オルガンの巨匠ブクステフーゼ「バロック中期の音楽」1 | 翡翠の千夜千曲

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      Buxtehude - Toccata in D minor, BuxWV 155 - Bernard Foccroulle

 

       

     Buxtehude - Sonata a 2 in A minor BuxWV 272 - Ensemble Fantasticus

 

       

        Buxtehude Sonata a-Moll - BuxWV 272 (Passacaglia)

 

       

    Dietrich Buxtehude: Membra Jesu Nostri - René Jacobs, 2004 (HD 1080p)

 

 

  今日は、バロック中期のオルガンの大家の音楽家で作曲家のブクステフーデを取り上げます。中期の中では際立った存在ですが、次回は少し後に生まれたシャルパンティーエをフルートで取り上げますので今回はブクステフーデ一人です。その音楽は、感情をそのまま伝えてくる表現で実に自然で直截的です。聴いていて、安心感があり、飾りのない音楽表現に思わず機器ります。人柄も、謹厳実直で信頼の厚い人物だったようです。今回は、二人の人物だけを扱いますが、バッハの祖先であるバッハ一族が活躍を始めた時代でもあります。ハインリッヒ・バッハ、ヨハン・クリストフ・バッハ、ヨハン・ミヒャエル・バッハなどの人物が登場してきます。

  1705年リューベックにある聖母マリア教会にブクステフーデがいました。その年に、20歳のヨハン・セバスチャン・バッハは、この教会のオルガニスト、デイートリッヒ・ブクステフーデが演奏するオルガンを聴くために、チューリンゲンのアルンシュタットからやってきたのです。バッハはブクステフーデのオルガンに魅せられ、許可された4週間の休暇は16週間にもなってしまったという、有名な逸話の残る教会がこのマリア教会です。ブクステフーデの影響を受けて作曲されたのが、あの「トッカータとフーガ ニ短調」です。

 ディートリヒ・ブクステフーデ (ディーテリヒ・ブクステフーデ、ドイツ語: Dieterich (Dietrich) Buxtehude , 1637年頃 - 1707年)は、デンマークの生まれで17世紀の北ドイツおよびバルト海沿岸地域、プロイセンを代表する作曲家であり、オルガニストでした。声楽作品においては、バロック期ドイツの教会カンタータの形成に貢献する一方、オルガン音楽においては、ヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンクに端を発する北ドイツ・オルガン楽派の最大の巨匠であり、その即興的・主情的な作風はスティルス・ファンタスティクス(幻想様式)の典型とされています。 

  若い頃の記録はほとんどなく、1658年にヘルシンボリの聖母マリア教会のオルガニストに任命されていますから、21歳の頃にはこの職にあったことになります。いかに優秀であったかが判ります。1660年には、ヘルセンゲアの聖マリア教会のオルガニストに就任、1666年にコペンハーゲンを訪問し、当時の宮廷楽長カスパル・フェルスターに会ってブクステフーデの声楽作品における直截的な感情表現に影響を与えたと言われています。

  1667年にリューベックの聖母マリア教会のオルガニストに任命されますが、この教会のオルガンは3段鍵盤、54ストップを備える聖母マリア教会の大オルガンは銘器の誉れ高く、同教会のオルガニストは北ドイツの音楽家にとって最も重要な地位の1つとされていたのです。その後、40年にもわたって同教会のオルガニストとしての務めを果たします。

 

<声楽曲>

  ブクステフーデの現存する約120曲の声楽曲は、婚礼用の8曲等を除いてすべてプロテスタント教会のための宗教曲である。これらの作品は今日カンタータと呼ばれることも多いが、当時、宗教曲に対してカンタータという呼称が用いられることはなく、独立した複数の楽章から構成される声楽曲という現代における定義に合致する作品も少ない。ブクステフーデの声楽曲において採用された歌詞の形式は、聖書等の散文詩、ドイツ語コラール、その他の有節詩に分類することができ、それに応じて基本的な楽曲構成を声楽コンチェルト、コラール楽曲、アリアに分けて考えることが一般的である。

声楽コンチェルトは、イタリアのコンチェルタート様式に由来し、歌詞のフレーズにあわせて分割されたモティーフを単声または多声の歌唱声部と器楽声部が協奏する。また、アリアの多くは、リトルネッロ、声楽リフレインを伴った有節変奏形式であり、BuxWV57, 62, 70のようにオスティナート・バスによるものも存在する。一方、当時イタリアで確立されていたダ・カーポ・アリアは全く見られず、歌詞のデクラメーションに即したシンプルな旋律は、むしろ初期バロック・イタリアにおけるクラウディオ・モンテヴェルディやジャコモ・カリッシミに近い。単一の歌詞による楽曲においても、分節化されてカンタータへと向かう傾向が認められるが、複数の歌詞を組み合わせた楽曲では、明確なカンタータ形式によるものが約30曲存在する。その大半は声楽コンチェルトとアリアを組み合わせた作品であり、聖書の言葉がその主観的で詩的な省察と結びつけられ、深い共感を込めて描かれている。

