禅譲
大臣であった彼の父は不可能な責務が果たされなかったという理由で王に首を刎ねられた。王はつぎつぎに気に入らない臣下に不可能な責務を負わせては殺していった。聖帝と呼ばれた昔とはもはや別人かと思われた。王は年老い彼は息子に王位を譲ろうと考えていたが禅譲が好いという臣下たちに反駁され以前は友でさえあった大臣たちを殺していった。
予想していた通り彼に難題が及んだ。彼は目的の捷径のために窃かに幾人かの仲間と部隊を作っておいた。その部隊は静かにこの王朝に加担する人物を掃討していった。謀反の嫌疑がかけられるまえに彼は王をとりかこんだ。王は平伏して王位も財宝も渡すからと懇願した。
彼の恐怖と憎悪が王の眼を刳り貫き耳と鼻を削ぎ陰茎を落とし手足を寸切にして糞壺に沈めて放伐し、みずからが禅譲された王であると国民に称した。その後も旧王朝に加担する輩を殺さねばならなかった。度重なる殺戮が終わったあと彼は自分も誰かに殺されるのではないかと疑心暗鬼に陥った。
その思いはかき消しにくいものに変わっていった。国民に対しては善政を敷いたが彼はかつての仲間がいつ裏切るかと気が気ではなかった。彼は玉座の肘掛を指で小刻みに打った。仲間のほとんどを彼は殺した。彼は年老いた。彼もみずからの子に王位を譲ろうとした。その願いは果たされた。みずからの息子が王になったその日、彼は息子が指揮する部隊によって静かに弑されたのだった。