プシュー。ガタガタ。
 日焼けマシンのようなカプセルが、水蒸気を発しながら、ゆっくりと開いていく。
「確かに、あなたの曾祖父になられるんでしたっけ」
「曾祖父? いや、もう一つ上のじいさんだったような気がしますが」
「我々子孫も、お恥ずかしい話ですが、このような先祖がですね、不治の病を抱えて冬眠しているなんて、つい最近知ったものですから」
「まあ、曾祖父でも、もっと上の方でも結構です。私は医師としてですね、不治の病を治癒しなくてならないんですよ」
「ああ、そうでした。しかし、不治の病がなんだったのか、皆目見当がつきません」
「とりあえず、手当たり次第切ってみたらどうです、先生」
「それができたら苦労しませんよ。切るって言われましても、やっぱりご親族の許可をいただかないとねぇ」
「じゃあ、とりあえず、腹部でどうでしょう。どうせ、末期ガンとかじゃないの?」
「末期ガンだったら肺じゃないの? 肺を切ってみたらいいよ」
「おそれいりますが、何か手紙とかですね、どこが悪いから治してくれって言うメッセージ、残ってないですか?」
「あ、これかも。もしかして」
「あ、診断書があるよ。きっとこれだ。先生、これでいいようにやってくださいよ」
「あるなら早く見せてくださいよ、どれどれ」
「どうです、先生?」
「…」
「ん? なんです? 先生?」
「これは、100年経っても、これから先も、治せそうにないですよ」
「あらら、そんなに悪い病なんですか」
「せっかく100年我慢してたのにねぇ、このじいさん、また冬眠だね」
「ちなみに先生、いったい何の病気なんでしょう?」

「健忘症です。これはいつまで待っても、治せませんよ」