我々は、酒とかなりの満足感に酔っていて、
「おぇみんな、タク乗ってどっか行こか」
と言う声に賛同した。
人間の三大欲は
飲む打つ買う・・
ではなくて
食う、やる、・・あと
一つはなんだったっけ・、
とにかく、この国は、やるところは無いと聞いていたので、飲んで踊って・という所を捜そうとはしていた。
冷静に考えると、我々が今いるところがメインストリートである。
わざわざタクシーになど乗る必要はない。
なにを思っていたか、黄色いタクシーに乗り込んだ。
「えっと、あっち」
と、運転手に、わけもわからずに前方を指さした。
タクシーは動きだし、運転手が話しかけてきた。
「ニッポンジーン?」
「おぉ・・そうやけど・・」
「ワタシ、ニホンゴデキルネェ」
おっ、これはラッキー
と思い、
「やったぁ、日本語オッケェ?」
と返事した。
「ニホン、シッテルネェ、ハラキリハラキーリネェ」
「・・・」
どうやら三島幸男の事を言ってるらしい。
(古いなぁ・)
皆が同じように感じてシラケてしまった。
運転手はありったけの日本語知識を披露しだした。

カズが聞く気にならないのか、窓の外を見て、
「おっ、エエ女あるいてるでぇ」
みんなは、運転手を無視してその方向を見た。
通りにはホワイトアングロサクソン系の白人女性がミニスカートをはいて歩いていた。
「あんな女と付きあってみたいなぁ・」
すると、運転手が急に
「オンナァ?・」
どうやら我々の会話でオンナという言葉だけ理解したみたいだ。
「オッケェ、オンナァ、オッケェネェ」
と言って、急に車の進路を森の中(というか、シンガポールに山はないから林の中)に入って行く道へと切り換えて、どんどん走り出した。
我々は運転手の行動を理解できずにキョトンとして、言葉を返す者は誰ひとりいなかった。
なにか、不気味な雰囲気が漂い始めた。
数キロ走って、道が大きく左にカーブする場所にさしかかった。
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