老女Aの手記

Ⅰ-22

 

「母」のどこがどう変なのだろう。

お金も一切、自由にさせてもらえなかったので、【①】にいる弟が成人してから告白したのによると、一度、お金を抜き取ったが、それが何をどのくらい買える価値があるか、分からず、キャンデー全部買ってみたら、20本くらい来て、仕方なく、暑い日中、袋を抱えてぽたぽたこぼしながら歩いていたら母にみつかり、すごく怒られたと言っていた。

【①】は地名らしいが、不明。

普通、怒られるさ。

だが、怒る前に、「母」は「20本」に驚いて、「弟」の知能を疑うべきだろう。

「それが何をどのくらい買える価値があるか、分からず」というのは変だ。ただし、このときの彼が何歳なのか、分からない。足し算もできないほど幼いなら、小遣いがもらえないのは、決して変ではない。彼は「お金」に記された数字が読めなかったのか。〈食べたいだけ買って釣銭をもらう〉という常識さえ弁えていなかったのか。お店の人に、たとえば〈この「お金」で何本買えますか〉と聞いてみなかったのか。友人を頼ろうとは思わなかったのか。友人がいなかったのか。姉に相談しなかったのだろうが、なぜ? 

疑問が次々に湧く。

「母」の子らに欠けていたのは、金銭感覚以前の普通の会話の能力だろう。そうしたことについて、「成人して」もA子は気づいていない。大人になっても、彼女の会話の能力は劣っていた。そのくせ、気障な話し方をするのだった。

(Ⅰ-22終)