ギャンブル小説「とったらんかい!」--信じるか1-- |         きんぱこ(^^)v  

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  きんぱこ教室、事件簿、小説、評論そして備忘録
      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

私が最初に考えていた最終レースの予想には、


すでに、5番の馬を穴馬として賭けていた。


一着 7,8
二着7,8,5,2
三着7,8,5,2,1,6

天の声を聞き、


私の頭に浮かんだ順位は、

一着 4番 30倍
二着 5番 45倍
三着 6番 6倍


(4番の穴馬を賭けろ!・・)


また、天の声が聞こえた。


そんなものは無いと思うだろう。


私の中で、常識を名乗る男が現れてきた。


「4番・・・昨年このレースに勝った馬か・・・・


その後骨折して、久しぶりの前走で最下位。


調教は少しよくなっているけど、もう七歳だろぉ


歳食ったら瞬発力もなくなってきているから


無理無理、だめだ。今のままいこう。」


天の声を名乗る人物は、私の中に確かにいる。


しかし、私ではない。


その人物は常識を名乗る私に押されて、


どこかに行ってしまった。


過去にも何度もあった。


常識を名乗る私が出てくると、


必ずどこかへいってしまう。


いったい誰なんだろう・・・。


自分で意識するとなかなか出てこないし


自分が意識しているのか


天の声がいっているのか判別がつかない。


だから、競馬でも午前中に出てくることは無い。


いつも、レース終盤で、私が予想に疲れ果てた


ころに、フッと聞こえてくる。


自分で意識して待つと出てこない。


私を助けてくれるような人。


亡くなった親父、


(父は膵臓癌で亡くなった。


膵臓の腫瘍を取る手術をした。


そのときは癌ではないといわれていた。


手術が始まって、私はモニターで


手術の様子を見ていた。


田舎の病院だったので、同じく


京都にある、とある大病院の医師も


手術内容を遠隔で見ていた。


摘出してすぐに担当医から呼出があった。


「京都の先生は癌ではないといっていました。


けど、どうも納得がいかないので、2センチほど


深く切りました。」


そういって、摘出したての膵臓を見せてもらった。


「もっと切るべきかどうか、その相談です。」


赤黒い肉の塊の中央に色の違ったしこりのような


ものが、小さく放射状になって見えた。


(癌だ・・・・・・)


素人ながら、そう感じた。


「もっと切れますか?」


「これ以上切ると、大変な手術になります。


神経のところになるので、かなり慎重にしなくては


いけません。あと、膵臓以外にも影響がありますので


バイパスもしなければいけません」


「そうですか・・・」


私は、あまりひどい手術だと、直っても親父が


哀れに思い、またそこまで手術しても


助かる確率が少し上がるだけだと判断した。


膵臓癌が助かる確立は2%しかないのだ。


「このまま閉じましょう、あとは神様に祈ります」


私は、そう答えた。


手術が終わり、父は元気になった。


食事も普通の食事になり、


タバコもやめて、酒もやめた。


毎日ジョギングして、顔も血色がよかった。


半年して、食事中に突然、胃腸の痛みを


訴えた。


すぐに病院に行った。


マーカー値が上がっていた。


CTの結果、小腸の当たりに腫瘍が出来ていた。


小腸癌・・・・と言うのは無い。


小腸は癌にはならないのだ。


大腸は癌になる。


医者は中を見てみないと解らない・・と言った。


父と相談して、もう一度手術をすることになった。


切開すると小腸の外側に腫瘍が出来ていた。


それが小腸を詰まらせる原因だった。


手術は行われ、癒着していた小腸も切除され、バイパス


された。


手術は終わったが、親父の体が回復することはなかった。


・・・・続く・・・・