「治山治水」………… 山を守れ!!

 

 前回のブログでは、………… 収益性の低さもあって農業従事者が激減し、農地の荒廃が進行し食糧自給率も下がって、食料の安全保障が崩れてしまっていること、この回復のためには、大規模農業が困難な中山間地の多いわが国においては「家族経営」の農家でも農業に従事しつつ生計を立てることのできる状況を作り出す政策が必要であると述べてきた。

 百姓では食えないから都市に出てサラリーマンとなって農村には回帰せず、大都市に人口が集中して農村の過疎化が急激に進行していく。人口の偏在は災害の増加、少子化、産業構造の変化など様々な矛盾・困難を産み出している。

 繰り返しになるが、この問題解決のためには農業の振興、農業従事者の増加、農村の復興以外にはない。

 

 今回は、林業について…………。

 わが国の林業は、農業以上に危機的な状況にある。私の住む地区の住民の中でも山仕事で山に入る者は私以外にはいない。その私とて、椎茸の原木伐採のために秋から冬にかけて里山に入る程度。加えて、自宅そばの林間の椎茸のホダ場(植菌した原木を設置している場所)に晩秋から春にかけて週に1回程度収穫に足を運ぶ位なものである。

 

 敗戦後になって炭焼き等をしなくなり里山には檜や杉を競って植林した。これが育つと建築材として高額で売れて子孫に財を残せるはずであった。ところが、高度成長期に入ると重化学工業化が進展し、重化学工業製品を輸出して、海外から安価に木材や食料を輸入するようになり、山林の価値が無惨にも急落した。

 若者は生活のために労働力を必要とする都市に流れ、農山村に残った者達も価値のなくなった山林に入って下刈りや干ばつ・枝打ちなどの手入れをする者もいなくなった。人の手が入らなくなった山林は木が密集してたくましくは育たず、台風や積雪で倒木し、保水力を失った山肌は大雨で削られて山崩れや土石流の原因となり無惨な状態となっている。谷川は荒れ、林道も倒木や流出で通行不可のところが増えた。イノシシや鹿のみならず熊なども出没し始め、ますます人が山に入ることはなくなった。

密集した檜や杉は倒木し、日の当たらない地面には灌木も下草も育たずに地面がむき出しとなり雨で洗われて岩石ゴロゴロの状態となって山は荒れ果てる。

 

 木を伐採して運び出し市場で取引されるまでの人件費・燃料費、運送費などの諸費用を差し引くと赤字になるような実態が林業衰退の根本的な問題である。植えてから売れるようになるのに50年はかかる。育てるのに植林、下刈り、枝打ち、間伐などの手間をかけて挙げ句の果てに赤字となるのでは、山を守る林業などに関わる人材がいなくなるのは当然である。

 

 高度重化学工業化、高度経済成長の潮流の中で農林業に目を向けてこなかったわが国政府の取り返しのつかない失策の結果である。対症療法的な責任逃れの補助金政策の結果である。「国土強靱化」はコンクリートと鉄だけで成し遂げられるものではない。国民の生命・生活の「安全保障」は軍備の充実だけで成し遂げられるものではないことを肝に銘じた政治の実行以外にないのである。今でさえ遅きに失していると言わざるを得ない。裏金作りなどにうつつを抜かしているときではない、ダンサーと戯れて呆(ホウ)けている時ではないのだ。

 

 とめどなく腹立ちが続くから、このへんで頭を冷やします。怒ってみても虚(ムナ)しいだけだものね。………… ごきげんよう。