  ブクステフーデのアリアには、BuxWV59, 74, 80, 90のように、ヨハン・シェフラー(アンゲルス・ジレージウス)、ヨハン・ヴィルヘルム・ペーターゼン等の神秘主義者、敬虔主義者やその影響を受けた詩人の歌詞が少なからず存在する。また、クレルヴォーのベルナルドゥス等の中世神秘主義の流れを汲む瞑想的な歌詞も、BuxWV56, 57, 75等の作品で採用されている。直接的な体験を通して神との合一を求める中世神秘主義は、バロック時代の思想の底流として生き続け、日常生活における霊的体験を重視するルター派敬虔主義の成立にも大きな影響を及ぼす。30年戦争の悲惨な経験を通して、この世を涙の谷ととらえ、来世に憧れのまなざしを向ける17世紀ドイツの民衆の心情には、こうした神秘主義的思潮が広く浸透していた。十字架上のイエスの苦しみをわが身のものとして受けとめ、花婿に擬えたイエスとの結婚を通して魂の救済を希求するこれらの作品は、ブクステフーデのシンプルな旋律法とも相まって、ブクステフーデの声楽曲のなかでもとりわけ強いインパクトをもっている。

<鍵盤楽曲>

  ブクステフーデのオルガン作品は、自由曲、コラール編曲ともに約40曲が現存する。自由曲の多くは、即興的なプレリュードと対位法的なフーガを含んでいるが、「前奏曲とフーガ」と通称されるように、一対のプレリュードとフーガから構成される作品は少ない。典型的な楽曲構成は、北ドイツ・オルガン・トッカータといわれる5部形式であり、冒頭部-第1フーガ-間奏部-第2フーガ-終結部といった展開を示す。BuxWV137, 148のように後続するフーガに代えてオスティナート形式が導入されることもある。自由な部分は即興的な性格が強く、とくに冒頭部は入念に展開され、技巧的なパッセージや大胆な和声進行等を伴って、リズム、テンポ、拍子のさまざまな対比が試みられる。リューベックの聖母マリア教会のオルガンは足鍵盤のストップ数が最も多く、ブクステフーデのオルガン作品においても低声部は重要な役割が与えられており、BuxWV137, 143のように足鍵盤の技巧的なソロで開始する楽曲も存在する。また、フーガでは二重対位法やストレッタが多用され、足鍵盤が独立した声部を担当してテクスチュアに厚みが加えられている。その他の自由曲としては、3曲のオスティナート楽曲や足鍵盤をもたないカンツォーナ等がある。ニ短調のパッサカリア(BuxWV161)は、後にヨハネス・ブラームスが関心を寄せたことでも知られており、足鍵盤をもたない自由曲は、チェンバロによる演奏も可能である。

一方、オルガンのためのコラール編曲は、コラール前奏曲、コラール変奏曲、コラール幻想曲に分類される。コラール編曲の大半を占めるコラール前奏曲は、会衆によるコラールの前奏として用いられたものであり、コラール旋律が豊かに装飾されて上声部に置かれ、他の3声部が手鍵盤と足鍵盤に分けて伴奏される。また、コラール幻想曲においては、声楽コンチェルトの作曲技法が応用され、コラールの各フレーズが即興的に大きく展開されており、滔々と流れるファンタジーのうちに、ブクステフーデの敬虔な信仰心を感じさせる。

<室内楽>

  ブクステフーデの室内楽曲は、出版されたいずれも7曲からなるヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ集作品1(1694年)、作品2(1696年)のほか、手稿譜として残された6曲のソナタが現存する。1684年に出版されたとされる2-3つのヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、通奏低音のためのソナタ集(BuxWV274)は今日消失している。出版された2つの作品集は、体系的な調性プランにもとづき、1セットとして編纂されたものと考えられるが、楽章編成は楽曲ごとに異なり極めて多様である。いずれの楽曲においてもヴィオラ・ダ・ガンバに重要な役割が与えられており、通奏低音の旋律のディヴィジョンを行うほか、対位法的な楽章では独立した声部を演奏して、ヴァイオリンと対等に掛け合う。また、手稿譜として残された作品のなかには、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴィオローネと通奏低音といった特殊な編成によるソナタ(BuxWV267)も存在する。いずれも、ウィキペディアより抜粋

※ IMSLPブクステフーゼの楽曲

 

 

 

ブクステフーデ: カンタータ「われらがイエスの四肢」 BuxWV.75

ティメン・ヤン・ブロンダ 、 ルター・バッハ・アンサンブル

 

 

ブクステフーデ: オルガン作品全集 第2集

フリードヘルム・フランメ