フルートの出番です295 ボウエン「2本のフルートのためのソナタ」 | 翡翠の千夜千曲

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Sonata for 2 Flutes by York Bowen, recorded LIVE in Flutes in Tuscany 2018

Sonata for 2 Flutes by York Bowen played in Flutes in Tuscany 2018 by course attendees Cameron Cullen and Martha-Lilly Dyer. Recorded LIVE.

 

 

 

 

 人の噂も七十五日などと言いますが、誠に世間はうつろいやすい。そのくせ、人に騙される人が後を絶たないのは、単に年老いて判断力が衰えるからだなどとも言います。誰かが噂をすると真偽を確かめもせず、流言飛語が巷を闊歩するし、それを利用したサギが横行する。ある俳優や歌手やタレントが、ちょっとミスをすれば街を歩けないほどに騒ぎ立て、昨日まで神様扱いされていた人物が息もできないほどに痛めつけられる。それが最も正当な理由で、確かに全責任を負わなければならないのだとすれば仕様がないかもしれないが、余りにも無造作な人心と言うものは憂慮すべきでありましょう。

 音楽の評価についても様々ですが、12音の音楽がウイーンで最初になった時や、ストラヴィンスキーの「春の祭典」が初演された時も、怒号が飛び交い客は席から飛び出したり果ては喧嘩するまでに至った。

 かと思えば、昨日までほめそやされていた作品が、新しい技法に包まれた作品が登場するやボロ屑のように捨てられる。モディリアニの輪郭のはっきりとした絵に卵型の顔をした女は時折目が閉じていたリ灰色に塗りつぶされている。飲酒と薬物の依存は、彼の精神を追い詰め、若くして亡くなりますが、ポーランド人画商のレオポルド・ズボロフスキーは画財を提供する代わりに絵を安く買いたたき相当な利益を得ています。

 ヨーク・ボウエンもまた、大地次世界大戦頃までは評判の高いピアニストで作曲家でしたが、以前の記事のように、イギリス作曲界にも新しい風が吹き始めるとその作品は顧みられなくなりました。時代が下した評価に異存があるわけではありません。

 物を創る人は伝統的な手法を守りながら、基本を忠実に守ることで製品の価値や品質の高さを守ることができることを考えると、安易に新しいものばかりを求めてもすぐ飽きられてしまうようなものに夢中になる輩の評価などに簡単に同調するのは控えたいと思います。

 最近ボウエンの作品が見直されていることは、良い傾向だた私は思っています。この「2つのフルートのためのソナタ」も、魅力的な作品で決して大曲でも華美でもありませんが、暖かなそして流麗、躍動感を併せ持った良い作品だと思います。

 

※ 以前の記事

○ フルートの出番です68 ヨーク・ボーエン「フルートソナタ」

○ ホルンの出番です143 ヨーク・ボーエン「ホルンソナタ」

○ ホルンの出番です245 ヨーク・ボーエン「ホルンと弦楽とティンパニのための協奏曲」

 

※ 演奏会のご案内⑪

 

※ 演奏会のご案内⑫

 

ボウェン、エドウィン・ヨーク/2本のフルートのためのソナタ

Bowen, Edwin York SONATA FOR TWO FLUTES

<解説>

 E.Y.ボーウェンは英国の近代作曲家で、ピアニストとしても、母校のロイヤル・アカデミーの教授としても活躍しました。当時の名演奏家、D.ブレイン (Hr) 、A.ドルメッチ (Rec) ほかの友人達のために多くの作品を書き上げました。この未出版だった 『二重奏ソナタ』 も同様に、晩年の1958年にW.スミスとL.ソロマン両氏により演奏され、1997年に Emerson社から初めて出版されました。第1楽章の流麗な旋律、第2楽章の英国田園風な叙情詩、第3楽章の躍動感溢れるリズムが魅力です。素晴らしい名曲 【演奏会用二重奏ソナタ】 です。(解説/佐野悦郎)