フルートの出番です58 バルトーク「ハンガリー農民組曲」 | 翡翠の千夜千曲

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 Bartok-Suite Paysanne Hongroise arr. for flute and orchestra- Schwarzman, Braunstein

 

  今日は、バルトークの「ハンガリー農民組曲」を聴いてみます。バルトーク・ベーラ・ヴィクトル・ヤーノシュ(Bartók Béla 1881年 - 1945年)は、ハンガリー王国のバーンシャーグ地方のナジセントミクローシュに生まれ、ニューヨークで没したクラシック音楽の作曲家でピアニスト、そして優秀な民俗音楽研究家でした。
  作曲以外にも、学問分野としての民俗音楽学の祖の1人として、東ヨーロッパの民俗音楽を収集・分析し、アフリカのアルジェリアまで足を伸ばすなどの精力的な活動を行いました。またフランツ・リストの弟子トマーン・イシュトバーンから教えを受けた、ドイツ・オーストリア音楽の伝統を受け継ぐピアニストでもあり、コンサートピアニストやピアノ教師として活動しました。

  バルトークが東欧で集めた民謡をベースにしている、15曲の組曲は、もともとピアノのために書かれた民謡のアレンジで構成されたピアノ曲「15のハンガリー農民歌」は、その後9曲のオーケストラ版に書き直されました。さらにその後にポール・アルマによってフルートとピアノのために書き起こされました。後に彼はまた、フルートとオーケストラのために書き直しています。

  音形を形作っている要素や和声構造をよく理解して演奏することが大切です。3度和声と4度和声を組み合わせたり、ドローンのように和音を長く引っ張ったり、或は原曲を壊さない程度にフルートの技巧を凝らしたりしていますので、原曲のピアノ曲を聴いたり弾いたりしてみることは効果的です。昔の日本の農村風景にも似た風景などを思い浮かべる人も多いかと思います。それは、音階と和声構造からくるものです。

 

<演奏者>

  ギリ・シュワルツマンは国際的に高い評価を得ているフルート奏者です。ギリ・シュワルツマンは、エルサレム交響楽団、イスラエル室内管弦楽団、ベルリン・カメラータ、バレンシア交響楽団、ポツダム室内管弦楽団、ブルスレスのフランクール・ソリスト、北オランダ管弦楽団、トリーア・フィルハーモニー管弦楽団などのオーケストラとソリストとして世界中で演奏してきました。ソリストのギリ・シュワルツマンとしてのツアーとは別に、熱心な室内楽奏者でもあります。
   また、エルサレム室内楽フェスティバル、サロン・デ・プロヴァンスのムジーク・ア・ランペリ、ザルツブルク・フェスティバル、ルツェルン・フェスティバル、ザグレブ室内楽祭、ドイツのローランセック・フェスティバルなど、多くの権威あるフェスティバルにも定期的に参加しています。
  イスラエルの学校を優秀に卒業後、ミュンヘン音楽アカデミーでアンドラス・アドゥルジャン教授のクラスを経て、続けた。彼女の研究の間、彼女はプラハのアメリカ・イスラエル文化財団の奨学金、テルアビブアカデミーからの完全な研究奨学金を含むいくつかの賞を受賞しました。シュワルツマンは、著名なフルート奏者エマニュエル・パユなどの下で研鑽を積む特権を得ました。

 

   

バルトーク、ベラ/ハンガリー農民組曲

Bartok, Bela SUITE PAYSANNE HONGROISE 楽譜

 

<解説>ムラマツフルートのライツノート
  バルトークは、音楽院を卒業した直後から後輩コダーイと共に各地の民謡や民族音楽を収集しその方面の研究に大きな足跡を残していますが、自らの作品のなかにもその素材を活用し、西欧的な音楽伝統に留まらない独自の音楽を築きました。この曲集は、彼が民族音楽を用いた一連のピアノ曲のなかで最も重要な曲集の一つである 「15のハンガリー農民歌」 を原曲としています。P.アルマによる編曲は、原曲第6番のバラードを省略し、いくつかの曲でくり返しを付けたりフルート・パートに変奏させている他、曲の本質に触れる変更はしていません。第1の部分にあたる第1~4曲は 「悲しい民謡 」と題され、メドレーで4つの民謡がルバートを伴って歌われます。ハンガリー民謡になじみのない方には、雰囲気がつかみにくいかと思いますが、譜面に書き込まれているテヌートやアクセントを生かして、自分自身の言葉を話しているように吹いてみてください。バルトーク自身の和声付けが斬新で、ピアノ・パートに喚起されて、曲に奥行きが与えられます。第2の部分にあたる 「スケルツォ」 は、哀調を帯びた第1部分と対照的にユーモラスな曲となっています。軽妙でこっけいな感じを出してみてください。第3の部分は、「古い舞曲」 と題され、9曲が配されています。第1曲後半のフルート・パートの派手なお囃子のようなパッセージはアルマによるものですが、笛の特性を生かした編曲といえましょう。最終曲は、バグパイプの伴奏のような効果を持っています。テンポ表示の変更を厳格に守って吹いてみてください。(解説/三上明子)