日本経済新聞ではこんなこと言ってますが
4月の実質賃金0.1%増、2年ぶり上昇 賃上げが寄与
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF02H04_S5A600C1MM0000/
さてはて。
リンク先のグラフをそのまま使うのもなんですから、というかごちゃごちゃしているので自分で作ってみました。
実質賃金の推移 2006-2015年4月 前年同月比
似たような感じになりました。当たり前ですが。消費税増税8%は2014年4月ですから、右の一番下のところですね。こうしてみると、底から確かに上がっているように確かに見えます。一番右端の最新が例の+0.1%ですね。
まだごちゃごちゃしていますから、前年同月で積み重ねできるように、各年4月だけ抜き出してみます。
実質賃金の推移 2006-2015年 前年同月比 各年4月30日
各年4月だから9点しかありません。どん底からの急浮上が見られますね!でも累積も見ます。
実質賃金の推移 2006-2015年 前年同月比 累計 各年4月30日
はい。まったく回復していませんでした。消費税増税8%でがつんと減って、その底から+0.1%だけ回復した、というお話です。
これは大失政かと思いますし、これを印象真逆に報道する日本経済新聞もどうかと思います。
前年同月比や前年比のグラフは、こういった傷跡を隠すのにもってこいです。基準年が毎年ずれますから、1年経ったら消えますから。だから累積で見るのも大事になります。
この状態で「景気は回復している!先行きは明るい!」なんて言われたり、それを真に受けて(だまされて)支持する人が多いのでは、私は先行きが不安です。私がすべて嘘を言ってるならそれはそれでとても幸いです。
本日の話は以上ですが、実質賃金ってなんなの?というのを少し書いていきたいと思います。
実質賃金とは
傾向を見たいので長期間のデータ。長期の場合は民間平均給与くらいしか長いのがないので、それを使います。あと各月公表の物価、消費者物価指数CPIで。
民間平均給与とコアコアCPIの推移 累計 1971-2013
先月の記事同様のグラフですが、物価より給与の上昇が高いのが見て取れますね。両軸にすると以下に一致しているかわかります。
では、実質賃金を上記のグラフから作ります。賃金÷物価ですが、イメージとしては2つのグラフの高さの差、つまりは引き算、給与-物価と考えてもらって大丈夫です。実際似たようなグラフになります。
ほとんど同じですよね。しかし見てのとおり、両軸でやった場合ですが。軸を統一すると以下のように。
両軸のスケールが違い過ぎて片方がつぶれてしまう感じです。しかし、スケール調整さえすれば長期間でちゃんと一致していたことから、ヨコ軸に割り算、タテ軸に引き算の前年同月比でみれば、両者がほとんど同じものであることが確認できます。
97%の高すぎる相関が出ました。つまり「どっち使ってもあんま変わんないよ!」ってことですね。ですからやはり感覚としては給与-物価と考えていただいても結構のようです。
そして普通に、割り算、通常の実質賃金だけにしたのが以下になります。
実質賃金の推移 累計 1971-2013 各年12月31日
見てみると、実質賃金は1970年代前半に急速に良くなり、その後じりじりバブル崩壊1990年までよくなります。その後、停滞。
1997年の消費税5%にガクンと落ち込み、、その後2%くらい落ちて安定してしまった感じですね。
もちろん消費税のせいだけではありません。それ以上に政府が支出を増やせばよかったんですが、それも同様に減ったためです。
どういうことかというと、次のとおりです。
前回の記事で物価と給与が連動している旨は書きました。
なので、物価と給与は同じものだということで次をどうぞ。
政府支出と民間平均給与の関係 1970-2012年
見たまんま、同じ形ですね。
政府が支出を増やせば民間平均給与が増えるわけです。そしてひとつ上のグラフからも、物価も上がるけれども、給料はそれ以上に増える、ってことです。
では政府の支出は増えているのかというと
政府支出と民間平均給与の推移 累計 1970-2012年
累計でこんな感じです。GDPのグラフ見たことのある人は「あ、似てる」と思ったかもですね。
消費税増税5%の1997年までは伸びていましたが、以後は停滞しています。この停滞、前年比で見るとよくわかります。
政府支出と民間平均給与の推移 前年比 1970-2012年
こういうことです。停滞じゃなくて、激減です。
高度経済成長期と言われる1970年代は、政府も支出を前年より10%以上多く毎年増やし続けていました。そしてだんだんとあまり増やさなくなっていき。1990年にバブルが崩壊した!という時期にはまた支出を増やして支えてくれていました。
これまで見てきたとおり、政府が支出を増やせば、その支出の注文先である民間企業が儲けますから、バブル崩壊で売上が下がったところを、文字通り政府が注文を入れてくれて助かっていたわけです。
しかし、1997年に消費税増税5%にしたと同時に、初めて政府支出を、つまりは予算を前年度よりマイナスしました。民間から消費税増税でしぼり取る上に、注文を減らした、ということです。
結果は給与-物価的な、実質賃金をみてのとおりです。
そして今回も、落ちて安定する気がぷんぷんします。予算も減らしてますし。
私達の給与が減ったり、景気が悪化したのは政府が支出を減らしたからで、そうなったのは無駄の削減、バラマキ、公共事業は悪、国の借金が問題でお金がない!とはやし立てた人たちがいたからです。
そうした、政府が予算を減らした理由の大元が「国の借金」です。例の嘘ですね。以前にも書きました。
国の借金というウソ
http://ameblo.jp/tasan-ame/entry-12024431597.html
これも先日のグラフですが、別に国にお金はあるわけですね。2年で200兆円、刷って増えていますね。
日本円は、当たり前ですが日本政府が刷っているわけです。2012年から猛烈に刷っているわけであり
そうそう、消費税増税があった2014年の消費税の税収は前年より5兆円多いみたいですよ。国が刷ってるお金1か月分で済みますね。
ただ、刷ったお金を政府支出として国民に使うのではなく、それで国債を買ったり(金融緩和。しかし現在デフレで流動性の罠で効果なし)、ETF(株)を買ったりしているわけですが。
国民全員に手間かけさせる必要ありましたか?増税する必要ありましたか?
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今回使ったデータは以下のとおりです。
平成22年基準 消費者物価指数 全国 平成27年(2015年)4月分 (2015年5月29日公表)
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm
民間給与実態統計調査結果
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm
毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):結果の概要
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1a.html
国民経済計算(GDP統計)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
時系列統計データ検索サイト マネタリーベースはここから探す
http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html#
PS.分量が多いので、もう少し減らすように善処します。