ホルンの出番です374 ホルスト/有馬純晴編「木星」 | 翡翠の千夜千曲

翡翠の千夜千曲

音楽を学びたい若者で困難や悩みを抱えている人、情報を求めている人のための資料集

Jupiter, The Bringer of Jollity - Horn Ensemble

The Planets Op.32: IV. Jupiter, the Bringer of Jollity - Gustav Holst 

Perfomers: Alexander Horn Ensemble Japan 

℗ 2004 Meister Music Co.,Ltd.

 

 

 

 何てことでしょう。私はホルストについて結構な数の記事を書いていたという思い込みによって、今になって実際には一つも書いていないことに気がつきました。恐らくは、他の人物を書いた時に、ホルストについても書いたことがあって、本人の記事と混同していたのかもしれません。だとしたら最初がこれでは申し訳ないので、せめて人物紹介だけはすることにします。

 人を育てることに長けているのは、必ずしも教師ばかりではありません。それは、時に年齢に関わりのない友人であるかも知れません。時には先達だったリ、意外に生徒や学生であったり、或は居酒屋の隣の席にいる人かもしれません。ホルストは、王立音楽院に入学し、基礎的な指導を受けた後念願だった、チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードから作曲を学ぶことが認められます。

 しかし、この頃ホルストはワーグナーに取りつかれ書くものがワーグナー色の強いものでしたから、その作品を見て、スタンフォードはワーグナー作品の一部を賞賛し若い頃には影響を受けていたものの、ホルストによる半ワグネリアンの作品には強く反対したのです。「それじゃ上手くいかないよ、君。それじゃ上手くいかない。」そう言います。ホルストは、その時に知るのです。本当の知識は勇気や気概であり、それを持っているのはあの友人たちではなかったかと…。だから、その後間もなく長年の友人となるレイフ・ヴォーン・ウィリアムズに出会うのです。

 グスターヴ・シオドア・ホルスト(Gustavus Theodore von Holst, 1874年9月21日 - 1934年5月25日)は、イングランドの作曲家で編曲家、教育者でした。最も知られる作品は管弦楽組曲「惑星」であり、他にも様々なジャンルに数多くの楽曲を遺しています。多くの影響を受けて成立した彼の特徴的な作曲スタイルといえますが、決定的な影響を与えたのはワーグナーとリヒャルト・シュトラウスの2人だったようです。更には20世紀初頭に起こったイングランドの民謡復興運動であり、そしてラヴェルらの台頭する同時代の作曲家たちで、それらによってホルストは独自の様式を発展させ洗練させていきます。
 ホルストの一家は音楽家一族で、彼が同じ音楽の道に進むことは幼少期から明らかでした。音楽家の父に幼いころから音楽を学び、10代のころからすでに作曲を試みていました。彼はピアニストになるつもりでいたようですが、練習のし過ぎで右腕の神経炎にかかり叶いませんでした。父は心配していましたが、彼は作曲家として身を立てることを志します。そこにスタンフォードが登場するわけです。

 しかし作曲だけでは食べていくことが出来ず、プロとしてトロンボーンを演奏し、後には教壇にも立ちましたが、同僚のレイフ・ヴォーン・ウィリアムズによれば名教師であったようです。教育活動としては、1907年から1924年まで音楽監督を務めたモーリー・カレッジで築き上げた強力な演奏の伝統、1905年から没する1934年まで教鞭を執ったセント・ポール女学校で開拓した女性のための音楽教育は実に価値のあるものでした。彼が創始したウィツァン音楽祭シリーズは、1916年から彼が没するまで続けられています。

 ホルストの作品は20世紀の始め頃にもよく取り上げられていましたが、第一次世界大戦直後に「惑星」が国際的な成功を収めて広く知られるようになりました。内気な人物であった彼は、穏やかに作曲と教職に打ち込めることを望んだみます。晩年にはその妥協を許さない個性的な作曲スタイルが禁欲的に過ぎると映るようになり、一時は高まった人気も衰えていきます。しかし、数多くの若い世代のイングランドの作曲家たちには多大な影響を与えています。

 ホルストの資料は膨大で、相当な分量になりますので、「惑星」のオーケストラ版の原曲を取り上げた時に詳しく触れたいと思います。

   ちなみに、10人で演奏していますからヴァイオリンなどの弦楽器パートもカヴァーしています。

 

※ 演奏会のご案内⑬ ダンシングフルートVol2

 

※ 演奏会のお知らせ⑭ 翡翠トリオピアノ三重奏の夕べ

 

 

 

ジュピター

アレキサンダー・ホルン・アンサンブル・ジャパン

【曲目】
1 R. ワーグナー:ジークフリートのラインへの旅*
神々のたそがれ』より(10重奏)
2 G. ホルスト:木星組曲『惑星』より(10重奏)
3 W.A. モーツァルト:序曲 フィガロの結婚より(8重奏)
4 K. ターナー:ダブリンの幽霊委嘱作品(8重奏)
5 E. ボザ:森にて(5重奏)
6-10 W. パーキンス:4本のホルンのための協奏曲

【演奏】
[アレキサンダー・ホルン・アンサンブル・ジャパン]
阿部雅人、有馬純晴、伊藤泰世、今井仁志、大東周、勝俣泰、、金子典樹、西條貴人、

竹村淳司、久永重明、和田博史
*安藤芳広(ティンパニ)

<レーベルによる紹介文>

アレキサンダー・ホルン・アンサンブル・ジャパンは1999年、東京のプロオーケストラでアレキサンダー社(独)のホルンを愛奏している10人のホルニストにより結成。2002年フィンランドのラハティで行われた「第34回国際ホルンシンポジウム」に日本を代表するホルンアンサンブルとして招待され、その演奏は高く評価された。本CDに収録のターナー作曲「ダブリンの幽霊」は、AHEJの委嘱で2001年11月の第2回演奏会で世界初演された曲。今回、13年振りにリマスターを施され、音質がさらに向上しました。
マイスター・ミュージック