Daniel Auber - Overture "Le Cheval de Bronze" (1835)
Overture from Fra Diavolo
この序曲を聴くだけで、お里が知れるレヴェルの音楽と言う向きもあるでしょうが、これが当時はワーグナーのオペラと二分するどころかこのオーベールの「青銅の馬」の方が断然人気があったと言いますから、正に娯楽中の娯楽であったようです。
ダニエル=フランソワ=エスプリ・オベール(Daniel-François-Esprit Auber 1782年1月29日 - 1871年5月12日)は、フランスの作曲家です。オペラの分野で活躍し、50あまりの作品を遺しています。
Le cheval de bronze(ブロンズホース)は、1835年3月23日にパリのサルドゥラブルスでオペラコミックによって最初に上演されたオペラコミックです。台本(全3幕)は、オベールの常連の協力者であるウジェーヌ・スクライブによるもので、当時は大成功を収めました。1857年にオペラバレエに変身しましたが、これはあまり評価されませんでした。序曲はオベールの最も人気のあるものの1つです。第1幕のフィナーレは、モーツァルトのコジファントゥッテの第1幕のフィナーレの最後のフレーズを拡張します。作曲家は物語の中国の設定を音楽に反映しようと考えていたようです。彼の略歴は、以下のようです。
オペラ・コミック座のバリトン歌手に音楽を学ぶ。父親の希望で1802年にロンドンのビジネス校に入学するも、アミアン講和条約破棄の影響で翌年帰国。ウジェーヌ・スクリーブに影響されて作曲を始め、1808年にパリ音楽院で披露したバイオリン曲がきっかけとなり、同校のケルビーニに師事。ベルギー貴族シメイ公の支援を受ける。
1842年、ケルビーニの後任として音楽・演劇学校(現・パリ国立高等音楽院)の院長に就任する (1842-1871)。パリ・オペラ座ではワーグナーと人気を二分するとまで言われたが(ワーグナーの音楽が最初パリに紹介されたときは聴衆の拒否反応で大スキャンダルにあったのに対し、オベールは当時からパリのグランドオペラ・ファンに支持されていたため)、現在では彼の作品はほとんど忘れ去られ、数曲の序曲(特に最も成功したオペラ『フラ・ディアヴォロ』)がごくたまに抜粋で演奏されるか、埋もれた作曲家の作品として録音される程度である。現在オベールの墓はパリのペール・ラシェーズ墓地第4区にある。
オベールの名は、ガルニエ宮(オペラ座)の後方の通り(Rue Auber)、およびオペラ駅に地下で繋がるパリ高速地下鉄RERの主要連絡駅オベール駅の名となっており、そのおかげで現在もパリ市民の記憶にとどめられている。
さて、ここではグランド・オペラなるものを整理しましょう。グランド・オペラ(grand opera, grand opéra)とは、19世紀前半のフランス・パリのオペラ座を中心にして流行した、オペラの一つの形を示す言葉です。大雑把に言えば「大規模」なオペラをグランド・オペラ様式と思えば遠からじと思召せ。
歴史的題材を元にした台本によって、数多くのキャスト、大規模なオーケストラ編成、豪華な舞台衣装、スペクタクル的な舞台効果などに加えて、音楽的なドラマ進行はレチタティーヴォによるものです。構成上は4幕あるいは5幕もので、多くの場合バレエを含むことなどが特徴です。ただし、19世紀前半のフランスでは台詞なしのオペラは、1幕物であってもgrand opéraと言われていたようです。前にも書きましたが、ハリウッド映画の歌劇バージョンと言う感じです。一方では、ダフ屋が横行しスキャンダルにまみれてもいました。
こういったオペラの人気は次第に薄れていきます。舞台装置などに膨大な費用がかかる割には、より洗練されたオペラ群に対して音楽面での魅力がないとみなされてきたのです。大衆にべったり過ぎるのは最悪です。本日のタイトルですが、自分が音楽史に名を刻むだろうなんて考えて曲を書いている人はあまりいないと思いますがね。自分が書きたいと思うものを書くことこそ幸せと言うのだと思います。
※ 一年前の記事
Overtures Vol.1 : Doerner / Cannes Symphony Orchestra
オーベール:
● 歌劇『コーカサスから来た娘』序曲 S.48 (1861)
● 歌劇『青銅の馬』序曲 S.25 (1835)
● 歌劇『黒のドミノ』序曲 S.30 (1837)
● 歌劇『フラ・ディアヴォロ、またはテッラチーナの宿屋』序曲 S.18 (1830)
● 歌劇『婚約者』序曲 S.17 (1829)
● 歌劇『王冠のダイヤモンド』序曲 S.34 (1841)
● 歌劇『マルコ・スパダ』序曲 S.43 (1852)
● 歌劇『放蕩息子』序曲 S.41 (1850)
カンヌ管弦楽団 ヴォルフガンク・デルナー(指揮)
録音時期:2015年6月24-26日
録音場所:カンヌ、J.W.マリオット・クロワゼットホテル劇場
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
Overtures Vol.4 : Salvi / Moravian Po
【収録情報】
オーベール:
● 歌劇『オロンヌ公』 S.35(1842)より
1. 序曲
2. 第2幕:間奏曲と序奏
3. 第3幕:間奏曲
● 歌劇『フラ・ディアボロ』 S.18(1830)より
4. 序曲
5. 第3幕:間奏曲
● 歌劇『媚薬』 S.20(1831)より
6. 序曲
7. 第2幕:間奏曲
● 歌劇『ヴェルサイユの饗宴』 S.29(1837)より
8. ヴェルサイユのディヴェルティスマン
● 歌劇『ガルベの王の婚約者』 S.49(1864)より
9. 序曲
10. 第1幕:終幕の踊り
11. 第2幕:間奏曲
12. 第3幕:メロドラマ
● 歌劇『アクテオン』 S.26(1836)より
13. 序曲
モラヴィア・フィルハーモニー管弦楽団 ダリオ・サルヴィ(指揮)
録音時期:2019年12月
録音場所:チェコ、Reduta Hall, Olomouc
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション) 世界初録音(2,7,8,9-12)

