去年末くらいから他のなろう系とは一味違うとちょこちょこ評判を聞いていた漫画に遅ればせながら手を付けました。

コミックDAYSってアプリ、何かあんま使ってなかったけどいつの間にかいつでもチケットが100枚貯まってたので一気読みしてきた。

なんとなーくコミカライズ版が原作を無視しまくった結果跳ねてるってくらいの知識で読み始めました。

 

 

結論を言うと読み進めていくと腰が抜けるほど面白くてビビりました。

序盤こそ、『こんな変なのを面白がれる俺おもしれー』するための漫画だと思ったんですよ。でもそうではありませんでした。高まる期待度を常に飛び越え、かつ読者の希望すらも裏切る展開力の連続。

キャラクターからは命の鼓動が感じられるしある意味異世界系に求めるチープな爽快感のようなものも存分に満たしてくれる。これは凄いなと思いました。

人によっては序盤のギャグがきついと感じるかもしれません。僕は好みだったのでセーフでしたが、合わない人はそこで脱落してもらって大丈夫です。でも強くおすすめしたいです。

 

 

 

※感想書くので未読ならできればここで引き返してとりあえず読んできてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、そうだ。先に断っておきますが、多分このあと何度かハンターハンターに例えると思います。

僕はなんでもハンターとかワンピとかと比較してあーだこーだ言う風潮は好きじゃないんです。それを踏まえた上で、それでも比較しているんだろうなということを理解の上読んでくださいね。この漫画は比較するに値する土俵に立っているということです。

 

 

 

①ギャグの圧倒的なキレ

おもしろいです。語彙力ハンパない。特に煽りワード

 

 

このあたりは読んで肌感で楽しんでもらうしかないのですが、テンポの良い会話劇の連続というものはあらゆる漫画において必須な技量ですが、その点でまず高評価です。上のコマとか長文で文字ぎっしりなのに読みやすすぎるでしょ。

また序盤こそは支離滅裂さを楽しむ漫画でしたが、話が進むにつれそれはこの漫画にとっての当たり前の風景として受け入れられるようになりました。

例を出すと、ギャグとして異世界物にも関わらず唐突に東京とかグアムとかヤクザとかパチンコとかワークマンの偽物とか。この辺って一見するとありがちな”世界観から降りるギャグ”なんですけど、今はこの世界にそういうものも存在するんだろうと受け入れることが出来ています。メタネタと見せかけてメタじゃないんです。

またギャグ描写にも人となりが見えてくると意味が出てきたり・・・恐ろしい漫画力です。一応少しは未読の人に配慮しますが、色んな描写に意味がありました。

さてこう書くと結局伏線マンセーかよと思われそうですが、そう言いたいわけではないんです。ここまで書いて自分でもちょっと過剰に持ち上げすぎたなと思いましたが、要はどんな突飛な設定がでてきても『この世界はこうなんだな』と信頼してこっち側で勝手に裏設定を自己補完するくらいには僕はこの漫画のことを好きになったという話です。

僕の持論ですが、常々真の漫画の前に整合性なんてものは無力だと思います。要は面白さが足りてないから矛盾点なんてどーでもいい点を指摘されるんですよ。展開がくだらないから宿儺タフすぎとか高専メンバー呪いの王に対応できすぎとか言われるんすよ。この漫画は僕にとってその野暮なことを突っ込みたくなるステージは乗り越えてます。

 

 

②支離滅裂なのに理解できる漫画力の高さ

これに関しては①でほとんど説明をしてしまいましたが、どんなに本筋から逸れているように見えてもしっかりとレールは引かれている。そんな漫画です。例えとして適切かはわかりませんが、ボーボボにもマルハーゲ帝国との戦いというストーリーがあったじゃないですか。この漫画はボーボボやりながら進撃の巨人みたいな話を進めてるんですよ。なのに、頭からっぽにしてても話が理解できる。でも深みもある。これはあまり他の漫画では感じたことのない感覚です。理由ははっきりとわかりませんがきっと台詞回しやコマ割りが圧倒的にうまいんだろうなあと思いました。

それぞれの組織の思惑、行動が同じ時間軸の中で複雑に絡み合って、一つの物語を作り上げていく。まさに今冨樫先生が継承戦編でやりたがっていることですよね。広げすぎた風呂敷を畳めなかった漫画は過去いくつも読んできましたが、この漫画は全てを包み込むだけの大きな大きな風呂敷が用意されていると感じます。

ワードの力も凄いですよね。半グレというギャグの前フリみたいになってたけど敵キャラに”半分”なんていう異名つけるのセンス凄すぎる。

本当に価値があるものにこそシンプルなネーミングつけるの大好きです。トリコのセンターとかアースとかいいっすよね〜。ラヴォスの最終形態も技名が漢字二文字でいちいちシンプルですもんね。

 

魔法の解釈も本当にいいですね。文明に触れると魔力が落ちるという設定、今まで見てきた魔法の設定で一番好きです。電気をつけるスイッチに触ることに葛藤を感じる描写すごかった。

ちなみに正式なタイトルは、

”追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。俺は武器だけじゃなくて、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?”

