短歌 前衛短歌雁の音のかそけき夢の半世紀虚構の焚火枝で搔きつつワグナー忌黒き大理石そのうへの雷の気配と冬薔薇の赤疵つきやすき果物の痕のこる記憶てふ亡霊に悩むこと勿れ退歩は兵法の極意なりと朱熹記す墨燃へあがらむばかりに濃く初秋の夜に砂野なるその波うつ凹に猫らひとつづつ眠れり洗礼者ヨハネの首は盆にのせらしわが夕食には舌平目啖らふ翅蟻の群れて窓より内に入るひともまた颱風の予感あり