翌日、太郎は牛乳パックを持って行き図工の時間を迎える。先生からのお題は牛乳パックを加工して乗り物を作ることだ。皆、思い思いに作り始める。太郎は何を作るのだろうか?
話を少し遡ってみる。太郎はこの頃、なぜ自分がイジメられるのか考え始めた。自分に何かしら原因があることも実感しつつある。答えを求め父に相談してみると父は「自分を信じて自信を持って登校しなさい」と言う。太郎はボンヤリと納得したが未だ要領を得なかった。
この頃、太郎は授業が終わるとよく図書室に行き本を読んだ。図書室は彼にとって学校で唯一落ち着く場所だ。ある日、昔のサムライのエピソードを読んで太郎はヒントを得た。
昔、昔、とある街を一人のサムライが歩いていた。その時、突然の雨で周りの人達は慌てて家屋の屋根の下に入り雨が止むのを待ったがサムライは雨の中を悠然と歩いている。誰かが「お侍さん、雨宿りしないんですか?」と訊ねるとサムライは一言「最初から濡れる覚悟だから何ともない事だ」と。
太郎は次の日からサムライの如く胸を張り堂々と学校に通った。今日もイジメられると思うからダメなんだ。最初からイジメられる覚悟を持てば楽だ。そう思うと変に楽しくなって来た。太郎は笑いながら教室に入り、さあ、煮るなり焼くなり勝手にしやがれ!と、ドMの悟りを開く。その日は誰もイジメなかった。いや、皆、引いていた。
話を戻そう。その日、図工の時間で太郎が作ったのは消防車だった。そのディテールは他を圧倒していた。出来た消防車に満足してるとそれを横から取り持ち上げる男子が、ガキ大将の高木だ。太郎は踏みつけられて破壊されると思ったが次の瞬間「お前、ブルドーザー作れるか?」と高木が言った。「え? う、うん」太郎は応えた。その日から自宅に帰るとおやつもそこそこに部屋で太郎はブルドーザーの製作に入った。太郎には密かな特技がある。幼少期は舶来品の積み木で遊び想像力を養い小学校からは粘土細工や紙細工を嗜み始める。彼は外で友達と野球をする事には興味が無く。部屋でじっくり物作りをするのが好きだったが時々、女の子達とのママゴトには付き合った。
数日後、出来上がったブルドーザーを学校に持って行き高木に渡した。模型店の息子の高木は手に取りじっくり観察した後、一言「太郎、お前を今日から仲間に入れてやる」と言った。太郎はまだ理解が出来ずしばらく黙ってたが、じんじわと実感が湧いてくると何故か泣き始めた。参謀格の谷も「宜しくな!」と声をかけた。初めて自分が認められた感動を噛み締めながら川崎の溝の口の街が好きになりつつある自分の心境の変化にほくそ笑んだ。









