生きる価値 | 法橋太郎のブログ

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ポエム 第九回歴程新鋭賞受賞

2021年アラブ語圏にてゴールデンプラネット賞受賞

生きる価値

 

ポールは首都であらゆる仕事に失敗し家庭もなくした。彼は両親の住む豪邸の近くに小さな部屋を借りた。冬が去り外には桜が満開だったが彼の部屋は暗くて寒かった。彼は重ね着したままで茶碗に冷飯と残りの炒め物を混ぜあわせて食べた。彼は正坐して床に置いた茶碗と箸を手に取った。

 

彼の父は裸一貫から財を成した。さまざまな名誉もあったがポールが子供の頃から彼はポールに冷たくあたった。彼はまだ箸が持てないのかとポールを殴る毎日だった。母は父を尊敬していてポールに言った。あなたには生きる価値がないのよと。ポールにはその言葉の意味がよく分からなかった。食事の時間が近づくたびにひどい気分になった。

 

ポールは仕事に失敗するたびに母の一言を呪いのように自分に言った。その最後の食事をしてから何とも知れない気持で一夜を過ごした。数かずの嫌な思いで眠れないままだった。翌日には花の雨が降っていた。彼はビニール傘を持ち両親の家に向かった。彼は自分が何をしたのかもはや覚えていなかった。二つのベッドに数えきれない楔を打ち込んだ。血溜まりの中で正坐したまま彼はあの一言を唱えていた。