だそうです。

このサブタイトルのあらゆるものという点に着眼して美しく回収した魔科両立という設定、実は原作にはないとか笑

 

 

③能力漫画として良い

僕はわりと最近はテンプレなろう系みたいな漫画も楽しめるようになってきたのでちょこちょこ手を出していたのですが、ある意味ではそういうベッタベタな異能力無双バトルの需要も満たしてくれます。最初は鼻で笑える馬鹿げたように見える能力設定に”凄み”が生まれてくる瞬間を感じられました。

ハンターハンターはゲンスルーが能力の開示に意味を持たせたじゃないですか。呪術はそれそのままやったじゃないですか。チー付与は能力を見せること自体にブラフを混ぜ込むことができるという点を主軸に置いた新たな解釈をもたらしてくれたと思います。

 

漫画の合理的ではないお約束に意味を持たせるの大好きです。でも一方でさっきも書いた通り、真の漫画の前に整合性なんてものは無力なんです。

悟空みたいに強い姿と戦いたいからという理由でおとなしく変身を待つみたいなのは理由付けとして大好きです。

バーン様が大魔王からは逃げられないとか1ターン複数回行動を表現したのはもうほんと神の領域。本当に全然関係のない話でした。

 

 

④キャラクターの解像度の高さ

僕よく解像度って言葉使うけど、本来の意味と違う使い方をしている気がする。

まあ作者の描くキャラクター性が一貫してると言いたいわけです。ギャグでブレてる風に見せてるけどひとりひとりが何一つブレていない。

タイトルに”セカンドライフを謳歌する”とありますが、まさに各キャラクターがこれまでこの世界で生きてきて描かれていない場面で様々な経験をしてきている。その一部をセカンドライフと冠して漫画で描いているかのようです。

いやこれ言ってしまえば『君たちはどう生きるか』ですよ。(※みてません)

このキャラクター全員が持つキャラクター性の強固さは、今後もどんな変な展開が待ち受けていたとしても『なんかブレてきたな・・・』と思うことはないだろうと確信させてくれます。

レインの人間性好きだぜ。主人公に相応しい。

エルシーの実力がトップクラスなのにそれ以上に狡猾なところが恐ろしいのカッコよすぎて鼻血出る。10巻の表紙すきすきだいすき。

 

そして一方で組織の思考にも非常に説得力があるとも感じます。半グレたちの実際の半グレ感とか。

仲間のために命張るほど仲間想いなのかと思いきや思いっきりドライな一面もあったり、ヤンチャなだけで根はいい人でもあるかと思いきや善悪の線引きに無頓着でやっぱりちゃんと悪人だったり。幻影旅団やん。

あとは、こういう世界なら王族は確かにこういう王族になりそう感。こういうの大好物です。結局国が圧倒的な軍事力を持っているのも能力モノにはなかなか無い展開で良い。

 

 

 

以上です。

ベタとシュールと王道とスカシとバズりそうとオタクが好きそうと笑えると寒いノリとか全てを網羅した上でバランス感覚を保ち続けていることがともかく凄いと思いました。すぐにふらついて折れてしまいそうに見えてもこの漫画には太く頑丈な幹が感じられるということを締めの言葉としたいと思います。

 

なんせまだ読み始めて3日目のにわかなので、流石に大きいこと言い過ぎたなあとちょっと反省。書き直すのめんどいからこのままアップするけど。

 

あと最後に余談だけど、この漫画を持ち上げる上で全ての人は原作者に敬意を払ってほしいなと願うばかりです。まだ人の感想とかを追ったわけではないけど、原作はテンプレなろう系っぽいし、比較されて貶されてそうで心配。

しっかり原作者が監修した上で作品の暴走を認めている器の大きさにまずは敬意を評します。内容は99割違うものになっているそうですが、二次創作とかって原作が優れているからこそ膨らまし甲斐があるというのも僕の持論としてあります。

本当は原作を読むことこそが一番のリスペクトになるんだろうけどね。