去りゆく夏を偲んで ディーリアス「Summer Garden」「Summer Evening」 | 翡翠の千夜千曲

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                            Delius: In a Summer Garden 

 

      

      Summer Evening – Frederick Delius

 

 

 

 

 かつて夏と言えば、夏を抱きしめて、夏を待ちきれなくて、SUMMER DREAM、シーズン・イン・ザ・サン、とまあチューブを思い出すのはおっさんたちでしょうか。打上花火、夏色、花火、線香花火、夏祭り、HANABI 、渚、夏音、Super Summer 、少年時代、夏模様の猫、GO GO サマー!、真夏の夜の夢、ただ君に晴れ、君の知らない物語、こんなのが今の子は好きらしい。おっさんたちは、井上陽水とユーミンくらいしか知らないかもしれない。

 私は、昨年の5月17日に「花鳥風月 ディーリアス「春初めてのカッコウの声を聴いて」」という曲を紹介していいます。要するに、諸外国の人は「花鳥風月」という日本人的わびさびの世界をどう感じているかと言う話でした。

 で、今日は去りゆく夏を想い出してクラシック界の風景画家ディーリアスを聴いてみようと相成ったのであります。聴き直して確信したのはこの男がイギリス人だと言うこととです。イギリスの田園風景や庭や川を描かせたらぴか一のこの人の音を聞いて、イギリス人の感性が少しばかり理解できた気がしたのです。以下は、失礼があったら先にお詫びしておきますが、アメリカ人ヤンキーには絶対ない感覚だろうと確信します。そうです、ある評論家の言う通りなのです。

 イングリッシュガーデンをご存知ですか?イングリッシュガーデンとは、グリーンをたくさん使った自然の景色そのもののような庭のことです。イングリッシュガーデン(English garden)は、直訳すると英国式庭園、英国式庭園は風景式庭園とも呼ばれます。言葉の通り、風景画のように木々が風に揺れ、水が流れ、花が咲き誇る、自然あふれる庭園です。つまり、日本人とは少し違いはあるものの、イギリス人は自然的な美を好むと言う美意識を持っているようです。

 フレデリック・シーオドア・アルバート・ディーリアス(Frederick Theodore Albert Delius CH 1862年 - 1934年)は、イギリスの作曲家です。本名はフリッツ・シーオドア・アルバート・ディーリアス(Fritz-)と言いました。

 彼の先品を好んで織り上げて演奏し、彼の作品を多くの人に紹介したのは、同じイギリス人の指揮者トーマス・ビーチャムでした。

 ある評論家によれば、「(ディーリアスは)どの楽派にも属さず、いかなる伝統も継承せず、音楽の形式や内容、様式的には他のどの作曲家とも異なっている。」しかしながら、この「際立って独立的で個性的な語法」は、彼が多くからの影響を吸収してきた長い修行期間の賜物なのである。ディーリアスが後に断言したところによると、彼の芸術が築き上げられる過程において最初の重要な経験となったのは、ソラノ・グローヴで河を下って彼の耳に届くプランテーションの歌だった。これらの歌がまずはじめに自分を音楽での自己表現へと駆り立てたのだと、彼はフェンビーに語っている。

 ディーリアスは、ドイツにいた頃ワーグナーにどっぷりはまっていて、無限旋律の技法を習得するのに夢中になっていました。けれども、彼の音楽性を最も方向づけたのはグリークだと言うのです。この北欧の作曲家が、土地の民謡や民族音楽から影響を受けていたように、ディーリアスもまたフロリダで知った黒人の音楽や歌などに関心と興味を持っていました。

 音楽ライターのアンソニー・ペインはこう考えている。グリーグの「軽やかで非発展的な半音階の用法から、(ディーリアスは)ワーグナーの重荷を下ろす方法を見出した。」

 そうして、彼は自分の語法を模索していきます。

 パーマーによると、ディーリアスが方向性を見定めるに当たって、フランスの同時代人であるドビュッシーを参考にしたか否かは、議論の余地の残るところである。パーマーは両者の間に美的感覚の類似点を見出しており、また両者が性格面、熱意面のいくつかの点で共通することを指摘している。2人とも初期にはグリーグの影響を受けており、ショパンを称賛していた。また、海を音楽で描写したということ、歌詞を持たない声楽の使用ということでも繋がりを見せる。パーマーによれば「ブリッグの定期市」の開始部分は「ディーリアスの中でも最もドビュッシー的な瞬間」である。ドビュッシー自身は、1901年3月16日のディーリアスのソプラノと管弦楽のための「2つのデンマークの歌」の演奏会評として、こう記している。「曲は非常に甘美で淡い。裕福な隣人が病から脱しようとする時にいたわるような音楽である。」一方のディーリアスはドビュッシーの管弦楽法を称賛しつつも、彼の作品は旋律を欠いていると考えていた。後者のような意見はディーリアス自身の音楽にも頻繁に向けられるものである。しかしながら、フェンビーはディーリアスが大衆の好みを軽視していたことを認めつつも、心地よい楽曲の形で「大衆に望みのものを提供する」ような、ディーリアスの「旋律的で詩的な散文」に注目を促している。

 今日の紹介する曲には、木管がよく生かされており、中でもフルートは大きな役割になっています。この記事を広島交響楽団のフルート奏者中村めぐみさんに贈ります。縁がありましたら、今度どこかで取り上げてもらって演奏してくださるとうれしいです。イギリスの作曲家は、ヘンリーパーセル、ベンジャミンブリテン、ホルスト、エルガー、ヴォーン・ウイリアムズばかりではないのです。

 お時間のある広島近隣の皆様、広島交響楽団の演奏会にどうぞお出かけ下さい!

 

 

ディーリアス:管弦楽曲集

バルビローリ(ジョン) (アーティスト, 指揮), & 6 more  Format: Audio CD