Copland Duo
Thomas Robertello, flute Kumi Mizuno, piano Copland Duo Izumi Hall, Osaka, Japan - June 1996
アーロン・コープランドの「デュオ」、エル・サロン・メヒコなどを知っている人は、フルートのレシタティーヴォなんかで始まるこの曲を聴くと一瞬戸惑うのではないでしょうか。いつになったらデュオになるんだろう?そういぶかしんだ頃にピアノはやってきます。
わかりやすく、軽快で、明るいイメージの曲で知られるコープランドですがこんな曲もあるのです。ですが、和声構造は至ってシンプルにできています。2楽章の詩的な語り口を過ぎて、3楽章はあのコープランドが帰って来ます。
今では日本にもお馴染みとなった「タングルウッドの音楽祭」ですが。これらの若手音楽家を育てようとする取り組みにも、コープランド、そして先日取り上げたクーセヴィツキーなどの名前が挙がってきます。教育者としての姿もあるのですが、人物については、以前の記事をご覧ください。
※ 以前の記事
<演奏者>
トーマス・ロベルテッロは、1997年からインディアナ大学ジェイコブス音楽学校のフルートの准教授を務めています。
ジュリアード音楽院卒業後、ピッツバーグ交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、ナショナル交響楽団の元メンバーであり、シカゴ交響楽団、ロサンゼルスフィルハーモニー管弦楽団、ダラス交響楽団、シカゴフィルハーモニー管弦楽団、ルイジアナフィルハーモニー管弦楽団、ヒューストングランドオペラ、ナッシュビル室内管弦楽団のゲストプリンシパルフルート奏者として演奏しています。彼はサンフランシスコ交響楽団とツアーを行い、ジェロッド・テイトのソロフルート、合唱、オーケストラのための「Iholba」でそのオーケストラのゲストソリストを務め、ケネディセンターで作品を委託したナショナルシンフォニーのメンバーと初演し、サンフランシスコ交響楽団と録音しました。彼はピッツバーグ交響楽団のソリストとして紹介されています。他にも、テレマンのフルート独奏曲、バッハ独奏曲、フォーレの音楽、委嘱作品、日本でのリサイタル公演のライブCDなど、いくつかのソロ録音があります。
ロベルテッロの以前の教員職には、アジアユースオーケストラ、カーネギーメロン大学、ノートルダム大学、ルーズベルト大学、クリーブランド音楽院が含まれます。彼はマスタークラスを教え、米国、ヨーロッパ、日本、韓国、中国、南アメリカでソリストとして演奏しました。ソリストとして、パシフィック・ミュージック・フェスティバル(日本)、サラソータ音楽祭(アメリカ)、グランド・ティトン(アメリカ)、奈良(日本)、霧島(日本)、ロンドリーナ(ブラジル)、ダーティントン(イギリス)、アティトス(ギリシャ)、ミュージック・アナトリア・カレッジ(ギリシャ)、ブレバード・ミュージック・センター(アメリカ)、ナショナル・オーケストラ・インスティテュート(アメリカ)、ユーロ・ミュージック・フェスティバル&アカデミー(ドイツ・ハレ)など多数。
コープランド、アーロン/ニ重奏曲 Copland, Aaron DUO |
<解説>
先頃亡くなったコープランドは、生粋のニューヨーク育ちのアメリカの作曲家でした。20代にパリに留学して、ナディア・ブーランジェらに師事し、フランス伝統の教育も修めた人でしたが、帰国した後は、アメリカの風土性を強調し、ジャズの手法を好んで用いた作品を生み出しました。この「デュオ」を吹くとき、私はいつも、パリで生み出された作品の持つ様々な香水の香りから開放され、洗いざらしの木綿に触ったような心地よさを感じます。コープランド自身はこの曲について、「いくぶん田園風の叙情的な作品」 で 「比較的シンプルな和声と旋律線によってできている」 と言っています。フルート独奏の素朴なレシタティーヴォで始まる第1楽章。常に微細にテンポが変化するデリケートさを持ち、ピアノ・パートと緊密な有機性をもって構成されています。ジャズのイディオムが巧みに折り込まれています。第2楽章はコープランド流の幾分悲しさを伴った詩的表現。後味は爽やかなんだけれど、ちょっと得体の知れない感じ。第3楽章は、コープランドお得意のリズム強調の生き生きした楽章。フルートとピアノのかけ合いが即興のような生きの良さを生むでしょう。(解説/三上明子)