まず法人税収の性質を確認します。図はクリックすると拡大します。
法人税収と民間平均給与は比例の関係にあります。ということは、以前の記事で述べているように、給与はGDPひいては政府支出に左右されますから、法人税収も同じだと言えます。
つまり、法人税収を増やしたければ、政府支出を増やせ、ということですね。法人税収が少ないから、予算を節約だ、というのは、余計に法人税収を減らす結果になります。
後者の論理でいけば
実行:法人税収が減った。予算の縮小だ。
結果:予算の縮小により、法人税収の低下。
実行:法人税収が減った。予算の縮小だ。
・・・ということになります。
さて、次に推移を見て行きます。
色は細かいですが、なんてことはありません。GDPや政府支出(予算)に連動して減っているだけです。横棒の赤いラインがそのときの法人税率です。
今回掘り下げたのは法人税率を下げたら法人税収は上がるのか、です。
2番目のグラフを見て、法人税率が下がったら、結局「法人税収は上がるの?下がるの?」と見る人がいるような気がしますので、一応グラフにしておくと次のようになります。
法人税率が高いほど、法人税収は上がってますねー。
ただし、法人税率は一定の期間同じであることが多いため、それにデータが引っ張られて右肩上がりの直線になっているんじゃないか、という意見もあるかもしれません。
なので、法人税率が変化した年のみを抜き出すとこうなります。
法人税率は変化した前後の年で差異があるため、前年比に変換しました。やっぱり右肩上がりでした。
と、ここまで見てくると、法人税率を上げると法人税収が上がる、と思うかもしれませんが、実は3,4番目のグラフは見てみただけであって、あまり関係ありません。
あくまで1番目のグラフが本質なわけであって、政府支出が増えれば法人税収は増える、です。法人税率を多少いじったところで、それは変わりありません。
政府支出が減ったタイミングで税率を下げれば、あたかも法人税率を下げたから法人税収が減ったかのように見えます。
擁護するわけじゃないですが、勘違いされませんよう。
さて、法人税率×法人税収の関係から、政府支出の影響を抜いてやってもいいんですが、4番目のグラフの点(データ)が少ない上に抽出できなそうな、、、あ、ちょっとエクセルやってみたら潰れましたね^^;
ということでミクロ的に、具体的に考えてみます。
「法人税を下げると会社はお金を使うのか」
タイトルのとおりです。逆を考えればわかりやすいでしょうか。つまり、法人税を上げると会社はお金を使うのか。
普通は次のように、法人税が上がると、会社に残るお金は減っていきます。
まぁ、当たり前です。税率が上がると、それだけ引かれるのですから。ですから、税率が上がるならば、いくらか使った方がいい、となります。
昔から、お金を残すくらいならどうせ引かれてなくなってしまうから使ってしまえ、など聞いたことはありませんか?
車とか土地、建物とか、換金可能な資産を買っておくのは手軽ですよね。そこに株とか金塊とかもあるのかと思います。
では次に、ほぼお金を使った状態を見てみます。
何もしなければ余るお金の9割を使った場合の図です。そうすると残る利益は、税率がいくらであろうとほとんど変わりません。残るお金が少ないんですから、法人税が上がろうが下がろうがあまり関係ないわけです。
しかも、こういうお金をきっちり使ってくれる会社は、お金を貯め込んでいて「法人税下げろ、払いたくない!」と言っている会社よりありがたいですね。使ってくれるとよその会社の売上になり、そのお金は社会を巡っていきます。
まぁ、使わなくてももともとぎりぎりですよ!という会社も多いとは思いますが。。しかし、このような会社は充分社会に貢献していると言えます。
そしてそんな(わざわざ決算直前に放出している)会社は、大きな金額を必要とする場合は、お金を借りずに、数年かけて貯金していってもいいですね。また、余裕があることは付き合いのある銀行さんもわかると思うので、お金もぽんと貸してもらえる可能性も高いと言えます。
お金を残している会社は、最初の表のように、法人税が上がると利益がどんどん減っていくので「取られるくらいならいくらかは使ってしまおう」とお金を使います。つまり、法人税が上がると会社はお金を使います。
では、どのくらい使うのか。2番目の表のように、使い切れば法人税が少ないのは明白です。しかしそれでは会社に貯金ができていかなくて不安だ。毎年一定額は残しておきたい、というのが心理ではないでしょうか。
というわけで逆算して残る金額を揃えました。
表を見てもらえればわかるとおり、同じ金額が会社に残るようにするためには、法人税率が下がるほど、会社がお金を使ってしまえばいい、ということになります。
しかし、現実にそうなっているでしょうか?
最初の表1をみてもらえばわかるとおり、法人税率が減っていくなら、会社に残るお金はどんどん増えていくんですから、慌てて使う動機は減っていきます。お金を残しても取られないですから、貯金する動機は増えていきますね。
そりゃ、ひたすら会社にお金を貯め込み、社員に分配せず、自分たち役員、株主に利益譲与したい余裕のある会社からすれば「もっと法人税を下げろ!」となりますよね>大企業の商工会のようなグループ、経団連からすれば。
しかしそれはお金は使われてこそ誰かの売上になり景気をよくするわけです。溜め込まれては再分配されず、富の偏在、ということになります。企業の残ったお金は役員、株主に利益譲与されますから、まさに格差の温床です。
というわけで、溜め込まれないように、しかもそもそも黒字で余裕のある企業からお金をいただくために、法人税を強化した方が良いではないか、と普通に考えられます。
法人税が増税されたとしても、利益から割合で引かれて、必ず利益は手元に残りますから、利益がなくなるわけではありません。世の中7割の企業が赤字でかつかつなのに、何を文句言っているのでしょうか?食うに困る、生活に困っているわけではない人たちです。
それに対して、日本の中小企業の7割は赤字です。お金を使い切っている意味では良いですが、経営的にはよくないでしょう。
問題なのは、お金を余らせている企業、です。法人税が関係するのはこの企業だけです。余裕はあるが、お金は払いたくない、という本音が透けて見えてきませんでしょうか?それを通り越して「もっと法人税を下げろ」と言うわけです。
ノブレスオブリージュ、貴族には民衆を養う責任がある、というような意味ですが、見えてきますでしょうか?それよりも大名が年貢を取り、しかし税金を払わないように試行錯誤している様が見えるような気がしないでもないような。
というわけで
「法人税を上げると会社はお金を使うのか?」
YES
表3からわかります。お金を使った方が、同じお金を残すにはお得です。
「法人税を下げると会社はお金を使うのか?」
NO
表1からわかります。別に使う動機がありません。どんどん貯金しやすくなります。すなわち格差の温床になります。格差の縮小、再分配を考えるなら法人税の強化が道筋になります。
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