてもらおうと思った。
ママはいつも11時頃に店に顔を出すのでそれに合わせて家を出た。
土曜日の絵慕は暇だった。
店に入ると、今日は三本木がカウンターに入っていた。
「サンちゃん、おはよー」
「おうアイちゃん、おはようさん」
「ママは?」
「うーんもう降りてきはると思うで、なんか飲むか」
「うん、じゃあカプチーノ」
暫くしてママが眠たそうに出てきた。
「あらアイ、おはよ。一人か?へ?」
「へ」と言うのは京都のおばさんがよく使う。
何の意味もなく、ただ、相槌や間合いを保たせるための言葉だ。
「うん、ママ話したいことがあんねん」
「なんえ?オキ(沖田)のことか?いゃっはっはっは」
と、三本木のほうを向いて軽く笑った。
「はぁ?あんなアホ…どーでもええって」
「アホやてハッハッハアンタも言うほうやな、オキはエエ子やで、私がなんか言うたろか?」
「ううん、ええって(いらないって)、そんな話しとちゃうの、もっと真面目なはなし」
ママは真剣な顔に戻って
「ごめんごめん、店すいてるから、あっちいこか、あーサンチャン、ごめんやけどわたしのホットとアイのやつ新しく作ったってくれへん、ごめんやで。アイちゃん同じのでええか?へ?」
「うんありがとう」
そう言って、店の右隅の煉瓦で組まれた壁になったテーブルへ移動した。
「今日は店も暇やし、いつものうるさがた違ごうて三本木やし、よかったな」
「うるさがたって?」
「ホッホッホ、スギ(杉山)に決まってるやろホッホッホ、それでどうしたん?」
ママは急に真顔で話を聞く体勢になった。
「実はな、この間あるコンテストに応募したら、書類選考が通ってん」
「コンテスト、ええやんか、アイやったらドンドンいったらんかいさ。応援するで、…で、何のコンテストに応募したんや?へ」
ママは小声になって話だした。
サンチャンがおかわりのカプチーノとホット(コーヒー)を持ってきた。
「はい、お待たせしました。」
「ありがとー」
「サンチャンごめんやで」
「いえいえどうぞごゆっくり」
と言ってカウンターにもどっていった。
サンチャンは気を利かせて素直に離れていった。
「熱い内に飲みよしや(飲みなさいね)、それで何んえ?」
「うん…実は…ミスユニバース」
ママはコーヒーを溢しそうになりながら、
「えーっ…、また大きく出たな、エエで、一発ドーンと行ったりーな、そしたら今度は何え?」
「来週に京都大会、ママにしか言ってへんから、誰にも言わんといてな」
「解った。まず悔いの無い様に行っとおいで」
「うん、がんばるわ。けど身長がなぁ」
「なに言うてんの、書類選考通ったら身長もクリアしてるってことやないの、応援するから自分の思う様にやりたいようにやっとおいで」
身長が168というのは確に中途半端かもしれない。
普段は背が高くて目立ち過ぎる、しかしこういう所は170や180の女性が本性をむきだして出てくる。彼女にとっては初めて背が低いコンプレックスを味わうかもしれない。
「うん、ありがとう、もうすぐレッスンやから行くわ」
ママは出口までアイを送った。
「ほな、がんばっとおいでや」
「うん、行ってきまーす」
ママはアイが藤森駅に消えて行くまで、後ろ姿を追っていた。
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小説「絵慕の夕風」--その1--
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