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邦題が、その確信をついていませんが英語では「Remember Who You Are」となっており、副題は「Life Stories That Inspire the Heart and Mind」と納得の題名ですな。
この邦題を推薦した、出版企業の経営者なんぞは読むといいよ。
では書評です。
結論から言おう、本の薄さとそれに反比例するような価格にAmazonで取り寄せた時の”がっかり感”を払拭するにあまりある内容だこれは。
本書では、ハーバードビジネススクールにおける所謂経営に関する講義やケースについては、一切取り扱っていない。代わりにかの大学院に伝統として、期末におこなわれる教授からの「はなむけの言葉(講義)」をまとめた内容となっている。
「はなむけの言葉」は、教授たちが如何に人生を送るべきかを示唆する話を夫々の成功と失敗の経験に基いた物語として語られている。
そういった背景もあり、本文中にも記載があるが、これは何もHBSを卒業するような優秀な人材向けの書籍というわけではない。特に人生における優良なる選択肢が多い対象が読めば尚良い事は確かであるが、人生を考える上でのヒントとしては一般的な(実際そうだとは思ってないが)選択肢しかない私のような対象でも充分な内容である。
私自身の心に響いた教授の話で、特に興味深い話は、トーマス・J・デロング(組織行動ユニット)教授【モルガン・スタンレー証券元最高開発責任者で人材管理、人的資源管理の研究をされているらしい。】がラシュモア山に旅行に行った際に娘さんからされた質問をもとに構成された話である。
娘さんから「誰かの人生を変えたことがあるか」という質問を受け、その時に答える事が出来なかった教授は、その答えについて考えその問答を軸にその後の人生を送るようになる。
簡単に言えば、個人は目標や課題、他人からの評価を気にする事を主軸にし、自分自身が他人にどのような影響を与えているのかを考えてはいない。しかしながら、他者に対しポジティブなモチベーションとチャンスを与える事が人生の目的であり、それはお金や名声、履歴書を磨く事よりも大切な事であると説いているのだ。
その他の教授の話も、人生の送り方に関する示唆に富んでおり人生の折に触れて目を通したくなる本である。