アンリ・ヴュータン「ヴァイオリン協奏曲第5番」イ短調 | 翡翠の千夜千曲

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アンリ・ヴュータン作曲 「ヴァイオリン協奏曲第5番」イ短調

New Year Concert2011(2011/1/15)西尾市文化会館 指揮:田中瑞穂 演奏:アルテフィルハーモニー交響楽団  ヴァイオリン独奏:岡田祐美

 

 

 

 

 ヴァイオリン奏者でイザイやヴィエニャフスキを知らない人はまずいないと思われます。演奏家としての高い技術と説得力ある表現が様々な人物から伝えられています。多彩なヴィブラートを使い分けること、テンポ・ルバートの奏法が巧みであることなどが特色として伝えられています。その演奏は、多くの聴衆を惹き付け、ヴァイオリン音楽に大きな影響を与えたと言われています。

 パブロ・カザルスは「イザイほど正確な演奏ができるヴァイオリニストを聴いたことがない」、カール・フレッシュは「彼は『ヴァイオリンの騎士』、最後の大ヴィルトゥオーゾ、我々の芸術における忘れがたい記念碑として記憶に残り続けるだろう」と述べている。

 今日の主人公はヴュータンと言う人物ですが、フランコ・ベルギー楽派を祖とするヴァイオリニストの一人で、ヘンリク・ヴィエニャフスキと共にイザイを育てた人物でもあります。そうです、今日の主人公はアンリ・ヴュータンです。

 アンリ・フランソワ・ジョゼフ・ヴュータン(Henri François Joseph Vieuxtemps, 1820年2月17日 - 1881年6月6日)は、フランスで活躍したベルギー人のヴァイオリニストで作曲家です。

 織匠とヴァイオリン職工の家系に生まれて、音楽を愛好する家庭環境があり、アマチュアの父親と地元の音楽家からヴァイオリンの手ほどきを受け、6歳でピエール・ロードの作品を弾いて公開デビューを果たしています。
 ブリュッセルでシャルル・ド・ベリオに師事しますが、1829年にそのベリオに連れられてパリに向かい、この地でもロードの協奏曲を演奏して、デビューを大成功におさめます。しかい、その翌年には七月革命が勃発した上に、師のド・ベリオがイタリアに駆け落ちしてしまい、一人になった彼は単身ブリュッセルに戻り、自力でヴァイオリンの演奏技巧に磨きをかけべく練習に励みます。
 1833年のドイツ楽旅では、ルイ・シュポーアやシューマンとも出会うことができて親交を結び、シューマンからは「小さなパガニーニ」と称されます。それから10年間はヨーロッパ各地を演奏で歴訪しては、ベルリオーズやパガニーニのような大音楽家達も、その超絶技巧に圧倒されたのでした。
 しかし、自分が演奏する曲は自分で書きたいと思うようになります。作曲家への憧れから、1835年の冬からウィーン音楽院に留学してジーモン・ゼヒターに音楽理論と対位法を、翌1836年からはパリでアントニーン・レイハ(ライヒャ)に作曲を師事して、最初のヴァイオリン協奏曲を書きあげます。
 ヴァイオリン協奏曲 第1番は、1839年のサンクトペテルブルクでの世界初演と、その翌年のパリ初演で絶賛を浴びます。ベルリオーズから「ヴァイオリンと管弦楽のための格調高い交響曲」と評されたほどです。ヴュータンはパリを拠点に作曲家として活躍を始め、一方では演奏家としてピアニストのジギスモント・タールベルクを引き連れて、ヨーロッパ各地やアメリカでも活躍しました。中でもロシア帝国では聴衆の尊敬をかち得て、1846年から1851年まで、ニコライ1世の宮廷音楽家、帝室劇場の首席演奏家に任命されてペテルブルクに定住し、ペテルブルク音楽院ヴァイオリン科での指導によってその後の繁栄の基礎を作ったのです。
 1871年に帰国し、ブリュッセル音楽院の教授として、ウジェーヌ・イザイらの逸材を輩出しますが、脳卒中による麻痺にで左半身の自由を奪われたため、音楽院の講座をヘンリク・ヴィエニャフスキにゆだねて、パリに渡って治療に専念することにします。その後度か重なる発作に襲われ、1881年6月3日、外の空気を吸うために庭に出ようとアームチェアから立ち上がるやいなや、最後の発作に襲われ、6月6日61歳で亡くなりました。 

 ヴァイオリン協奏曲は7曲、2曲のチェロ協奏曲、その他多くのヴァイオリンやヴィオラなどの作品が残されています。

 ヴュータンのヴァイオリン協奏曲は完成されたものでは6曲あり、第7番も作曲されたが未完のまま遺作となってしまった。後に第7番は弟子のフバイが完成させた。ヴァイオリン協奏曲第5番は、元来1861年にブリュッセル音楽院の卒業試験の課題曲として作曲され、1878年にパリ音楽院の卒業試験の課題曲用に改訂された。課題曲という性格からきているのか、名人芸な高度な技巧を要求される作品で、古今のヴァイオリニストたちが好んで取り上げてきた。現在は第4番と共に親しまれている作品となっており、演奏されることが多い。副題の「ル・グレトリ」は、アダージョの部分でグレトリのオペラ「ルシール Lucile」中の旋律が用いられていることによる。

 4番と5番は特に優れていると思いますが、ヴュータンの素晴らしいところは独奏ヴァイオリンだけでなく他の楽器に対しての配慮も大きく、オーケストレーションが優れている所が素晴らしいと思います。

 ※ 資料 ベルギーのヴァイオリン Wikipedelia 等

 

※ 演奏会のご案内⑫

 

※ 演奏会のご案内⑬

 

 

    ヴェータン ヴァイオリン協奏曲第5番 IMSLP

 

ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲 第4番 第5番

イツァーク・パールマン

【曲目】
ヴュータン:
1. ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ短調 作品31
2. ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ短調 作品37
【演奏】
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)
ダニエル・バレンボイム(指揮)、パリ管弦楽団
【録音】
1976年、1977年