”その人だけが持っている美を観る”「師弟一体の努力により、了佐は立派な医者になった。 藤樹は言う。 「彼、甚(はなは)だ愚昧(ぐまい)なりといえども、その勉励(べんれい)の力は甚だ奇なり」 「随人観美(ずいじんかんび)」という言葉がある。 人にしたがって美を観る。 その人だけが持っている美を観ろ、の意である。 人を育てる要諦であろう。 藤樹はその最たる人であった」