パガニーニ「カンタービレ」 | 翡翠の千夜千曲

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Niccolò Paganini - Cantabile for Violin and Guitar, Op.17 (1824)

Lev Klychkov - violin Artur Bochkivskiy - guitar

 

In Mo Yang - Cantabile MS109 (Paganini) - Genoa, 2 October 2015

 

 

 

 

 今日は、パガニーニの小品を聴きますが、私はパガニーニのヴァイオリン協奏曲1番について吉村妃鞠さんの演奏で2回も同じ記事を書いていたことに気が付きました。(アホだ)幸いにして同じ演奏ではなく、9歳の頃の新日本フィルとの演奏で、もう一つは12歳でN響との演奏でした。

 ヴァイオリニストとしてだけではなく作曲家としても19世紀前半に活躍し、超絶技巧で数々の伝説と傑作を生み出したパガニーニは、自分自身の技術向上のためにも、演奏技術の高度な技巧を織り込んだ曲を数多く書いています。現在となっては、これらの曲はヴァイオリン音楽にとって欠かせないレパートリーの一つになっていますが、いつしか演奏者も聴衆もこの技巧をこらした曲調にばかり気を足られるようになっています。

 しかしこのカンタービレはやさしさと透明感に満ちています。それらはイタリアの青く澄んだ地中海や空を思わせます。伸び伸びと開放的な旋律線を線でなぞっていくと、この曲のシンプルに聴こえる音楽にパガニーニの別な一面を感じ取ることができます。

 別な一面と言えば、悪魔のヴァイオリン弾きと言われたパガニーニですが、シューベルトは彼のヴァイオリン協奏曲の演奏を聴いて、「天使の声を聴いた」と言ったようです。悪魔が天使の声で歌う、何という不思議な光景でしょう。

 パガニーニは絶対に練習風景を見せなかったそうですが、それは技術的なものを盗まれないようにするためでもあったようです。それを物語る記述があります。

 パガニーニ自身は技術が他人に知られるのを好まなかったため、生前はほとんど自作を出版せず自分で楽譜の管理をしていた。

 その徹底ぶりは凄まじいもので、自らの演奏会の伴奏を担当するオーケストラにすらパート譜を配るのは演奏会の数日前(時には数時間前)で、演奏会までの数日間練習させて本番で伴奏を弾かせた後、配ったパート譜はすべて回収したというほどである。しかも、オーケストラの練習ではパガニーニ自身はソロを弾かなかったため、楽団員ですら本番に初めてパガニーニ本人の弾くソロ・パートを聞くことができたという。その背景として、パガニーニ自身が無類の“ケチ”だったと言う事の他に、この時代は、著作権などがまだ十分に確立しておらず、出版している作品ですら当たり前のように盗作が横行していた為、執拗に作品管理に執着するようになったとする説もある。

 さて、作品表によると、この作品はop.17であり、MS109という整理番号が付き「カンタービレニ長調」でVn,Pianoと記されていますが、実際の楽譜はピアノではなくギターです。この曲をはじめ、1805年ころからギターの独奏曲やヴァイオリンとの二重奏曲などを多く書いています。この頃、1800年から1805年にかけて表立った活動をやめ、ギターの作品を数多く作曲しているのは、フィレンツェの女性ギター奏者を愛人にしていたためと言われています。ですが、これ以上墓堀りはやめましょう。

 ところで、昔はギターとのアンサンブルはよくあったことで、楽器の持ち運びが自由で小さい会場でも演奏することができます。さらには、ピアノやオーケストラと演奏する場合には、ある程度音量を増幅させなければなりませんが、ギターが相手だと比較的優しく演奏ができます。妙に張った演奏をせずに済みます。そういう意味でも、カンタービレはギターが適役なのです。

 最後に、In Mo Yangは韓国のヴァイオリニストです。

 

※ ダブった記事

〇 パガニーニ「ヴァイオリン協奏曲1番」を吉村妃鞠が弾く 2021,8,25

〇 パガニーニ「ヴァイオリン協奏曲第1番」ニ長調 HIMARI 2023,5,13

 

 

パガニーニ作品全集

Various Artists

40枚セットのうち

[CD18]ヴァイオリンとギターのための作品集-チェントーネ・ディ・ソナタ Lettera A M.S.112
1-2.ソナタ 第1番 イ短調
3-4.ソナタ 第2番 ニ長調
5.ソナタ 第3番 ハ長調
6-7.ソナタ 第4番 イ長調
8-9.ソナタ 第5番 ホ長調
10-11.ソナタ 第6番 イ長調
12.カンタービレ ニ長調 M.S.109
ルイージ・アルベルト・ビアンキ(ヴァイオリン)
マウリツィオ・プレーダ(ギター)
録音 1995年6月 ジェノヴァ・ダイナミック・スタジオ