〇世良修蔵 『戊辰戦争』(佐々木克)
中公新書です。昭和52年(1977)初版ですから、43年前の、もう古典といっていいでしょう。
著者佐々木克(1940年生まれ)は、当時37歳の若手研究家で、かなりイキった主観表現が目立ちます。
〇自分が知らないから、勝手に格下扱い
奥羽鎮撫総督参謀が、品川弥次郎・黒田了介から、世良修蔵・大山格之助に変更されたことについて、
品川(弥二郎)と黒田(了介)に比較すれば、大山(格之助)・世良(修蔵)は、一クラス下の人物であるのは、だれの目にも明らかである。
(p72)
と書きます。
はあー?
「だれの目」って、マジ「だれの目」なのでしょうか?
30代の佐々木克さんの主観でしょ。
明治政府で品川・黒田が栄職を歴任したから、佐々木さんがそう思っているだけで、幕末時は違いますよ。
幕末時、西郷・大久保と同格で、経験豊富で志士歴古参の大山格之助(綱良)を、若輩の黒田より格下とする認識は、いかがなものか。
また、世良は、品川より格下なのですか?
おそらく30代の佐々木さんは、品川のことは少しは知っていても、世良のことなど、何も知らなかったと断言できます。
自分が知らないからといって、勝手に格下扱いするのは、乱暴ではないでしょうか。
著者は、その後、結構な大家になったらしいですが、 この著作は、30代で、あこがれの「中公新書」に抜擢されて、相当イキって書いた気がします。
この昭和52年は、NMK大河で、大村益次郎を主人公にした「花神」が放映された年なので、「長州」大河が気にくわない中公編集部(当時『歴史と人物』という月刊誌を発売していた)が、東北(秋田)出身の気鋭の若手研究家に、書かせたというところでしょうか。
薩長史観の明治維新がNHK大河にとりあげられると、必ずこういう反作用が起こるのです。