ギャンブル小説「とったらんかい!」--東京-- |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

--東京--

土曜日、東京に向かう新幹線の中にいた。

前日、幾人かの知り合いに手紙や連絡をした。

自分の会社の自分の席に黙って封筒を置いた。

ミーコには直接は知らせなかった。

「東京に仕事だから。」

と言って、机の上に封筒を置いただけだ。

「いってらっしゃーい」

ミーコの明るい声が、私の耳に焼きついた。

《ミーコへ、もし、私が月曜までに戻ってこなければ、警察に連絡してください。場所は、東京の新宿区上落合・・・・○○マンション》

封筒の中はそう記しておいた。

久しぶりにカズにも連絡した。

「おいおい、あんまり危ない仕事に手をだすなよ・・わかった。帰るときに必ず連絡せぇーよ」

「ああ、心配かけてすまん。万が一って事やから、まず心配はないけど必ず連絡するから」

舞鶴で世話になったロシア人のハーフの田中にも連絡した。

「なんかあったら直ぐに連絡しろよ、手伝えることはあるから。」

彼とは、ロシアへ中古車の販売で世話になった。

私は以前から、大阪で要らなくなった車をロシアに売り飛ばすアルバイトをしていた。

田中はロシア語が話せるから、ずっと舞鶴でその仕事をしていた。

当時はいい金になった。法律では一台五万までと決まっていたが、四駆などは二、三十万になった。

舞鶴にはロシア船が来る。彼等はほとんどがマフィアかそれに繋がる連中だ。交渉のときはロシア人は男も女もウォッカ臭かった。

自分のできることは全て手を打った。

あとは自分の腹をくくるだけだ。

東京に着いた。

八重洲口からしばらく歩き、コレドの地下で珈琲を飲み、東京メトロの東西線に乗った。

東京の地下鉄は大阪に比べて、ゆっくり走る。落合の駅まで、地のはてに行くような気持ちになっていた。

やがて、電車は落合に着き、階段を上がり、山手通りを渡り、高田馬場の方角に歩いた。

行き交う人々が全て幸せそうに見えた。