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にょほほー。
書評書きまんがな。
結論から言おう、仕事後のビールを流し込む感覚が始めから最後まで味わえる壮大な物語だこれは。
かのピエール・ド・フェルマーが1637年に発見し1665年に死して以降1997年にアンドリュー・ワイルズに証明されるまで解明されなかった主張に関する物語である。
しかも、フェルマーはその命題の脇に「答えはしってるけど、余白がすくないから書かへんわー」と残した性格の悪い人物であった。
この物語は基礎数学の歴史に始まり、その過程でフェルマー自身の生い立ち、フェルマーの定理が生まれた背景そしてその証明がワイルズによってなされるまで証明に利用された予測と証明の全てを紹介している。
始めの部分については、補遺により巻末で詳細な説明がなされているが後の方は難しい為か省かれているものの物語としては理解する事が出来るのでさほど読者を選ぶものではないので、数学が好きな方にはお勧めしたい。
個人的に、非常に驚いた箇所があったので紹介したい。
論理学者バートランド・ラッセルの発見した数学上の矛盾である。それは、数学に基本公理を持ち込まないと数学上の無矛盾は証明されないというクルト・ゲーデルの第一・二不完全性定理に結びつくという箇所である。
最終的にゲーデルは、決定不可能な命題が存在する事を示しているのだが、それが非常に気味が悪い命題であった。
その文章化された命題は以下の如くである。
命題:この命題は証明できない
→もしもこの命題が偽だとすると、この命題は証明できることになる。しかしそれはこの命題(自分自身を証明できないと述べている)に矛盾する。従って、矛盾を避ける為にはこの命題は真でなければならない。
しかし、この命題(それは真である)がそう主張している。
つまり真であるが証明できない主張が数学には存在するのである。
いずれにせよ、この数学上の壮大な物語を読み終え、我々が普段接するビジネス上の可能性というものにおいても全て仮説の上に成り立ち、その多くが予測不可能な事象である事を改めて身に染みた。
つまりは、いくら理論的に思考したところで100%のビジネスなど到底あり得ない訳で、あくまで100%を「目指して」行動し試行錯誤する必要があるのである。
そこには、行動の原資(モチベーション)が必要であり、この根気のいる作業を支えるのが理念なのだと思われる。
最後にこの作者サイモン・シンはケンブリッジ大学で素粒子物理学博士号を取得していながら、BBCに転職し本書でライターとしてデビューした凄腕である。
賛美の意味を込めてTwitterでサイモン・シンをフォローさせて頂いた。
ドクドク