錦織がシーズン最終戦と位置付けたヘルシンキCH125で見事優勝を果たしました。

3週連続という超過密日程。まだ復帰途中なことに加えて故障の不安が常に付きまとう錦織の体質からすれば、慌てすぎというか、らしくないスケジューリングだと思っていました。

実際に前大会のスロバキアから明らかな疲労によりパフォーマンスは落ちはじめ、今週は好調と言える試合は一つもなかったと思います。棄権してもおかしくないようなコンディションからの逆転勝ちばかりでしたからね。

 

まあ逆転男なのは今更なのですが、それでも『調子が悪くてもこのグレードの相手には勝つ』ことが証明されました。ここ数週間の過密スケジュールのおかげで、不調時のクオリティが底上げされてきているということです。忘れてしまいましたが、全盛期は対トップ100以下の選手に数年間の連勝記録を持っていたはずです。ムラが出てしまったとしても勝てるはずの相手に負けないという、トッププレイヤーに最も必要な技量が戻ってきたことが嬉しいです。

 

 

錦織が不在の数年間にテニスのトレンドは変わりました。以前よりも大型の選手が活躍するパワーテニス環境になり、それに合わせてコートやボールは球足が遅くなるものが採用されるようになりました。要は、小柄なテクニックタイプの選手がエースを取れない不利なスポーツになったということです。

 

相手の隙を見つけて攻めるのが得意な錦織が現代のツアーに戻ってそれらの相手と戦えるのか、僕はわかりませんでした。

ただ蓋を開けてみれば、ルーネやチチパスといったトレンドを象徴するようなプレーヤーでさえ錦織のテンポについていけず、試合中に打たせてミスを誘うテニスに作戦を切り替えていたほどです。

僕は『錦織、休んでからむしろうまくなってね?』と評価していたのですが、ここ数週間を見てそれは間違いではないと確信しました。うまくなったというか確実にテニスが変化しています。

もう少しちゃんと言語化するなら、『ライジングでの攻めの速さはそのまま、スピン量を減らしてショットスピードに重きを置くようになった結果、以前よりエースを量産できるようになった』ということです。うーむ我ながら腑に落ちる言葉。

だからこそ今はネットミスが増えているのでしょう。でもこれは今の結果よりも、来年を見据えていることの表れでもあると思ってます。だとしたらそれで優勝しちゃうのはおかしいんですけどね。

 

この『シバき』という武器に加えて、最近多用している『フォアに振られた時のスネイク風高速ショートクロス』もいい感じです。ネットプレーも相変わらず一級品(スマッシュは除く)。あとはブレーク直後にすぐ被ブレークされる癖さえ抑えることができれば、その時錦織はまたトップ30に戻れると思います。バックの調子も復調してほしい。


多分この優勝で錦織のポイントは478Pになるはずです。6月からの半年でほぼ500P。今の調子を維持できれば、単純計算でも来年の6月には1000Pは超えて50位には入れそうですね。その間にツアーで一つ優勝が出来れば・・・うーん夢が広がる。

 

何はともあれ、優勝という結果以上に一大会を戦い抜く体力が戻ってきていることが嬉しいです!いや嘘です、優勝の方が嬉しいです!!!!やっぱ俺にはお前しかいねえよ!