「生き方・人間形成」などと言うほどの人間ではないが、69年生きてきて古稀を前にして、私は私なりの生き方をしてきたし、それを支えてくれた考え方がある。良かれ悪しかれ、私でしかない生き方であり考え方である。それは、どのようにして、誰から、誰の言動から影響されたものなのか、自己確認をしておきたいというのが、今回のブログの趣旨である。
第一は、まずは父母を軸とする家族の生き方や生活や言葉の影響を受けている。また生まれ直すことがあったら、やはりあの父母、家族の元に生まれてきたいと思う。次は、私が子どもの時に母が連れて行ってくれた浄土真宗の聞法の影響であろう。母は母なりの悩みや慰め、生き方の指針を親鸞の教えに求めていたのだと思う。その影響で、親鸞の思想の片鱗や理想とされる信仰者の姿などへの関心もあった。もう一人はシュバイツアーであった。有名なオルガン奏者でありながら、アフリカの貧困と病に苦しむ人々を助けんと一念発起して医師となり、アフリカに赴いて医療に従事した人物であるが、名誉や利益よりも他者の豆に生きようとする自己犠牲をいとわない生き方に感動し、私も医者になりたいと考えるようになった。医者の道に進むのを諦めた私が、次善の道として選んだのが哲学であった。そこには、親鸞の仏教思想やシュバイツアーの裏にあるイエス・キリストの愛(アガペー)などから影響を受けたのだと思う。
哲学科に入学してまず心を揺り動かされたのが、キェルケゴールであった。「私に本当に欠けているものは、、私は何をなすべきか、ということについて、私自身はっきりわかっていない(決心がつかないでいる)ことなのだ。つまり、私自身の使命が何であるかを理解することこそが問題なのだ。私にとって真理であるような真理を発見し、私がそのために生き、そして死ぬことを心から願うようなイデー(理念)を見出すことが必要なのだ。いわゆる客観的真理などを探し出してみたところで、それが何の役に立つだろう。」(『ギーレライエの手記』より)。この「実存宣言」とも言われる言葉に衝撃を受け、実存哲学を学ぼうと考えた。キェルケゴ-ルの『あれか・これか』、『不安の概念』、『死に至る病』などを読みかじって強い感動を受けたが、彼のキリスト教思想にはついて行ききれない、早く言えば私の理解力・思考力ではストンと腑に落ちきれない面があって、ヤスパースの実存哲学へと移っていった。ニーチェの思想にも部分的には強い衝撃を受け感動したが、これもまた、私には難解で少しかじった程度い終わった。ハイデッガーなどについては、『存在と時間』に挑戦しかけたが挫折に終わった。大学時代は結局卒論にはヤスパースを選び、彼が「愛しながらの戦い(闘い)」とも表現した「交わり」の概念について書いた。そういう展開から、M・ブーバーの「我と汝」・「対話」等も学んで影響を受けた。これらが、後に教師になったときの生徒との関係性のありかたに大きな影響を与えてくれたと思う。しかし、もう一面、幼き頃に影響を受けた親鸞の浄土真宗への関心が強まり、大谷大学に進むこととなった。そこでは西田幾多郎に師事しておられた西谷啓治氏のご指導を受けた。彼の『宗教とは何か』に最も大きな影響を頂き、金子大榮氏や曽我量深氏の真宗学もだが道元の禅、鈴木大拙氏の方に関心が強まった。但し、せいぜい私の思索であるので、私の哲学を生み出す研究者の道に進むには限界を感じ、私が影響を受け感動した素晴らしい思想家の考えや生き方を生徒に伝える高校教員の道へと入り込んで約40年強の教員生活が始まったのである。
長くなるのでここらで終わるが、高校教員になって以降は、齋藤喜博、東井義雄、大村はま、同和教育実践者としての福地幸造氏等の影響は彼らの実践の緊張感は胸を打たれ、背中を押して頂いた恩人と言える。不十分ながらも、微力ながらも大きく恥じることなく、働きがいを感じさせてもらいながら育てて頂いた。彼らとの出会いがなければ、多田のボンクラの呆けたデモしか教師で終わったと思う。その出会いの契機を与えてくれたのが、これまた、親鸞や道元や、孔子や釈迦やソクラテスであり、キェルケゴールやヤスパースであった。これが「縁」と言うものであろうか。さらにいえば、その裏には父母を含む家族の生き方や考え方、関わりと言ったものが基盤となっている。改めて人格形成の基盤として、「家族」・「親」といったものの重要性を痛感した。親であることの責任の重さ……。覚悟。もはや教壇に立つことはないが、ここらあたりの思いを、もっともと将来の親となる生徒たちに、保育者となる学生たちに伝えたいと言った気分になる。もっともっと胸揺さぶるような伝え方ができなかったものかと、今更ながら申し訳ないし、もったいなかったと悔やまれます。死ぬまで自分に恥じぬように生き、成長したい、と思う今日この頃です。まとまらないし雑だけれど、ここらあたりで終わります。
それではまた、ごきげんよう。