「いいかい、今回の交渉は本来ありえないのだよ」
「そうですよね。あの島々はもともと、我が国の領土なのですから」
「わかっているならいい。とにかく、本来存在しない問題をふっかけてきて何か別の要求があるにちがいない。あの国ならそれぐらい常套手段だ」
「ですから、とにかく相手になめられないようにってことですね」
「平たく言えばそうだな。対等の関係で奴らの本当の要求をさせないようにするのが第一だ」
「特使、そろそろ入ってくるようですよ」
「では、先ほどのように頼むぞ」
「はい」

「・・・おまたせしましたね、遣唐使のみなさん」


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「はい、これはつるはしです」
「・・・なんだよ、これ」
「あ、休憩はあちらにテントを設けてあります・・・でも、休憩する必要がないかもしれませんね」
「休憩も何も、なんだよ、この仕事は」
「あなたじゃなきゃできない、非常に重要な仕事ですよ」
「だからと言ってだ、いきなり北海道の山の中に連れて来られて、レアアースを探せって、どういう神経してるんだよ!」

「ルビーを4時間で見つけたあなたなら大丈夫です。日本の未来がかかってるんですからお願いしますよ、海老蔵さん!」


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「やっと届いたの。あなたのボーナスをあてにして買ったのよ」
 専業主婦らしいコメントを残しながら、妻は配達してきた電気店の店員に指図し、自分の席に一番近い場所に電子レンジを備え付けさせた。
「新製品なのよ。”とにかくおまかせ”モードつきなの」
 妻の言いたいことが、最初はよくわからなかったが、よく嚙み砕いて聞いてみると、こういう事らしい。
 
 料理本などのレシピが載っているページ。
 レストランとかの広告のページ。
 とにかく、自分が食べたい料理を作りたくなったら、それらの形がわかる写真と、必要な材料を用意すればいいらしい。
 写真をスキャンして、あとは材料をレンジの中に入れるだけ。
 すると”自動調理機能”が働いて、あとは料理が完成するのを待つだけらしい。
 なるほど、我が妻らしい商品の選択だ。
 まあいい、久しく妻の手が加わった料理など食していないのだ・・・これをきっかけに、ある程度の家事をしてくれるようになるならば、安い買い物かもしれない。

「あなた、早速料理を作ってみようと思うんだけど」
 妻は財布の中から1万円札を取り出し、私の眼前に見せつけた。
「今月見た雑誌にミートコロッケとチェリーパイのレシピがあったのよ。どの雑誌かわかんないけど探してきてちょうだい・・・あ、見つけたらそれに書いてある材料、スーパーで買ってきてよね」


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 ついにお前もか。
 気をつけろよ、あの人は”魔術師”だから。
 分厚い提案書を数冊持って会議室に行こうとする僕に、先輩たちがいつになく真顔で話しかけてきた。

 ”魔術師”は確かにいた。
 まるで読心術でもできるかのように、こちらの手を読み切る。
 挙げ句の果てに、同席した社長や専務に口八丁手八丁で操りの魔法をかけ、こちらで用意した戦略プロジェクトの大半は骨抜きにされてしまった。
 これが”魔術師”と呼ばれる男の凄さか・・・総務部長と言う肩書きを背負って、その男は会議室の隅っこで、勝ち誇った表情をしていた。

 プレゼンは惨敗。
 その日の夕方、僕は”魔術師”に呼び出された。
「ベトナムに合弁企業がある。誰か派遣したいんだよ」
 君しかいないと思っている。もちろん、受けてくれるな・・・僕の肩を叩き、総務部長はニヤリと笑った。

 そうか。これも魔術なんだ。
 ”瞬間異動”の魔術を掛けられた僕は、何か操られているかのように、無言で頷くのだった。


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 もうばっちりだ。徹夜続きでも、頭の回転は大丈夫。
 むしろ、通常の3倍のスピードで回転しているといっても、過言じゃない。
 
 何のためにここまで勉強してきたのか。
 そうとも、『日本連邦政府』官僚採用試験に合格するためだ。
 もちろん、数々の難問が待ち構えている。
 でも、それを乗り越えるだけの勉学に励んできた自分には、自信がある。

“節分に食べる豆の数はいくつか”
“夜に爪を切ったら何に会えなくなるのか”
“雪が解けたら何になるのか”
 これらの難問が詰まった模試ですら、すべて完璧に答えてきた自分だ。
 今配られている問題用紙を見ても、解けない気がしなかった。

 ん?
 な、なんだ、この問題!
 今までの傾向と対策に、載っていなかった問題じゃないか!
 でも待てよ・・・こんな問題ぐらい・・・ウムム・・・

“カレーライスに福神漬が添えられているのはなぜか”

 だめだ・・・
 わからない・・・
 わからない・・・!!


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