Debussy : La Mer (Myung-Whun Chung / Orchestre philharmonique de Radio France)
L'Orchestre philharmonique de Radio France dirigé par Myung-Whun Chung interprète "La Mer, trois esquisses symphoniques pour orchestre" de Claude Debussy. Enregistré le 16 mars 2012 à la Salle Pleyel (Paris).
01:27 : De l’aube à midi sur la mer — Très lent
11:56 : Jeu des vagues — Allegro
19:37 : Le Dialogue du vent et de la mer — Animé et tumultueux
正直に書けば、あまり書きたくない曲が幾つかあります。それは、マーラーであったり、ブルックナーであったり、このドビュッシーの「海」であったりします。理由はそれぞれありますが、必ずしも嫌いだからではありません。この曲について語る人が多く、今更と言う気分もありますし、この「海」に限って言えば、アナリーゼも不十分で、指揮をしたことがないからです。正確に言えば、練習したことはあるが、演奏会で振ったことがないと言うことです。更に書けば、今日は誰の指揮でどの楽団の演奏が良いだろうとも悩みます。
だからと言って満を持して今日は書くなどと大それたことも思ってはいません。いずれにせよ、指揮をすると言うことがいかに難しいか最近身に染みてきました。井上道義氏は指揮台を去るという決心をされたと言いますが、とても悲しい気がしております。今日は資料が多いので、前置きはこの位に致しましょう。あ、最も大切なことを書き忘れるところでした。1905年に今日にドビュッシーの交響詩「海」が初演された日なのです。La Mer,
「海」管弦楽のための3つの交響的素描( La Mer,trois esquisses symphoniques pour orchestre )は、クロード・ドビュッシーが1903年から1905年にかけて作曲した管弦楽曲です。副題の付いた3つの楽章(第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」-第2楽章「波の戯れ」-第3楽章「風と海との対話」(1. De l'aube à midi sur la mer-2. Jeux de vagues-3. Dialogue du vent et de la mer ))で構成されています。
「海」は具体的な標題を持っていますが、構成に重点が置かれた絶対音楽的な作品と言えます。人によっては、交響曲とも言える作品だという人もいるのです。 実際、全体が3つの楽章で構成されていること、複数の楽章にわたって同じ主題や動機を使う「循環形式」が用いられていること、これらは、当時のフランスの作曲家が書いた交響曲とも共通しています。
とは言え、従来のソナタ形式の「主題提示」、「展開」、「再現」といった単純なものではなく、動機や主題が相互に関係を持ちながら螺旋(らせん)を描くように音楽が作られ変化していくのです。こうした技法は、まったく新しく独自なものと言えます。
作品の詳細な分析を行った作曲家ジャン・バラケは、「『海』によってドビュッシーは新しい音楽技法を発明し直した」と評価し、その新しい構成原理を「開かれた形式」と呼んだ。バラケは次のように言う。
ドビュッシーは、『海』でもって、展開の一方式を現実に考えだした。それは、呈示とか展開とかの概念をさえ、ある不断の湧出のなかに、共存させる。その湧出が作品に可能にするのは、あらかじめ設定されたなんらかのモデルのたすけを乞わずに、自身の力でいわばみずからを推進することなのである。
— ジャン・バラケ、ジャン・バラケ 平島正郎訳『《永遠の音楽家》7-ドビュッシー』白水社、1969年6月20日、233-234頁より引用
また、ドビュッシーの研究者、松橋麻里は次のように表現している。
気づかれないようなふとした音の動きがより大きな動きを誘い出し、それが次々に広がっていく。つまり音が自らの内部から進む力を繰り出していく。これが既存の形式ではない形を生んでいくのである。— 松橋麻里、松橋麻利『作曲家◎人と作品-ドビュッシー』、音楽之友社、2007年5月10日、ISBN 978-4-276-22189-5、200頁より引用
後にドビュッシーは「音楽」というものを「律動づけられた時間と色彩でできている」と説明しています。「海」でなされた作曲技法の実践が、考え方の裏付けになっているのでしょう。
しかし、この作曲技法上の新しさは、初演当時の聴衆や批評家にはほとんど理解されることはありませんでした。「音楽による海の描写」という観点から作品を見る者が殆どで、今でも「海」は「海の情景を描写した標題音楽」として説明している資料もあります。
エリック・サティが撮影したドビュッシーとストラヴィンスキー。部屋の後方に北斎の「神奈川沖浪裏」が飾られている。(ウィキペディアのより転載)
1905年にフランスで出版された「海」初版のオーケストラスコアの表紙デザインには、ドビュッシー自身の希望で、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」から「神奈川沖浪裏」が使用されています。ドビュッシーは若い頃、カミーユ・クローデルと親交があり、彼女から北斎の版画や日本美術について話を聞いたことがあるようです。
かと言って、この「海」が「北斎の浮世絵にインスピレーションを得て作曲された作品」とした資料もありますが信ぴょう性には不安が残ります。また、カミーユ・モクレールが1893年に発表した中篇小説「サンギネール諸島付近の美しい海」関連が指摘されます。なぜなら第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」には、「サンギネール諸島付近の美しい海」という副題がつけられていたというのです。けれども、内容的に一致するような構造にはなっていません。
両作品の関係を敢えて言うなら、両方とも全体が三部構成で、時間の推移を表現しているという共通点はあります。本人もこうした経緯については何も語っていないので、いずれも推測の域を出ないようです。
ドビュッシー本人によるピアノ連弾用の編曲もありますが、それはまたの機会に致しましょう。
※ 以前の記事
① フルートの出番です76 ドビュッシー「6つの古代碑銘」より
※ 演奏会のご案内
○ ベートーヴェン ピアノとヴァイオリンの為のソナタ全曲演奏会
※ お知らせ
ネットでも各社予約受付中です(ネット発売日は11月1日です)という内容が抜けていました。
㈱全音楽譜出版社(ポケットスコア)
通常価格1,430 円(税込)
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、夜想曲、交響詩《海》 他 (SHM-CD)
ピエール・ブーレーズ (アーティスト) 形式: CD
曲目リスト
1 牧神の午後への前奏曲
2 夜想曲 第1曲:雲
3 夜想曲 第2曲:祭り
4 夜想曲 第3曲:シレーヌ(海の精)
5 交響詩≪海≫ 3つの交響的素描 第1曲:海上の夜明けから真昼まで
6 交響詩≪海≫ 3つの交響的素描 第2曲:波の戯れ
7 交響詩≪海≫ 3つの交響的素描 第3曲:風と海との対話
8 ≪管弦楽のための映像≫から 第2曲:イベリア I.街路で道で
9 ≪管弦楽のための映像≫から 第2曲:イベリア II.夜のかおり
10 ≪管弦楽のための映像≫から 第2曲:イベリア III.祭りの日の朝